100体目 謎解き
100話目です!
やれることが限られている現状、時は瞬く間に過ぎ去った。
1度魔界に招待されて興味も惹かれたが、しばらくは地上に戻れなくなるという。
リナが長寿だからかなのか、単純に気が長いだけなのかは知らないが、予定が合わないようなら半年後でも1年後でもいいそうだ。
流石にここまで言われて断ったら相手に悪い。
何事もなければ半年後には行けると言ってある。
そして挑戦者のレベル不足についてだが、自身のレベルではなく、正確には能力のレベル不足であった。
週に1回ずつ試していたら、"霊体具現"をレベル10にした時に塔からのメッセージが省略された。
相変わらず全体でのEXPを満たしていないが、それも今日までだ。
経験値を他人に配ることで急いだ結果、2月13日に間に合った。
今日は、桜の誕生日だ。
地下を作った張本人が前世の仲間であり、手の込んだ仕様から判断するとここが最上階だ。
日付が変わる前に攻略して、文字通り桜の誕生日にしてやろうと決意を新たにする。
そして気合を入れなおし軽く触れると、扉はゆっくりと奥へと開いた。
「いよいよ攻略開始ですね!」
「でも、今のレベルでボスに勝てるでしょうか?」
「"擬似融合"も完成形になってるんだ。最悪、塔也と俺だけでもなんとかなるさ」
「ちょっと待った」
ムギ、モモカ、錬斗の順番で意気込むが、何やら不思議な感覚が伸ばした手に伝わった。
周囲を警戒している分身を先に侵入させると、案の定能力が解除されて消え去った。
「……この感じは、魔法禁止エリアか?」
「っぽいな。地上44階層の牢獄柱とか、知恵を試されるような層にもあるらしいけど、気力の操作もできないんだな」
「素材はミスリルでできていて、冒険者用の牢獄や手枷に使われるんでしたよね!」
錬斗の言う魔法禁止エリアは、魔素を拒む性質のある≪ミスリル鉱≫を使う。
その鉱石が使われている特殊なエリアに侵入したからか、モモカのテンションが高い。
あちこちを見渡し興味を惹かれている様は、研究者気質でもあるが、冒険者らしいとも言える。
その耐魔性を犯罪に利用されるのは不味いからか、加工方法は秘匿されている。
頑丈な鉱石であり、こういった禁止エリアから採掘することもできない希少品だ。
壁はもし砕けたとしても、素早く修復されて回収は不可能らしい。
「らしいって、塔也は禁止エリアは初めてなのか?」
「初めてじゃないけど、その頃魔力操作とかできなかったし……。まあ魔物は出ないはずだけど、一応注意して行こう」
こういった類の階層は、大抵謎解きだ。
まさか素の身体能力だけで強力な魔物を倒せということはないはず。
分身を使えないのは痛手だが、慎重に行けば問題ないだろう。
「とりあえず進むか」
主柱の内部は、複数のパターンがある。
ボスまで延々と螺旋階段が続く地上100階層のようなのもあれば、ワープゾーンが複数あり複雑な迷宮と化している層もある。
多くの場合は1階ごとに縦横200メートルほどの迷路を、魔物を倒しながら10階から20階ほどまで進むことで次の層に出られる。
今回の場合は単純な構造で魔物も出ない代わりに、謎解きとなるだろう。
「ご主人様! 扉の横に何かついてます! この数字ってなんでしょう?」
「……数独だな。縦横一列に1から9までの数字を揃えるパズル。その時に直線と、縦横3×3で区切られてる枠組みの中に同じ数字が2つあったらダメなんだ」
最初から刻まれている数字をヒントに解くのだが、20個しか数字が刻まれていない。
中々の高難易度で、どう解けばいいのか3人とも悩んでいるようだ。
「……塔也さん。これってどう解くんですか?」
「出てる数字から答えを導くんだよ。同じ数字は被らないから……。ほら、ここの数字とか縦横の直線に同じ数字があるから、他に入りようがないだろ?」
「なるほど! あたしが解いてみます!」
「ムギちゃん! わたしもやるよ!」
横に小さな数字が1から9まであり、数字に触れてから空白に触れることで数字が浮かび上がる仕組みらしい。
そして20分が経過した頃、錬斗が痺れを切らして解析アプリを使用。
塔に感知されたようで、問題がリセットされた。
数字の配置も変わり、解きなおすことになる。
俺たちは合計1時間を掛けることで、ようやく1つ目の部屋を突破した。
そして2つ目はこれまた数字のパズルの一種である、ロジック。
3つ目はスライディングブロックを1から100まで順番に並べるというものだった。
能力が使えない現状、このペースでは最上階に着く頃には日付が変わってしまう。
次の階からは、時間が掛からない謎解きであることを祈るしかない。




