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アンレイナーレ大革命~厄災から帝国を、そして世界を救うため~  作者: あーちゃん先生
第一章 幼少期のやり直し
7/8

06 異世界初めてのお友だち

「えーーっと。あーー。ど、どうしよう....」


エルは今、非常に困っている。


「どこの家に行けばいいの?」


一人きりで立往生している。


「どこにいったらいいのおお!!!」








___話は30分前にさかのぼる。



「ふわぁ。おはよおう」


アンレイナーレに来て7日目。私は比較的有意義な朝を迎えていた。今日はすぐに起きて、フリアやフリューナと一緒に過ごそうと思っている。7日間、基本的に誰とも関わらず家で過ごしていたから、私はアンレイナーレ生まれアンレイナーレ育ちの人たちが普段どうやって過ごしているのか知らない。だから、姉妹の行動を観察してみようという考えだった。

ただ、早起きしすぎたのか、(というよりは、フリアとフリューナが起きるのが遅い)やたらと広いリビングには母さんのリーネ一人しかいなかった。


「エル、おはよう。朝食ならそこに置いてるから食べていいよ」


言われるがままに朝食を食べ、一回自分の部屋に戻りフリアたちを待とうと思っていたら、母さんに呼び止められた。


「エル、ちょっといいかしら。十の月に収穫感謝祭があるじゃない?もしよかったら代わりに行ってきてくれないかしら。本当はフリアが一人で行く予定だったんだけど、招待状の数が多くて大変なの」


聞いたところによると、アンレイナーレにおける収穫感謝祭とは、春夏秋冬四大フェスティバルの中の一つで、植物の実りに感謝して神に祈りを捧げるため、帝国中央___城を使い盛大に開かれる祭り(フェスティバル)なのだ。そして帝国では、それなりに位の高い人たちがフェスティバルを仕切るらしい。


「うん、いいよ。どこに配りに行くの?」

「ありがとう。これが招待状を配るところのリストと地図よ。少し離れてるところもあるけど、お願いね」

「はーい。行ってくるね」





....えーっと。貧民街....じゃない、城から離れた位置の家が多いね。


それもそうだ。私たちのような貴族は、招待状を渡したり、収穫感謝祭の準備をする立場だから。

私は街の中を進んで、平民街に来た。


....あ、これ、身だしなみ的にめちゃくちゃ浮いてる。


帝国中央に近い平民街だから、そこそこに身だしなみはいい。けれど、私も帝国中央に近い___というか、帝国中央の貴族だ。貴族同士で比べたら、そこそこ上の方になる。歩いているだけで、周囲の目がこちらに向いてくる。大変な迷惑だ。他の貴族は、身分の違いを感じてドヤ顔で進むのかもしれないが、私は、シャイ大国日本で生まれ育った。注目されるのは(自称)帝国一嫌いだ。

結構浮いた格好をして、今いる場所から一番近い場所へと向かった。


....えーっと。ここから一番近いのは、クレッサルド家、か。


そしてたどり着いた場所は....小さなアパートだった。

私はどこの部屋かを知ろうと地図を開いて、あることに気づいた。

あら、この地図に部屋番号載っていないぞ。ということを。

たどり着いた場所がアパートだったら、当然部屋番号が必要だ。だが、部屋番号が地図上にどこにも書いていない。つまり、クレッサルド家がどれかが分からないではないか!!








