15体目 限界突破サバイバー
「…………なにも起きない」
作成には時間が掛かることもあると聞くが、10分近く経っても始まらない。
そして20分30分と経ち、石碑にもう一度触れてみたり部屋を歩いたり。
1時間が経過したところで我慢ならず部屋を出た。
「無事だったか。どうだった?」
「なんか起動したって言う割に、1時間待たされて何も起きませんでした」
「それは妙だな……。場所の作成には長くとも3分掛からないはずだが」
結局その日は帰宅。
『今日の魔塔のお時間です。昨日未明、27階層に大規模のゲートが開きました。今月に入り早くも3件目の事例となります。この勢いですとまた記録を更新しそうです』
『そうですね~。最近は少子化で冒険者も減っています。その分魔素が溜まっているのでしょう』
翌朝、俺も関わったゲート騒ぎのニュースを見たあと100階層に向かうが、扉は開かなくなっていた。
「あれ、開かない……。中に誰か入ってます?」
「いや、そんなことはないはずだが……。確かに開かないな」
その後、調査すると言われてから2日経過した15時33分頃。
『100階層の扉が閉ざされてから2日が経ちますが、未だ原因は不明です。先生の意見を聞いてみましょう』
『そうですね。一番有力なのは誰かが入っている可能性です。8年前にも同じような例があります。その時は――』
ニュースを見ていたその時――世界に魔塔からの声が響き渡った。
『起動準備が完了しました。≪天地の魔塔≫のルールを一部変更します……』
『この声は……!?』
『静かに……! いまは続きを聞きましょう』
テレビの出演者にも聞こえている。
冒険者ではないアナウンサーにもだ。
『世界に点在する繋がりを持つ施設に転移門を設置……成功しました。地下への転移権限解放……成功しました』
そして数秒後。
おそらく俺にだけ聞こえる声が聞こえた。
『フロアからの移動を確認しました。転移を開始します』
「ほえ?」
光りに包まれたと思いきや、目の前には広い草原が広がっていた。
地平線まで緑が続いていて、立ち上がり見渡しても建物などは見えない。
「グルルルガッ――!」
「ちょま――!?」
背後の木陰から迫りくるオオカミのような魔物に対し、咄嗟に屈んで回避。
真上に来た瞬間体当たりをして突き飛ばす。
魔物は宙で1回転して3メートルほど先に着地した。
「痛って! 思ったより堅いけど格上か……?」
オオカミに注意を払いつつも周りを確認。
すると、遠くから様々な種類の魔物がこちらに向かってくるのが見えた。
「見たことがあるようでない奴ばっかり……。地下のモンスターで間違いなさそうだな。≪限界突破サバイバー≫ってそういうことかよ……!」
収納能力を覚えていなければ致命傷だった。
100階層に挑む為に準備した物を入れたままで助かった。
「やってやる!」
分身を3体生み出し、戦闘を開始する。
斬る――避ける――斬る――斬り裂かれた。
一見知能のなさそうな骸骨剣士だが、こちらの動きに合わせて剣を振ってきた。
「タイミングずらしてきた!?」
「ハリボテの武器じゃ格上の硬い奴だとちょっときついぞ!」
「使え!」
分身を修復すると同時に、1体に窃盗丸を投げ渡した。
その攻撃力を持ってすれば、硬い敵でもダメージを与えることが十分可能なようだ。
しかし骨を切り裂くのは容易ではない。
この魔物には打撃系の武器で相手取るのが正解だろう。
多種多様な魔物が相手では時間が掛かる。
短剣、刀、棍で、突撃、斬撃、打撃と相性を考えつつ戦うが、そのあいだに遠くの敵が到着して押し負けそうだ。
「やっばい! 全部がこの強さだと処理が間に合わない!」
「分身だ! 虚像を何体か遠くに走らせろ!」
「敵も遠いしそこそこ騙せるか」
「いや。左右に1体ずつ実体も交えよう」
「よし、それでいくか……」
言うや早し、実体と虚像の分身を生み出し走らせた。
________________________
トウヤ 19歳 男 レベル:160
S P:1
体 力:351(+50)
魔 力:547(+50)
筋 力:229(+50)
敏 捷:354(+70)
知 力:160
器用さ:400
能力
:生体具現 レベル1【増加必要SP45】
:加速する世界 レベル9【増加必要SP5】
:ふくろ レベル1【必要SP3】
:変質吸収 レベル1【増加必要SP5】
________________________
皆さまのお陰で日間ローファンタジーでランキング入りできました!
ありがとうございます!




