表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

社会の縮図

作者: 星野航

「お、ロールキャベツか。うまいよなぁ」


行きたくもない接待の席でおでんをつついていたら、大分酔っぱらったのであろう、社長が酒臭い息を吹きかけながら話しかけてきた。


「おでんに入ってても美味いですよね」

「おうおう。ってバカ、そういう話じゃねーんだよ」

「はぁ」

「ロールキャベツはなぁ。会社そのものなんだよ」


突然何を言っているんだろうか。

こちらが冷めている反応であることも気にせずに語りが続く。


「いいかぁ、ロールキャベツのうまいとこってどこだ。

キャベツじゃないよな、そしたらただの煮込みキャベツだ。

大事なのは中に入ってる肉、そうだろう?」


「つまりだ。肉が主役であるにも関わらず料理名に肉の字は入ってないわけだ」


それが? とも思ったが確かにその通りである。

わずかな興味を感じ取ったのか、社長は息巻いて言う。


「つまりだ、それは会社と一緒なんだよ!

大事なのは中身、イコール働いているお前たち社員なのに

それが料理名、つまり社名に一切反映されていない!

俺はそれが悲しい!」


あれ、この社長意外といいこと言っているのか?

割とどうでもいい着眼点ではあるが、自分たち社員のことを想って話しているのは分かる。


「お前たちがいるから会社は成り立っているんだ……!

俺はそれをわかって欲しい……!」


熱が入った社長のロールキャベツから始まった秘めていた会社愛、いや社員愛が爆発する。普段はクールな自分も思わず胸が動かされ、食べるのも忘れて話を聞く。


「俺たちはロールキャベツだ! ロールキャベツなりに頑張っていこうじゃないか!」

「社長……!」


「あ、おでんイイッスねー! これ、もらいますね!」


スッと、接待相手の若い野郎が自分たちの席を訪れひょいとロールキャベツを食べていった。


あぁ、こうして会社は成り立っているのか。社長の言うことに酷く納得した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