___そんなこんなで今に至っているわけだ。




そもそも、なぜ一つのアパートに何世帯か住んでいるのに、招待状は別の人が配るんだよ!などと思ってしまったが、きっと大人の事情なんだろう。

私が立往生していると、不意に横から誰かがぶつかってきた。


「あいたっ....!」

「す、すみません!ぶつかってしまいました!許してください!貴族様!」

「あ、だ、大丈夫。心配しなくてもいいよ。....そういえば、ここのアパートに住んでいるクレッサルドさんって、知ってますか?」


見てみると、ぶつかってきた人は、私と同じ6、7歳くらいの少女だった。そして、せっかくなので私は....聞いた!どこの部屋か、聞いた!初対面だけど、まあいいだろう。

すると、少女はきょとんとした顔でこう言った。


「私がクレッサルドです!貴族様がここに来るなんて、収穫感謝祭の招待状をわたしに来たんですか?」

「え?そうだったの。だったらよかったあ」

「申し遅れました。私の名前はニア。ニア・クレッサルドです。」

「ニアさんね。案内してくれてありがとう。このままだったら永遠に辿り着けなかったよ....」


そんな話をしながら、私はクレッサルド家に入った。

家の中は質素な造りになっているが、住み心地の良さそうな暖かな家だった。


「これはこれは。収穫感謝祭の招待状を渡しに来てくださった、リアンシェ様ですね。本日はわざわざお越しいただいて、誠に光栄です」

「こんにちは。エルナージュ・リアンシェです。えっと、こちらが招待状です。こちらの中に入っているカードは城に入るための物なので、無くさないようにお願いしますね」


しっかりと、母さんに言われたことを一つ残らず注意しておく。


___ちなみに、カードは部外者の立ち入りを禁止するものでもあるが、もう一つの役割もある。それは、フェスティバルの最後に行われるダンスパーティーのチケットというものだ。まあ、そのダンスパーティー、基本的に踊っているのが貴族で、見ているのが平民という形になっていたりもするのだが。


「そうだ。貴女様さえ良ければ、紅茶を準備致しますが....。実は、茶葉の交配が趣味でして。紅茶の味には自信があるのです。是非どうでしょうか」

「それはありがたいです。お願いしてもいいですか?」


準備をしている間にニアと話していると、どうやら茶葉はアパートの裏にある敷地で育てているということが分かった。それに、毎年やって来る貴族は、ほとんどが上から目線で傲慢な性格と言っていた。ニアはそれが嫌だったため、今年の春から外に遊びにいっているらしい。ただ、今年の収穫感謝祭は暖かい雰囲気の人だったから、とても驚いたらしい。


「なんでエルさんみたいな貴族様って、こんなにも少ないのかなあ」

「なんでだろうね....」


....残念!私は多分転生じゃなくて転移してたら、身分は平民です!貴族ではないんです!だって、日本では一般家庭だったから。


一応心の中では訂正しておく。

そして、いろいろ話しているうちに私とニアはどんどん仲良くなった。目の前に紅茶が置かれたことも気がつかないほど、話し込んでいた。


「リアンシェ様。こちらが、交配した中でも最上級の品質となっている紅茶でございます。どうぞ、お召し上がりください」


なんと。最上級の品質の紅茶を出してくれたらしい。そう言われてしまうと、飲んでしまうのが勿体なく見えてしまう。ちらっとニアの方を見てみると、ドキドキしたような様子でこちらを見ていた。反対側もそうだ。ニアの父親が、私が感想を口にするのを今か今かと待っている。

これははやく飲んだ方が良さそうだと思い、ティーカップを持ち上げて、一口飲んでみた。


「....どう?美味しい?」

「うん、とっても!こんな味のする紅茶って、初めて」


その紅茶は、飲む前からフルーティーな香りが漂い、日本にいたときには飲んだことのなかった不思議な味がした。深みのある茶色という見た目はあまり変わらないが、多分、地球の紅茶よりここの紅茶の方が美味しい。

