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頑張って書きました

 キャラバン隊と領主様の兵が出発して、3日がたった。旅は順調であり、今のところ問題は発生していない。

 俺はキャラバン隊の食料や水を積んだ馬車を操縦している。

気づいたことがある。どうも領主の荷物は大量にあるわけではなく、馬車一つに収まるほどの量らしい。俺たちのキャラバン隊についてきている護衛兵たちは15人ほどいるが、食料や水の積み荷などを考慮して考えると、実際に運んでいる荷物は多くても馬車一つ分という風に考えられる。

普段護衛を雇うときは魔法道具を持っており、魔法にある程度精通している冒険者を5人程度雇うことが多い。今回の護衛の数は15人と普段の3倍の人数であるため、キャラバンとしては普段より大規模なものになると考えていたがそうはならなかった。これは普段運んでいる積み荷を今回はほとんど運んでいないからだと考えられる。

積み荷の中身については教えられてはいないが、何か貴重な宝石や魔法道具なのかもしれない。

護衛の兵士たちは基本的には馬車に隠れており、一見は普通のキャラバンに見えるということだな。


それにしても魔物と遭遇しなさすぎる。この三日間魔物とはいちども遭遇していない。普段は親父の魔物除けの腕輪の効果が発動していても、三日で一度も戦闘がないことはあっても、一度も遭遇しないことはまず無い。

護衛たちがより強力な魔物除けの魔道具を持っているのか。魔物除けの道具は商売人や旅人ならだれもが欲しがる道具であるがゆえに、とても価値が高い。親父が持っているのはランクの高い品だから、それよりも効果が高いとなるとよっぽどの品だ。

それほど、この積み荷は重要ってことか。もしくは、積み荷自体が高価な魔物除けの魔道具か。

どちらにしろ、ヤバイ仕事であることには変わりない。気を抜いてはいけないな。


五日後、まだ魔物には一度も遭遇していない。そして親父がある違和感に気が付いた。

「俺たちが王都に向け出発してから、5日たったが、どのキャラバンとも遭遇していない。」

俺たちはいつもなら、どこかしらのキャラバンと道中異変がなかったか情報交換をしている。しかし、王都へと続く道で誰とも遭遇しないのはさすがに違和感がある。

「親父、もしかして道中盗賊におそわれたんじゃないか?それか、俺たちが運んでいる荷物を狙っているもっとやばい奴らか。」

「ああ、そうかもしれない。ちょっと、護衛の隊長と今後の予定について、話してくる。もしかしたら、引き返すこともありえるかもな」


 しかし、俺たちのキャラバンは引き返すことは無かった。親父は中止することも視野に入れるべきだと進言したが、護衛隊長には荷物を守り抜く自信があるらしくそのまま、進行することになった。親父も護衛が15人もいれば大丈夫だろうと納得し、それに同意した。


 町を出発して一週間がたち、仕事も残り半分となった。予定ではこの七日目には王都との中継地点にある、村を通り過ぎる予定であった。

 しかし、そこにあったはずの村が無くなっているのである。警戒しながら村を横切っていくと、何者かに村が襲われたような形跡がいくつか見られる。家は崩れており、焼け落ちた小屋などの跡が残されている。そこには、壊れた武器がいくつかころがっており、打ち壊された石壁の破片が散乱していた。しかし、村には死体が一つも転がっていないのだ。

 この村は明らかに異常だ。キャラバンにも異常な空気が流れ始めた。おのおのが戦う準備や、積み荷を守る準備などを始めた。護衛の馬車からは一段とピりついた空気が流れている。

「親父、見張りの水晶に反応はないのか?」

 見張りの水晶とは、こちらに敵意があるものの存在をある程度知らせてくれる魔道具である。水晶の反応によって、どれくらいの規模の敵が近くにいるか知ることができる。しかし、どこに敵がいるかは知ることができないため、注意が必要だ。

「ああ、特に反応はない。だが、俺のカンが言っている。ここには何かあるぜ。」

 見張りの水晶に反応しないということは、敵がいないかもしくは、こちらの見張りの水晶より質の高い、気配を消す魔道具を何か持っているということだ。


 ある程度村の中を進んでいき、キャラバン隊が村の中央に差し掛かったところで異変は起きた。

 あたり一面が俺たちの周りを取り囲むように赤黒く光りだした。

「なんだ、何が起きたんだ!」

「水晶に反応がある!敵だ!正体は不明!総員戦闘態勢につけ!」

 護衛たちの行動は早かった。馬車から飛び出し自分たちの積み荷を守る陣形を作っていた。

「おいおい、守るのは自分たちの荷物だけかよ!」

キャラバン隊員の一人が言った。

「緊急事態だ!お前たちを守る余裕はない!もとより、お前たちはただの案内役だ!」

護衛隊長が答える。

くそっ!敵の正体は何なんだ!

敵の正体はすぐに分かった。数は多くはない。それぞれ頭に角が生えており、禍々しいオーラを発している。

一目でわかった。悪魔だ。それも悪魔の中でも格が高い上級悪魔だということが分かった。それが複数体確認できる。

「おい、人間ども。積み荷を渡せ。」

護衛隊長が勇ましく答える。

「断る。悪魔風情が人間を思い通りにできると思うなよ!お前らが来るのはこちらもわかっていた。わが兵はすべて教会で祝福を受けた聖なる武器と鎧を装備している!貴様らなどおそるるに足らんわ!」

そう言って兵士たちは悪魔に打ってかかった。

俺は震えが止まらなかった。無理だ。勝てるはずがない。しかし、俺は動くことすらできずこの場から逃げ出すこともできなった。それはキャラバンのみんなも同様で、恐怖で固まり震えていた。

そこから先は地獄のような光景だった。

兵士たちが悪魔一匹に何もできずに殺されていくのだ。聖なる光をまとった一撃も悪魔に簡単にはじかれてしまっていた。また一人、一人と護衛の兵士が殺されていく。しかも手は出してこないが、悪魔は他にも複数いるのだ。

無理だ。全員殺される。

そのとき、俺が操っている馬が突然走り出した。必死にこの場から逃げようとしているのだ。だが、うまくはいかなかった。

「動いちゃダメよー」

悪魔がそう言って何かを唱えると、火の玉が飛んできた。それは、馬に当たると同時に爆発した。

俺自身も爆発に巻き込まれ馬車から投げ出された。

 傷だらけになり廃屋に投げ出された俺は、そこに地下室への入り口を見つけた。俺は隠れようと必死の思いで、地下室への階段を転げ落ちながら、降りていった。

 階段を転げ落ちた先で俺は気を失った。

「ここはもう安全だよ」

そのとき、子供のような声が聞こえた気がした。


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