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96体目 GC

「とにかく挑戦あるのみ! 行けるとこまで行ってやる」

「そろそろ敵も格上になるけどな……。練習中のあれやるか?」

「危なくないか?」


 確かに錬斗が言うようにリスクはある。

 練習の時もタイミングがずれると致命的な隙になった。

 だがこの先もっと高い階層に挑むなら、早めに慣らしたほうがいい。


「使わなきゃ攻略できても700階層そこそこだろうし、亀で模写体を使いまくってたから前準備としては十分だ」

「ギリギリの階層で欲張って使うよりかはマシか……」

「1000階層近くで致命傷なんて負ったらリカバリー効かないかもしれないからな。今後を考えたら、実戦投入するなら今しかない」

「……だな。やるか!」





 ≪霊体具現≫の応用で強化された錬斗は、ボスが現れた瞬間に打ち倒した。

 快進撃は1000階層にまで届く。

 しかしその階層のボスは異常なほど早く、≪ミスリル鉱≫に匹敵する硬さを持つ。

 仙人級の刃やモモカクラスの魔法の威力すら効かず、打撃や衝撃を逃す柔軟性までも備えている。


 だが大きさはピンポンダマほどしかなく、攻撃力も弱い。

 金色に光り輝くその正体は……ゴキブリだ。


 ≪GC≫と呼ばれるそのボスは、生半可な速度では追えず弱い毒を浴びせてくる。

 放ってくるのは臭い液状の物体で、本体が口の中にもよく飛び込んでくるとか……。

 4桁の階層に到達しているのが100人ちょっとしか居ないのは、こいつが原因だ。


『フハハハハッ! 準備はいいか人間よ!?』

「しゃ、喋るのか……」

「長生きなんじゃないか? 頑張れ錬斗。俺は休憩するから自力でやってみるといい。良い経験になるだろう……」

「おいちょっと待て!?」


 俺は巨大か極小の虫ならまだ平気だが、このサイズは忌避の対象に十分なりうる。

 問答無用で壁付近まで下がり、錬斗1人を取り残した。


『単独で挑むか! では遊んでやろう!』

「くそっ! やってやる!」




 当然攻撃は命中せず、偶然当たった剣も簡単にはじかれた。

 威力重視では当たらず、速度重視ではダメージにならない。

 高い威力を最速で当てる技術を持ち合わせていなければ、突破は不可能だ。


 俺ならどう攻略するか考えてみると、割と簡単そうだ。

 少し考えただけでも、十数パーターンの攻略方法を思いついた。

 しかし錬斗は、幅広い攻撃手段を持っているわけでもなければ、絡め手も覚えていない。


『フハハハハァ! その程度か人間よ! ブルアァ!!』

「ぶはっ! ……このっ!」


 既に糞尿塗れになり、GCからの這い回る攻撃でズボンの内部を動き回られている。

 1度服に入られてから上着は脱いだが、流石に下半身がパンツ1枚になるのは嫌らしい。

 

 何とか振り払い、両者にらみ合いになった

 危険がほぼないからソロでやらせているが、そろそろ手助けしたほうがいいだろうか。


「手ぇかそーか?」

「俺1人で十分だ!」


 ここまで見た感じでも、技術さえ追いつけば錬斗でも討伐可能だ。

 それを実感しているのか、錬斗は助けは要らないと言う。



 やがて冷静になった錬斗は集中し出して、目を瞑ってカラダのチカラを抜いた。

 そして嫌がらせのような攻撃を複数回仕掛けられ、やっと心技体が揃った攻撃が命中。

 GCの足を1本切り落とした。


『ぬぅ! やるな!』


 その後は時間の問題だ。

 ややスピードの落ちた黄金ゴキブリでは錬斗の狙いを定めた攻撃は避けきれず、じわじわと削ってゆく。

 足を全部切り落とし動きは止まったが、攻撃力が足らず仕留めるのに苦労している。


『ふっ……。ここまでか』

「ああ……。俺の勝ちだ!」

『ではさらばだ! 死して屍残すまじ! (われ)は次の固体に転生するがな!!』


 GCは爆散。

 小さい体積からは想像もつかない量の粘液が錬斗を襲った。

 回避をしない戦いかつ咄嗟のことで、その緑色の液体を全身で受け止める結果となる。

 (ねぎら)いながら近づくと、凄い臭いがした。


「お疲れ錬……うわ臭っ!? 酷いなこれは……」

「オブッ……」


 そして錬斗は、我慢の限界が超えて胃の内容物が決壊した……。


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