そして....。


「みんなにも分けてあげたいなあ....」


つい、思っていたことが口に出てしまった。

すると、それを聞きつけたニアの父親がすぐにやって来て、嬉しそうにこう言った。


「それは、ぜひぜひお持ち帰りください。たくさんありますから」

「っほんとですか!ありがとうございます」


こうして、私は交配した中でも最上級の品質の茶葉を手に入れた。

本来の目的の招待状を渡したので帰ろうとすると、慌てた様子でニアが来た。


「まって、エルさん。私も一緒に招待状配りについていってもいいかな?」

「本当にいいの!?じゃあ、一緒に行こ!」


もうすっかり仲良くなってしまった私とニアだった。横からニアの父親が「ニア!貴族様になんということを!」と言っていたが、まあ問題ないだろう。平民が招待状を配ってはいけないという謎の仕組みならあるけど、貴族と一緒に行くのなら大丈夫なはずだ。

こうして、ニアの家を出発した私たちは、ニアにときどき家の位置を教えてもらいつつ、無事にすべての招待状を配り終えた。


「今日はありがとう、ニアさん。お陰で助かったよ」

「お役に立ててよかったです。エルさん、紅茶の茶葉無くなったらまた来てください」

「いいの?」

「はい。是非遊びに来てくださいね。....あ、あと、次来たら、私のことはニアさんではなくニアと呼ぶように!」

「ふふっ。いいよ、次来たらニアって呼ぶね。でも、私のこともエルと呼ぶように。ニア!」

「ふぇえ!?....あ、ありがとう。エルさ....エル!」


ニアと別れを告げると、私は中央大通りの自分の家に帰り、そこにいた母さんとフリアにもらってきた茶葉を見せた。


「ね、ね。これ、友達からもらった紅茶だよ。飲んでみて」

「この匂い、もらってきた紅茶だったのね。エルが帰ってきてからいい匂いがするから、何してきたんだろうと思ったわ」

「え!?なにこれ。すっごくおいしい!良かったね、エル」


どうやらアンレイナーレの価値観からしても、この紅茶は美味しいに分類されるらしい。

三人で紅茶を飲んだあとは、姉妹の行動を観察するという本来の目的を忘れて、ゆっくり過ごした。





その日の夜、夕食を食べ終わり寝ようとしていたら、フリアに呼び出された。

ちなみにこの家庭、部屋割りが何とも豪華なのだ。一人一つ、自分の部屋があり、中世のヨーロッパの貴族様がいそうな雰囲気になっている。

フリアに連れられて部屋に入った私は、何事かと聞いた。


「どうしたの、フリア」

「急に呼び出してごめんね。その、今日の昼に言ってた友達のことなんだけど、その子って平民の子?」

「え?うん、そうだよ。ニアっていうの」

「そっか。それだったら、あんまり平民の友達のことを回りに広げない方がいいよ。私にも随分前に平民の友達がいたの。でも、このことがとある貴族に知られてから、同じ身分の私たちにはやらないけど、友達の方が嫌がらせを受けるようになって。そしたら、いつの日かその友達は急に姿を消したの。それから先は、皆何事もなかったかのように。ある人は、「たかが平民。消えたところで何も起こらない。」とか、「フリア、もしかして頭打った?平民の友達がいるって話、聞いたことないよ。」って、はぐらかす人もいて」

「そうだったんだ....。分かった。気を付けるよ」

「うん。大事にしてね、その友達」


そんな話をしたあと、私は眠りについた。















___そこで見た夢は、平民の大切な友達と二人で遊んでいるときに、友達が何者かの貴族に誘拐される話だった。


エルの友達、ニアの初登場~!ついでにエルの名字も初登場~!

今回は、収穫感謝祭の招待状を渡しに行くエピソードでした。最後にはチラッとフリアの過去も。それに、エルはクレッサルド家の常連客になります。ニアと遊ぶため?いいえ、紅茶の茶葉を貰いに行くため!

ちなみに、招待状を貴族が渡す理由は、「平民は、我々貴族が手伝わないと何もできない」と、200年前にどっかのお偉いさんが言ったためです。....200年前です。そうなんです。

次回は、もう一度ソルベに会いに行く予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ニアもエルも可愛いですね!どうかこれからも貴族のしきたりに負けることなく2人仲良く…と思ってしまいます。
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