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竜殺し、国盗りをしろと言われる。  作者: 大田シンヤ
第四章
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賞金首

最近忙しくてなかなか書けない。今週も連続で投稿はできないため、1話だけ投稿します。

 

「フハハハハ!! よく来たな侵入者。 俺はダッカ大盗賊団随一の怪力!! 貴様も相当の力自慢のようだが、俺には勝てなイ――――タイイタイイタイイタイイタイ!!」


 入り口で侵入を防ごうとした盗賊達を蹴散らした後に現れた幹部の一人の腕を掴んで力比べ。丸太と見間違えてしまうような腕の太さからして他の者とは筋肉の量が違うのが分かる。だが、それでも及ばない。

 握り潰そうとした手は逆に握り潰される形になった男が情けない悲鳴を上げる。もう隠し球はないと判断した侵入者は頭を掴み、近くの壁へと叩き付けた。


「――――ガッ」


 あまりの衝撃に頭は壁へとめり込みそのまま気を失うが、これで終わりではない。大男の後ろにいた者が二刀の短剣を逆手に持ち、走り出す。


「フハハハハ!! そんな木偶の坊を倒したからと言ってつけあがるなよ侵入者!! 我はダッカ大盗賊団随一の俊足。 その素っ首瞬時に切り落としてやるわびゃ!!」

「いくら足が速くても、ここは直線だから動きは読める」


 低身長の男が、その身を更に小さく的を絞らせぬようにして距離を詰めてくるが、動きを予測していた侵入者に拳骨を叩き込まれ地に沈む。

 低身長で突進してきた男を殴り、視野が狭まった瞬間に侵入者の頭目掛けて矢が放たれるが、それを片手で掴み取る。


「ほう……この私の矢を片手で阻止するか。 実に面白い。 名乗っておこう――私はダッカ大盗賊団随一の弓つがっ!?」

「紹介が長い」

「…………せめて名乗らせてやれ」


 二人の盗賊団の幹部を倒すと後ろの影から悠々と歩み寄ってくる一人の男。手には弓を持ち、何時でも矢を放てるようにされてある。されていたのだが、矢を放つまでにベラベラと前の二人と同じように喋ることに我慢できなくなった者が一人いた。

 名乗りの最中に石を顔面に向かって投げられ、もう少しで顔が出そうになったのに退場してしまった哀れな男。そんな男に向かって石をぶん投げた張本人を見下ろす。


「ふむふむ……怪力無双のゼルダンに影走りのルッディ―ル。 弓の方は…………何だ、手配書にも載っていない雑魚じゃないか。 まぁ良い、喜べ。 コイツらの首には金貨五十枚が両方に賭けられているぞ」


 久しぶりの大金が入ると喜ぶ少女――ミーシャを見下ろす侵入者――シグルド。二人は現在周辺を悩ませている盗賊団の討伐に訪れていた。

 勿論理由は金だ。

 これまで何とかやってきたが、街に入るにも身元を証明できるものがなければ金を取られる。その為の金を手に入れるためにこうして懸賞金の掛かっている犯罪者達を捕まえていたのだ。


「それにしても何でだろうな。 犯罪者は全て生け捕りのみだなんて……」

「あぁ、そうだな」


 確かに、と顎に手をやる。

 帝国は一年前から懸賞金を賭けている犯罪者は全て生け捕りのみとなっている。ただでさえ懸賞金を賭けられる犯罪者は危険人物だというのに、殺すのではなく生け捕るなど難しいだろう。当然、賞金稼ぎ達の犠牲は増えた。

 何が目的なのかと考え込むが、頭を振るう。今はそんなことを考える必要なんてない。懸賞金が生死問わずだろうが、生け捕りのみだろうが自分達には意味がないのだと仕事に集中する。


「それよりも、早く進もう。 敵さんがお待ちだろうからな」

「ちょっと待て、コイツらをこのままにしておく訳にはいかないから――――束縛(二イド)っと」


 気絶するゼルダンとルッディ―ル。そしてついでに弓使いも束縛のルーンで縛り付ける。これで目が覚めて、素手や短刀で千切られる心配はない。


「これで良し――――さ~て、残りの懸賞金共はどこかな~♪」

「楽しそうだな、お前……」


 買い物感覚で懸賞金が書かれている羊皮紙をめくるお姫様は大陸中探してもこの娘だけだろう。

 少し呆れた目で見るが、久しぶりの大金が手に入るのでミーシャは気付いていなかった。


「さて、今頃残った盗賊達はどうなっているかな?」

「さぁな……今頃溺れているんじゃないのか?」


 見張りをしていた盗賊も迎撃に出てきた盗賊も倒し、残るは奥へと逃げ込んだ盗賊だけだ。恐らく万が一の為の逃げ道があるのだろうが、それを予想していたシグルド達は予め逃げ道を塞いでいた。その為、盗賊に逃げられることは心配していない。心配しているのは、彼女がやり過ぎないかだ。







