94体目 骸骨剣士
魔王だと言うのには少々驚いたが、エネルギー量から考えれば不思議でもなかった。
聞くところによると魔界は複数あり、1つにつき魔王は1人らしい。
噂では複数を牛耳る大魔王も居るのだとか。
そして話すだけ話して、お土産にポテトチップを持って帰った。
リナは本当に遊びにきただけのようだ。
後日の昼時……。
「とりあえず分身は100体以上は出し続けないほうがいいな。本体の脳がパンクしそうだ」
「あたしだと、数体だけでも辛そうです……」
100体というのもギリギリで考えた場合だ。
短時間なら桁を増やしても平気で、長時間なら半分に抑えるのが精神衛生上よろしいだろう。
「まあ慣れだな」
「そういえばムギちゃん。学校のテストは今日で終わったんだよね?」
「う、うん。自信はあるよ!」
「言わなくても勉強してたみたいだしな……」
「それ以外やることも思い付かなくて……」
俺を励まそうと、あれやこれやとしてくれた覚えはある。
しかしどれも効果が薄いからか、最終的には傍には居るが、刺激しないよう大人しくしていた。
そこで勉強をするのだから、【公認欠席申請書】は認めてもいいだろう。
ムギに教えるのも、さほど手間は掛からない。
手間は分身数体分にもならないはずだ。
それに長い目で見れば、手助けをしてもらう可能性のほうが高い。
「錬斗は相変わらず修行中?」
「そうだと思います。そういえば、重力室を使ってみたいって言ってましたよ」
「使ってない時間ならいいけど……。そうだな。俺もしばらくは自力を鍛えるべきかもな」
早々に魔塔を攻略したくはある。
しかし現在≪イフリート≫と対峙して勝てるかと言われたら、危険が伴なうと答える。
数回戦えば本体が致命傷を受ける可能性も十分ありそうだ。
霊体分身に部屋に入らせる実験では、相変わらずボスは出現しなかった。
本体が安全な状態は認めないということだろう。
そして事件から4週間近い時が経ち、11月7日。
俺はレベル2000に到達した。
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トウヤ 19歳 男 レベル:2000 仙人級
S P:70
体 力:4540(+200)
魔 力:6680(+200)
筋 力:2500(+200)
敏 捷:2660(+200)
知 力:180
器用さ:535
能力:霊体具現 レベル3【増加必要SP100】
:加速する世界 レベル27【増加必要SP10】
:変質吸収 レベル10【増加必要SP100】
:気力操作 レベル38【増加必要SP5】
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全体的に伸びはした。
だが筋力が大きく増加した以外は目立った変化は見られない。
≪イフリート≫が相手ならまだしも、次のボスは初見なのだ。
これで挑戦するのは危険過ぎる。
変質吸収については、レベル10になったことで一応強力にはなった。
敵が放った魔力や気力など、単純なものであればそのまま吸収できそうだ。
しかしレベルがまだまだ低いからか、吸収効率はかなり低い。
完全に格下用の技だ。
そして丁度レベル2000となった時、俺は錬斗のボス戦に付き合っていた。
敵は120階層のボス。
少々大柄の骸骨剣士で、大盾を持った攻守一体の素早い動きをする魔物だ。
「はあぁ――っ!」
骨自体の防御力は高くないが、回避するわ盾で防ぐわで錬斗は苦戦している。
普通は2人以上の攻撃役で攻めるのが定石だ。
だがソロで倒したいと言い張るから、危険な状況にならなければ助けない。
「っ――!? そこだ!」
そうこう考えている内にも、飛ぶ斬撃との二段攻撃によって削られる骸骨剣士。
やがて守りを突破し、背骨を両断して地に伏せる。
それで終わりならいいが、流石ボスと言ったところか……。
骸骨は盾を手放し、上半身だけで飛び掛った。
それに反応した錬斗は、まずは剣を持つ骨を砕く。
最後に防ぐことも避けることも許さず、核がある頭蓋を渾身の一撃をもってして真っ二つにした。
これで錬斗は地下121階層から130階層の挑戦権を獲得したはずだ。
そしてレイナの声と思われる塔からの声が響く。
『短期間における階層ボスの討伐を確認しました。戦歴を確認します……。≪果てしなき挑戦者≫のクリアを確認しました。≪頂点を目指す者≫を作成しました』
「……緊急クエストか。内容は?」
少々身構えてしまったが、受けるかどうかは選択できるようだ。
光る文字は錬斗の正面に出ている。
ついに第100部分まで来ました!
 




