02 転生後、最初の出会いはマカロン愛好家!?
私はだれもいない草原にただ一人立っていた。
ついさっきまで大事な何かをしていたはずなのに、なぜここにいるのだろう。おまけに、遠くのほうから、
「救急車を呼べ!!」
とか、
「華怜、ねえ華怜!おきて!!」
とか、泣き叫ぶ声が聞こえる気がする。
....そういえば、大事な何かって、なんだっけ?
思い出せそうな気がするのに、考えれば考えるほどよくわからなくなっていく。そうこうしていろいろ考えていると、いつの間にか景色が草原ではなく、なんとなく見覚えのあるホールになっていた。そのかわりぶりに目を見開いていると、何か思い出してきた。
....吹奏楽コンクール!!!
まさか、そんな単純なことを忘れていたとは。
そう思って飛び上がると、見ず知らずのどこかの家らしきところのベッドにいた。
....ちょっと、状況を整理しよう。
私の記憶が正しければ、吹奏楽コンクールをしていたはずだ。そして、コンクール中に上から照明のようなものが落ちてきて、気が付いたら草原にいた。景色が変わって誰もいないホールを通って、今どこかの家にいる。
....ん?ちょ、ちょ、ちょっとまって。照明が落ちてきて意識不明ってことは、私死んだの?!
いくらなんでも突飛すぎる。普通に考えておかしい。まさにおかしすぎる。死んだんだったらここは天国?
あ、そういうことか、ようやく分かった。ここは天国だったんd...
「ちがあああう!!」
「....どちらさまでしょうか」
急に変な人が出てきた。若そうな女の人が、それも窓から。これはいわゆる不法侵入というのではないか。
「え、どちらさまって。君、まさか私のことを知らないの?!はぁ、ついに天空界までもがおかしくなったのか」
....意味が分からない。まったくもって意味不明だあ。この人、どうすればいいの?教えて神様あああ!!
「ほんっとーーうに分からないの?わかってないふりして、からかおうとしているんじゃないよねっ。神の使者を怒らせるとこわいよ」
「へっ、神の使者?」
「はぁ、君、本当に分かってないんだ。あとで係に言っておかないと。....んじゃ、1から説明するよ。ここは天国ではないの。君からみた異世界の中の国、アンレイナーレ帝国。....そして、私の名前はソルべ。この世界をまとめ、他の世界との関わりも持つ4人の神、女神の中の1人、「女神ミルディア様」の従者であり、友であり、相棒でもあるの」
「ほ、ほぅ....」
....ここは天国じゃないんだね。良かった!私生きてたよ!!
信じていいのかは知らないけど、信じるとすれば、どうやらここはアンレイナーレという異世界の帝国らしい。本当は日本に戻りたかったけど、そんな贅沢を言うつもりはない。だって本当は照明が落ちてきて、体に羽が生えて頭の上に丸い輪っかができるところを、運良く神様が助けてくれたのだから。でも、ソルベの話の前半は分かったけれど、後半はよく分からない。神様や女神様については知識が全くもって無く、終いには、「ソルべかあ、確かフランスのシャーベット。あれ、おいしいよなあ、食べたあい。あ、あと、ミルディアっていう名前に似たお菓子、あったよね。確か...ミル、ミルディ?いや、ミルク...あ、ミルフィーユ!!」などと思ってしまう始末だった。
....あれ、さっき、どさくさに紛れてしれっと「ここは天国ではないの」っていってたよね。私、1回も口に出して天国だったんだとか言ってないよ。これはまさか....
「もしかして、人の心が読めるんですか?!」
「えっ?ああ、うん。私とミルディア様は、独自の研究によってこの世界の人々の心を読むことができるの」
「すごい!楽しそうですねぇ。というか独自の研究って、ソルベさん、研究者だったんですね」
「一応、天空界ではミルディア様の従者として、2人で色んな研究をしてるよ。この研究はミルディア様と一緒に趣味でやったの」
なんと。趣味の研究で人の心を読めるようになったそうだ。それだけこの世界が今までいた世界とかけ離れているのか。それとも、ソルベとミルディアがおかしいのか。まだアンレイナーレのことを全く知らない今の私には、よく分からなかった。そう考えているうちに、何か忘れているような、聞かなければならないような、そんななにかがあることを思いだした。
....あれっ聞かないといけなかった事って、何だったっけ?えっと、ソルベさんに関すること。えーーっと、神、女神、天空界、女神の従者、人の心を読む....あ!これだあ!
