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竜殺し、国盗りをしろと言われる。  作者: 大田シンヤ
第三章
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メレット迷宮 1

先週投稿できるかもと云いながら、結局は時間がかかって一週間も空けてしまった。いや、ホントはやるつもりだったんだけど忙しかったですよ。でも、今週は投稿できるぜ、ヤッター‼︎

 

 ――メレット迷宮。

 この名の由来はただメレットという土地にあるからこの名が付いたに過ぎない。迷宮でなかったらメレットの谷とでも名付けられていただろう。

 その迷宮全体を包むように広がる深い霧——元々谷などは霧が発生しやすい場所ではあるが、年中霧に包まれるというのは異常だ。

 そのため、帝国の魔術師達はこれが魔物による影響ではないかと考えられている。

 あの谷の中は空中の魔力濃度が高く、外に生息していない魔物も生息している。そんな、まだ見ぬ生物を調べたいと思った研究者も多く、谷の中に足を踏み入れた者達もいたが、誰一人として帰ってきた者はいなかった。

 そして、いつしかそこは帝国の者達に取って近寄りがたい場所になった。







 深い霧によって十メートル先すら禄に見えないこの場所には、魔物も多く生息し、至る所に底なし沼があり、嵌まれば抜け出すことは困難だ。それを回避する道はあるのだが、迷路のようになっており場所を示すような物もないため、一度入れば、出ることは困難だ。


 シグルド達はそれを承知でこの場に踏み入った。

 前をシグルドが歩き、その後にミーシャが続く。互いに手に届く距離で歩き、ミーシャのルーン魔術によって光源を常に北に向けることで離れぬように、迷わぬようにしていた。


「それにしても、やっぱりルーンは便利だな」


 方位磁石も意味をなさないこの場ではとてもありがたい。ふよふよと空中に浮かびながらミーシャの後ろで北を指し示し続ける光明(オセル)のルーンが刻まれたルーン(ルーンストーン)を見上げる。

 だが、何が気にくわなかったのか、ミーシャがムスッとした顔でシグルドの脚を蹴った。


「便利という言葉をやめろ馬鹿者め。魔術とは神が人間に授けた一つの神秘だ。それの探求には金塊以上の価値があり、深淵に到達すれば全ての謎が解明されると言われているんだぞ」


 どうやら便利という言葉がお気に召さなかったらしい。確かにこの少女は魔力操作や魔術について語るときには両親のことを語る次に力が入っているようにも今更ながら思う。

 前に魔力操作について教えて貰っていた時を思い出す。

 あの日は、魔力の操作をするだけなのにいつの間にか魔術の話しを小一時間聞く羽目になったのだ。

 

「(想像するのは自分の心臓から流れ出る血のようなイメージ。心臓から指の先までに魔力が行き渡らせ、筆を執るように空中に描くーーだったな)」


「魔術を便利などという言葉で片付けるのは全魔術師に対して不敬だぞ。――まぁ、魔術の基礎すらできない貴様に「アルジズってか、オオ!!できた!!」――は?」


 間の抜けた声がミーシャから漏れる。

 自分が丁寧に説明している時にこの男は何をしているんだと思うが、それ以上に重大なことが起きたのでそれは一度引っ込めておこう。

 ミーシャの目を引いたのは、シグルドが一文字のみだがルーン魔術を使用したことだった。


「お、お前どうやったんだ!?」

「どうやったって……やり方はお前の方が詳しいだろうが」

「そういうことじゃないわドアホ!!何でお前が魔術を使えるのかと聞いているんだよ!!」


 普通であれば魔術書を読み解き、師に教えをこいて学ぶものだ。ミーシャはシグルドに魔術を少ししか教えていない。魔力操作のコツなどは教えたりはしたがそれだけだ。――と思っている。


「いや、別に見ていたらできそうだな~と思って……」

「見ていたら!?できそう!?」


 自分自身でもできると思っていなかったシグルドは率直にやろうと思った経緯を話すがそれが逆にミーシャに突き刺さる。


「あ、ありえん……私だってあんなに努力したのに」

「おい、大丈夫か?」


 シグルドの発現に膝を着くミーシャ。そして何故ミーシャが膝を着いたのか原因に気付かないシグルド。

 確かにシグルドは魔力操作のコツを少しばかり教えただけで、ある程度流れ出る魔力を制御することは出来ていた。もう少しすれば完璧にマスターするだろう。しかし、こんなことがあっていいのだろうか。

 あまりのショックにミーシャがシグルドを睨み付ける。


「このっ――――才能マンめ!!」

「えーと……俺は罵倒されているのか?」


 罵倒とは言いがたい言葉にシグルドは頬を掻くしかできない。その様子にミーシャの怒りのボルテージは更に上がる。


「罵倒したいわこのボケェ!!畜生……何で見ただけで魔術使えているんだよ」

「何か…………すまん」

「謝るな!!こっちが惨めになるわ!!」


 深い霧の中でギャーギャーと騒ぎ立てるミーシャ。そんなことをしていると魔物に居場所を伝えているようなものであるため――


「■■■■■■■■!!」


 魔物に見つかるのは当然だった。


 出現したのは沼地の特有の生物などではなく、何処にでもいる食屍鬼(グール)だった。人の形をしている魔物で死人(ゾンビ)と見分けがつかない者もいるが、二体の魔物の生まれる仮定が違う。死人は死体や人間などに物質に干渉できない下位の幽鬼(レイス)が取り憑くことで死人となるが、食屍鬼は食屍鬼の(つがい)が一つになり、排卵することで生まれる。たまに会話に応じてくれる食屍鬼もいるのだが、今回はそういかないらしいと判断する。

 久しぶりの獲物に歓喜するのが見て取れる。


「ミーシャ離れるなよ」

「………………」

「ミーシャ?」


 シグルドが離れぬように言うが、膝を着いたままミーシャは返事をしない。一体何があったのか……と彼は思っているが、原因はやはり前のやりとりである。


「し……」

「し?」

「死に晒せえぇぇぇぇぇ!!炎よ(カノ)!!」

「ちょ――俺前にいるんだけど!?」


 シグルドのことをお構いなしにミーシャが最大級の火球を放つ。何とか地面に伏せることで回避するが、髪の毛が数本炎に焼かれた。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」


 男勝りな声で大炎球を撃ちまくる。食屍鬼達は一匹残らず炎に包まれているが、沼にも着弾しており、水蒸気が出て視界を更に悪くしている。


「おぉい!?もうやめろって、大丈夫だから‼」

「——はっ!?…………やり過ぎたか?」

「当たり前だ」


 大炎球によって焼き焦がされた死体とシグルドの髪の毛を見せつける。若干狙いが自分よりになっていた気がしたが、勘違いだと思い直す。


「悪かったな‼」

「おい」


 そんなシグルドに対し、ミーシャは謝罪をした——胸を張って……。


「胸を張るな、せめてしおらしくしろ」

「ふん……それよりも先に進むぞ」


 胸を張る様子に本当に自分狙いで撃ったんじゃないだろうかと思いながらも、シグルドはミーシャの後へと続いた。

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