プロローグ
「ふぅ〜今日も疲れた!」
彼の名前は加納太郎。
まもなく五十路を迎える普通のおっさんだ。
帰宅途中の彼の足取りは重い。
毎日変わらない生活の繰り返し、ただそれだけでも気が重いのだ。
そんな彼にも家族がいる。
妻と二人の子供達だ。
しかし、子供達はそれなりの年齢になり、彼が帰宅しても自分達の部屋からは出て来ない。
また、妻もスーパーのレジのパートをしているため、太郎の帰りを待たずに今日も寝ているだろう。
帰った太郎がする事は、昨夜の残ったカレーを愛犬のポチと二人で食べ、風呂に入り、明日の仕事の為に寝るだけだ。
「ただいま」。
案の定返事はないが、ポチが出迎えてくれた。
ポチの相手をしながら、風呂場に行って風呂加減を見る。
「ぬるいな…」
仕方なく、追い焚き機能を使って好みの温度になるまで待つしかないので、晩飯を食べる事にするが…
ダイニングに書き置きが一枚、「腹減ったからカレー食った」と書いてある。
多分、長男だろう。
長女はダイエット、ダイエットとうるさかったはずだ。
仕方なく、冷蔵庫の中を探すとウインナーが入っていた。
太郎は、それをつまみにビールで晩酌をする事にした。
ポットの中のお湯を小さな片手鍋に入れて沸騰させる。
ウインナーをボイルするのだ。
以前、昼休みに偶然入ったドイツ料理店のウインナーを食べてから、太郎はウインナーはボイル派になった。
さらに冷蔵庫の中を探すが、つまみになるような物は無かったが、マスタードがあった。
「これでいい」。
風呂場に行き湯加減を見るが、まだ好みの温度ではないので、晩酌を楽しんでからにしようと気を取り直す。
太郎は、ポチがついてくるのを楽しみながら、ウインナーをボイルし始めた。
ポチも鼻をヒクヒクさせて、太郎からウインナーをもらうつもりのようだ。
「さあ出来た!」
ポチの皿にウインナーを1本冷まさずに入れてやる。
ポチはウインナーが熱いらしく、まるでお笑い芸人のおでん芸のように皿に近寄っては離れ、離れては近寄っている。
その隙に「プシュ!」と発泡酒を開けて、ウインナーを頬張る。
「あー美味い!生き返る!」
晩酌が終わっても、ポチはウインナーを頬張っている。ようやく冷めたのだろう、嬉しそうに食べている。
そのポチをゲージに入れ、風呂に入ることにする。
湯加減も丁度良い。
仕事疲れが癒えていくのが分かる。
風呂から上がると発泡酒をもう一本開けた。
だか、気持ちは逆に暗くなる。明日の仕事を考えてしまうからだ。
「もうすぐ五十路を迎えるっていうのに、まだまだこんな生活を送るのか…」
発泡酒を飲み終えると明日の仕事の為に、床に入る。
身体の疲れが、太郎を眠りの世界へ誘った。
みなさん
いらっしゃいませ!
作者のはっつあんです。
ついに始まりました。
「日本の普通のおっさんが気がついたらヒトラーになっていた件」
次回はいよいよ当事者達がご対面です!
一体これからどうなる事やら…
どうぞお楽しみに!
ちなみに作者の私も主人公の太郎と一緒の日本の普通のおっさんです。
でも、五十路前じゃないですよ。笑