19体目 お客
第二章:奴隷と言う名の仲間 始まります!
ここまで読み続けていただきありがとうございます!
この先読むのをやめてしまっても、
お気に入りを外さずにいただけると凄く嬉しいです……。
「いつまで寝てるの! お客さんが来てるわよ!」
「お客……?」
数日居なかったことが問いただされないのは、天の試しで数日空けるかもと伝えていたからだろう。
しかし、お客とは一体誰だろう。
寝癖を整え玄関へ行くと、この前のお試しパーティーでの事件後にも会ったスーツを着た若い男女の刑事さんが居た。
会釈をすると、警察手帳を見せながら男性の方が声を掛けてきた。
「小並 塔也さんですね。お時間よろしいでしょうか? すぐ終わりますので」
「……顔を洗ってきてもいいですか」
「勿論構いませんよ」
顔を洗う最中に何の用かを考える。
以前襲ってきた冒険者のことか、はたまた100階層の件か。
分身能力に関わることの可能性もゼロではないか。
「今日はなんの用ですか?」
「世界中に発生した転移門と、天の試しについて少々事情聴取をですね……」
「そういえばルールが変わったとかどうとか……。試練が終わったばかりでまだ調べてないんですよね」
「ええ!? 知らないんですか!」
よくよく考えたら、得た能力すらも確認していなかった。
「ちょっと 高橋 君」
「すいません。少々お待ちください。なんですか 加藤 さん」
刑事さんがヒソヒソと会話し出したから、今の内に確認しておく。
レベル等は最後に確認してから変わっておらず、新しい能力や永続能力が増えていた。
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能力
:気力操作:‐‐【増加必要SP1】
強化
:生命力強化:‐‐【増加必要SP10】
:精神力強化:‐‐【増加必要SP10】
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どれも高レベルの冒険者なら必須とされる項目だ。
生命力を精神力で操作する技術――≪気力操作≫は膨大な必要SPだったのが1になっている。
一気に減ったのは、これまで練習してきた積み重ねと昨日の試練が要因だろう。
俺も分身を生み出したり変質吸収や加速する世界で、生命力や精神力を使ってはいる。
しかし気力操作と呼べるほどのことができなかったのは、精神力で操作するものだからだ。
魔力路が作られたことにより、生命力の操作も凄く楽になった。
願い年月覚えようと練習していたのだから、鍛えれば数日でそこそこのレベルまで上がるはずだ。
≪生命力強化≫は、筋力強化、体力強化、敏捷力強化を限度である10まで上げる必要がある。
その上で切っ掛けがあれば冒険者カードに現れ、スキルレベルを上げることで3種類を一律で強化してくれる。
≪精神強化≫は魔力を上げてくれる。
一見魔力だけ上げるように見えるが、そもそも魔力は細かく項目を分けることが可能だ。
魔力炉の大きさ。
魔力路の強靭さ。
集中力、イメージ力、回復力など様々だ。
魔力強化はオリジンのみを増やすが、精神強化は他も全部強化されるらしい。
ちなみに魔力炉とは、心臓付近にある見えない臓器で、魔力のタンク兼ポンプのようなものだ。
「待たせたわね。ちょっと質問してもいいかしら?」
「はい。なんですか?」
「4日前の15時30分過ぎ、あなたはどこにいた?」
「4日前……丁度声がした時ですよね。直後に天の試しが始まりましたね」
「扉は閉まってたはずだけど?」
「家に居たんですけど、準備にかなり時間が掛かっていたのが完成したのか、強制的に転移されました」
嘘をつくメリットはないが下手な嘘をつくより正直に言ったほうが身のためだろう。
100%見破れるわけではないはずだが、嘘を見抜く道具や能力を持ってる可能性が高いからだ。
「なるほどね。じゃあ転移門については?」
「全然知らないです。どうなったんですか?」
「長くなるし自分で調べるのをオススメするわ。私も詳しいわけじゃないし。戻ってきたのは昨晩よね?」
「いつだったかな……。多分10時間ぐらい前です」
大分寝たはずだから、これぐらいの時間は経っていると思う。
「失礼だけど、冒険者カードを見せてもらっていい? 試しを終えた人は役所でチェックする決まりだから、ついでにやっちゃうわ」
「ええ。どうぞ」
確かに登録する決まりがあるのは知っている。
強力な能力を持っている人が悪事に走った時用に、保険が必要なのだ。
警察のデータベースには、全ての日本人冒険者の情報が載っているはずだ。
「綺麗に整理されてるわね……。レベルが記録より大分高いけど?」
「天の試しで倍以上になりましたからね。挑戦権も地下160階になりました」
「160!? 新記録じゃあないですかぁ! どんな試練でしたか!?」
驚いた男性刑事が話しに割り込んできた……。
「えっと……全部で3フロア。集団戦闘、ボスラッシュ、迷宮探索でした。難易度や規模が事前情報より段違いでしたけど……。でも情報通り緊急クエストよりは、時間が掛かっただけで楽だったかな?」
試練自体は割りと聞く部類だったから、特別なこともないだろう。
難易度が高かったのも俺自身の能力が影響していたからだ。
「その内容になったのは分身能力があったからでしょうね。あれって人によって難易度変わるんでしょ?」
「なるほど……。分身の数は……実体で64!? なんですかこの異常な数は」
「そうなの?」
「そりゃあそうですよ! 歴史に残ってる偉人でも3体ですよ!?」
「へぇ~。でも昔と今じゃレベルが違うじゃない。それよりデータは移せた?」
「ええはい」
正確にはその偉人も二桁前後までなら出せたのだと思う。
しかしそのようなことは、能力を持っていなければ分からないことか。
「私としては生体具現が気になりますが、問題はありません。カードはお返しします」
「どうも」
「それじゃあ最後に、冒険者登録時にも聞かれたと思うけど、いくつか質問するわね」




