99体目 あかずの扉
10月22日、金曜日。
俺は分身を使って2000階層の攻略を開始した。
しかし主柱に辿り着いたものの、入り口が開かない。
「入れないのか……」
もしかしたら、本体でなければ開かない仕組みかもしれない。
かといって主柱は森の中にあって、魔物からの奇襲を考えると億劫にもなる。
許可を得て伐採するか、大人しくレベルを上げるか。
ボスのことも考えれば、鍛えるべきだろう。
「仕方ない。今は鍛えろってことだな」
本来は記憶を取り戻すのは翌年の3月を予定していたらしいから、そこを目安に鍛えるといいかもしれない。
予定を立ててからは早かった。
年内の全てを鍛えることに集中して、ムギは学校に定期的な休みを貰い基礎訓練。
錬斗は攻略に向けて、過剰にならない程度のレベルアップと能力の底上げ。
モモカは魔法の改造と後処理の修行だ。
そして俺は、分身を使ってのレベル上げは勿論のこと、聖人である2名に教えを乞うた。
キャロさんは完全な感覚派で、手合わせのみ。
フクロウの亜人であるミョゾティス氏には、魔術や魔法の相談に乗って貰った。
得た物は大きいとは言えないが、小さくもない。
間違いなく糧にはなってくれている。
2ヵ月近くが経過して年も明け、錬斗は色々な人からの手助けもあって早くも1500階層を突破した。
レベルも2513になったのを確認。
モモカはレベル2300、ムギは2200に調整した。
俺は分身を酷使し続けることにより、精神を犠牲にすることでレベルを3200まで上げることができた。
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トウヤ 19歳 男 レベル:3200 仙人級
S P:670
体 力:7600(+200)
魔 力:11250(+200)
筋 力:4900(+200)
敏 捷:4050(+200)
知 力:180
器用さ:555
能力
:霊体具現:レベル9【増加必要SP1000】
:加速する世界:レベル31【増加必要SP10】
:変質吸収:レベル11【増加必要SP100】
:気力操作:レベル53【増加必要SP10】
:魔力操作:レベル59【増加必要SP10】
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全体的に大きく伸び、魔力が異常発達した感じだ。
精神的部分は落ち込み気味で安定しているから、今後の大幅アップは見込めないだろう。
他にも非表示にしている魔法や技は多くあるが、変動しやすいものだけ整理してみる。
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・ふくろ レベル18
・氷属性魔法 レベル108(限界突破)
・雷属性魔法 レベル53
・風属性魔法 レベル49
・火属性魔法 レベル29
・土属性魔法 レベル13
・水属性魔法 レベル4-33
・光属性魔法 レベル25
・闇属性魔法 レベル25
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氷魔法の基礎レベルが限界突破した。
これは精神的部分が多大に影響したからだ。
魔力操作のレベルすら過剰に超えていて、制御を無視して感情任せに全力解放をすれば、自身すら死に追いやると思う。
俺は念入りな修行を開始して1月ほど経ち、やけくそになって自傷まがいのことをしていた。
実際に本体で魔法を行使して、何千回と凍傷したものだ。
それを見かねたのか、錬斗に盛大に殴られ……そうになったところで、頭を冷やして正気に戻った。
他人に止められずとも、俺は自力で立ち直れるだけの能力を有していたからだ。
俺が風呂場へと立ち去ったその時は、止めるタイミングを逃した兄妹が空しく佇んでいた。
「よし。それじゃあ行くか!」
「はい!」
「これだけ見えてれば、魔物が襲って来ても充分障壁で守れそうですね」
「整地はしてないから、転ばないようにな」
国に許可を貰い、通り道にある木は伐採済みだ。
開拓をする場合、基本的には主柱までの道を作るから、切り倒しても問題ないらしい。
分身で牽制していた甲斐もあり、塔まではスムーズに進めた。
しかし問題は、扉に手を触れてからだった。
「あかない……」
『資格を確認しました。……挑戦者のレベル及び全体EXPが不足しています。解放までの残りEXPを表示します』
「EXPってなんでしょう? ご主人様なら分りますか?」
「指数関数? 魔塔的には経験値か?」
門には光で膨大な数字が浮かび上がり、下数桁が少しづつ減っている。
40億近い数字は、このペースでは0になるまでに何年も掛かりそうだ。
「減り方が不規則ですけど、全体ってことは冒険者全員の合計経験値ってことですかね?」
「だと思うけど、魔物を倒した分身を解除してみるか」
レベリングで10分稼いだぐらいの経験値を得た。
そして減ったのは、10万弱。
「これでも10万届かないか……。どうしよう」
「……あれ?」
「ん? どうかした?」
「えーと。経験値ってレベルが高いほど貰えないんですよね?」
「あー。低レベルの人をパワーレベリングすれば加速するな」
「でもご主人様。挑戦者のレベルも不足してますよ」
「不足分が分からないから検証するしかないな。挑戦者の合計レベルって可能性もあるし」
一応3人揃って開けようとしてみるが、開かなかった。
合計だとすると、俺たちは7700レベルになる。
単独のレベルを上げて、合計8000にして再挑戦するべきか。
この場にいても進行しないから、俺たちは一度帰宅した。