思い出した。思い出してしまった。質問しないという選択肢が消えた。
「あ、あのお、ソルベさん。つかぬことをお聞きしますが、えっと、今まで私が思ってたこと、すべて分かるのですか??」
「....分かるよ、もちろん。君が私とミルディア様の名前をスイーツに変換して食べようと思っていたことも、天空界や、神について理解していないのに分かったふりをしていることも、全部知っているよ」
「っ!!も、申し訳ございませんでした!!」
「いやいや、急に変なところに来てしまって動揺しているんでしょ。大丈夫。....ミルディア様のことをミルフィーユと言うこと以外は」
....怖い。ソルベさんが怖い。文字通りの殺気を放ってる。ごめんなさああい!
そんなこんなで謝りまくってソルベに機嫌をなおしてもらった。
「そういえば君、フランス菓子って好き?」
「えっと、たまに食べることならありました。....あれ?ソルベさんって、ここの世界の人ですよね。フランス菓子、食べたことあるんですか?」
「フランス菓子はマカロンを1回だけ食べたことあるよ。あとは知識だけ。あれはすっごくおいしかった!!外はカリカリなのに中のクリームみたいなふわふわしたのが入ってて、もう最高!あ、そういえば、マカロンってフランス菓子の象徴みたいになってるけど実はイタリア発祥の可能性もあるんだって!とか、はじめてできたのがフランスの修道i...」
「あの、もういいです、ソルベさん。マカロンめちゃくちゃ好きなんですね」
「そうっマカロンこそが最高!マカロンこそが英雄!マカロンこそが女神!やっぱりマカロンしか勝たんっ!愛しのマカちゃん!」
....おおっと、ソルベ選手、自らの主が女神様なのに、マカロンこそが女神といっていいのかあ!。これは器の小さな女神様だとすれば、主従関係に大きな変化をもたらしそうです。....というか、愛しのマカちゃんって、もはや名前がついてしまった。でもさすがに愛しのマカちゃんはやめてほしいなあ。前世でまかちゃんって言う友達いたし。
「あの、愛しのマカちゃんはやめてください。私、前世でまかちゃんって言う友達がいたので」
「あー、わかったよ。じゃあ変える。愛しのマーちゃん!」
「....あ、はい」
案外聞き分けがいいのかと思ったら全然違った。一応名前は変えてくれたからいいけど。
まあでも意外に変えてくれて良かった。あのままだとしたら、直接関係はしてないものの、まかちゃんが可哀想!あのままだったらきっと、噂されまくってくしゃみめちゃくちゃでるところだったよ、噂されなくて良かったね☆
(時を同じくして現実世界。華怜の葬式中、異常なほどにくしゃみをしまくる「まかちゃん」であった。華怜の思いやりなど全く届かず。ただのくしゃみか噂のくしゃみか、答えはみなさんお察しの通り。)
「....で、ここに来た理由とか、場所についてとか、天空界についてとか、いろいろ教えてくれるんじゃなかったんですか」
「あーそうか。その話をしにきたのか。だれだよ、とちゅうからマカロンマカロンいいだしたのはっ!」
....まさにあなたです。
「じゃあ、今からそのこともろもろについて説明しよっか。あ、もちろんフランス菓子、いや、マカロンの話も含めてねっ」
「やっと本題に戻ったあ!ソルベさん、お願いします!」
今回大活躍した新キャラ、ソルベ。そして、詳しい情報が定かでない天空界四天王女神、ミルディア。ほかにもいろんなキャラが出てくる予定です。どんな活躍を見せてくれるのでしょうか。
次回はソルベがアンレイナーレについて教えてくれる予定です。