「くそおっ――一体何なんだ!?」


 ただ、逃げ道の確認に来ただけだった。襲撃者が来たと連絡は受けだが、仲間が迎撃に向かったし、ここに来るまで罠も大量に仕掛けてある。この逃げ道を使う可能性は低い。それでも確認をするのは頭領の命令だからだ。

 仲間と談笑しながら、扉を開けて確認する。それだけで良い。なのに――何故自分は溺れているのだろうか。


「あ、兄貴ぃってなんだこの水!?」


 何とか男を助け出そうと手を伸ばすが、まるで生き物のように水が動き出し、男の腕を絡めとるとそのまま中に引きずり込んだ。


「ま、魔物か!? 一体誰だ!? こんなのを中に入れたのは!?」

「お、俺じゃねえよ‼」

「——んなこと言ってる場合か!? 早く助けるんだ‼ 棒で引き寄せろ‼」


 責任の擦り付けをし始めた男達の尻を蹴り飛ばし、持っていた槍をひったくると刃の部分とは逆を差し出す。しかし、結果は同じだ。


「のわあぁ‼」

「や、やっぱり魔物じゃねぇかよ‼」



 槍を突き出した男が飲み込まれ、捕らわれる。中にいる者は苦しそうに藻掻くが、いくら必死になって腕や足を動かそうとも水面に出ることはできない。体の胴体に太い触手があるようでガッチリと固定されている。

 次々に仲間が飲み込まれている様子に悲鳴を上げる男達。自らの理解できないものが目の前に存在することに恐怖を覚える。


「——ヒィッ」


 その悲鳴に触発されたように、水の触手が男達の体を掴み取る。そこから先は一瞬だった。悲鳴を上げることもできなかった。

 男達は一人残らず水の中に取り込まれ、肺にまで水が入り込む。

 人間に水を掴み取ることなどできはしない。最後まで苦しみながら、男達は意識を手放す。


 ——この光景は、ここだけで起こっていることではない。全ての逃げ道で、全ての盗賊達が同じ目に遭っていた。









 先程まで聞こえていた悲鳴が完全に途絶える。それが何を意味しているかを理解しているミーシャとシグルドは顔を合わせた。


「終わったらしいな」

「そうらしい」


 懸賞金が付いている者は生きていて欲しいと願いながら歩を進める。あの幻影の騎士(ワイルドハント)は人間相手に手加減をしない。手配書を見せ、殺してはいけない者は教えたが、魔物にとって人間など餌か遊び相手ぐらいの認識だ。理解はしても守れるかが不安だった。


「…………」


 シグルドが制止し、ミーシャの前で構える。遅れて聞こえてきたのは、ガチャガチャと金属同士がぶつかり合う音だ。

 その音源が姿を現すとシグルドは構えを解くが、逆にミーシャはシグルドの影へと隠れる。


「お姉様―‼」


 駆け寄ってきたのは、体を自由自在に水へと変換できる幻影の猟師の一人、ガンドライドだ。理性が戻った時に暑苦しいと脱ぎ去った全身鎧(フルプレート)を身に付けている。

 寄ってきたガンドライドは陰に隠れるミーシャを見つけると野獣の様に目を光らせ、鼻息を荒くする。


「お姉様お姉様‼ 私ちゃんとやりましたよ‼ だからご褒美、ご褒美を要求します‼」


 頑張りましたと胸を張り、大きく両腕を広げる。要するにいい子いい子して欲しいのだ。しかし、ミーシャは冷たく言い放つ。


「お前が頑張ったのは分かったが、結果は? それが一番重要だ」


 自分が言ったことをしっかりとできているのか。試すようにミーシャが目線を向けるとニッコリと微笑み腕を振るう。

 ——すると、洞窟の奥から流水が押し寄せてくる。狭い洞窟内に逃げ場なく押し寄せてくる水の奔流はそのままミーシャ達を飲み込むかと思われたが、その直前まで来ると見えない壁があるかのように急停止する。

 そして、その中には確かにいた。懸賞金は前の二人は少ないが、それでも金貨二十枚が賭けられている盗賊団の幹部が——。


 キラキラ、ワクワク。成果を持ってきたガンドライドがミーシャに向ける視線だ。その視線を受けて居心地悪くなったのか、自分の体を隠そうと更にシグルドの陰に入る。

 それに不機嫌になったのは当然ガンドライドだ。だが、その矛先はミーシャではなくシグルドに向けられる。


 さっさとそこをどけと言わんばかりに睨み付けてくるガンドライドと絶対に退くんじゃねぇぞと睨み付けてくる。

 両社に挟まれる形になったシグルドが取った行動、それは——————


「裏切り者ォ‼」


 取り敢えず、結果は出したんだからご褒美は必要だよね。というものだった。

 魚の鑑賞会のようになった洞窟で再び悲鳴が響き渡る。


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