葉
前書きが特に思いつかない
太陽の光を浴びて青々と輝く葉は植物に命を与え成長させ、そして散っていく。
輝き散り行くその姿は色を変え回りに命を吸い上げられ朽ちた姿。
色を変えていきそして散る姿は美しい。
多くの生徒が登校してくる中、青葉恋乃羽は幼馴染みでいつも一緒の幹と登校する。
皆が見ているテレビの話し。クラスメイトの面白かった話し。皆で行く寄り道の話し。
恋乃羽は尽きる事なく幹と話す。たくさん喋る恋乃羽に幹がそれはこうだね。そしたらこうしたら?と面倒をみるように会話する。
長年の当たり前のやり取りだ。
恋乃羽は道化師のように回りの空気を読んで行動し幹に起こられ役目を与える。
この関係に恋乃羽は少し疲れていた。
今日も当然のように二人を中心に回りに人が集まる。幹が仕切って恋乃羽が盛り上げる。
そんな放課後。クラスメイトと今日はどこに寄り道をしようか?選択肢を提示し幹に決定権と役割を与える。
当たり前のいつもの雑談。
皆の顔色を伺いつつその日の放課後を導くのが恋乃羽の役目。
もうなれたものた。だが皆の顔色を伺い行動をまとめ幹に決めさせる。
いささか面倒は感じる。
そんな中最近桜を通じてグループと関わりを持つようにたはなった良子が声をかけてきた。
いつもならサッサッと帰る良子と桜にはしては珍しく教室に残っていた。
前に話していたクレープ屋に行こうと言う誘いだった。
今日は面倒に行き先を模索しなくても良いことにとても楽で嬉しく恋乃羽は嬉しくその案になった。
「いーね!でもいつも二人とも先に帰っちゃうのに良いの?」
嬉しそうに良子を覗き込む恋乃羽。
「知らない人がいっぱい居るなか帰るのが嫌なだけだっから恋乃羽ちゃん達が一緒なら平気。」
楽しそうに微笑む良子に何となく行き先を決める面倒な仕事を変わってもらった嬉しさを覚える恋乃羽。
「わーい!それじゃぁ皆でクレープだぁ~!」
幹の意見もそこそこに皆でクレープ屋に向かった。
色々なクレープを前に結果無難にチョコバナナクレープにした。
幹も同じものを頼んでいた。
クレープを食べながら色んな話をした。
いつもは恋乃羽が話を降り皆があれやこれやと話を膨らませ幹がきつめにまとめあげる。
だが今日は違った。
良子が話の話題を降り回りがそれに盛り上がり恋乃羽もそれに合わせる、何て楽なんだろう。良子相手にも幹は手厳しい事を言うが良子はさらりと受け流し、幹の威圧感が全くなくとても楽なおしゃべりだった。
幹はあまりでしゃばれず良子が旨く立ち回り楽しく会話を楽しめた。
そして途中まで一緒に帰った。家に方向が一緒の良子と恋乃羽は二人きりで短い家路へと向かう。
今までにない無理をしない立ち回りをできたのは良子のお蔭。
恋乃羽は嬉しかった。
回りの空気を読んでまるで道化師のようだと恋乃羽は思っていた。
辛いこと悲しいことがあってもおちゃらけて笑って見せていた恋乃羽。
いままでにない開放感を味わっていた。
「りょうちーん今日クレープ美味しかったねぇ~」
「そうだね。美味しかったね!でも皆で行動するのってちょっと疲れるね…恋乃羽ちゃんは凄いねぇ~。」
「ん?僕凄くないよぉ~僕はダメダメ~幹が居ないとなんもできない自覚めっちゃあるよ~」
「そんなこと無いと思うな~、恋乃羽ちゃって回りに気を使えて要領も良いし、勉強だってできるでしょ?」
「僕は…そんなにいいこじゃないよ~つーちひょーでも落ち着きなさいの苦情言われちゃって(笑)」
「皆頑張って傷ついてる恋乃羽ちゃんに気づかないんだね….」
「えっ?」
「明るく回りのために自分を殺して振る舞う、とっも苦しい事だと思うよ…私は苦しい…」
「りょうちん?」
寂しそうな良子の顔に自分を重ねる。
道化師を演じる自分。
どこか自分を偽ってみえる良子。
そんな良子になんと言葉をかけていいか戸惑う恋乃羽。
「何てね!あっ、私こっちだから。」
悪戯っぽくだけど少し影を落とす良子の笑顔を複雑な思いで恋乃羽は見送った。
いつもと変わらない幹との登校。適当にいつもの会話をする。
おちゃらけた恋乃羽を上から目線で話す幹。
そんないつものやり取りに小さな変化。
「恋乃羽ちゃーん!幹ちゃーん!」
この最近でよく話すようになった馴染みのある声が二人を振り向かせる。
良子だった。
小走りで駆け寄ってかる良子の後ろを桜がついてくる。
「おはよーりょーちん桜っち!」
「二人ともおはよう。」
「良子ちゃん珍しいね。この時間に会うの。いつもは私たちより先に教室に要るのに。」
「うん、ちょっと朝がきつくてね。明日からこの時間に来ることにしたの。」
「そうなんだ~じゃぁ明日から一緒に行く?」
「ありがとう、皆で行こうね!」
「えっ?」
桜が少し困惑と寂しそうな顔をした。
「どうしたの桜ちゃん?」
「えっ…」
「久しぶりに皆と登校だからとまどってるんじゃない?ねっ?桜?」
「うん…」
そんなこんなで四人で登校し始める。
挨拶を交わしながらいつも一緒のメンバーが集まってくる。
いつも話を降りその場を盛り上げるのが恋乃羽の役目だったがいつの間にか話の中心は良子になっていた。
良子が話すことでいつも恋乃羽にきつく言っていた幹は口出しすることがなく、特に幹の出番は無いものの話しは盛り上がり恋乃羽もとっても気が楽に過剰におちゃらける必要もなくとても楽に過ごせた。
良子が居ればとても楽な恋乃羽、今までとても無理していた事に気づく。
いつも自分の役を全うしていた。
時には可愛がられ必要以上に幼い自分になり。時にバカな行動をして笑い者になったり。
その場を納めるために嫌われ役をかってでて嫌みや影で悪口を叩かれたり。
自分の心の傷に辛さに耐えられないかもしれない。
そんなときに良子がグループに入ってきて少しのガス抜きになった。
だけど良子が居ないときは、やはり恋乃羽は幹や皆の道化師にならなくてはならない。
辛い…。私の目に見えない傷は痛みは誰にもわからないのだから…。
恋乃羽は少し疲れていた。
ある日の放課後だった。
少しおちゃらけすぎた恋乃羽は反省文を書かされるためい残りをしていた。
生徒指導室で反省文を書き、職員室で軽く説教を受けたらほとんどの生徒が帰り自身の教室にはポツンと人影がひとつあるだけだった。
この時間にも残っている生徒が居るのか…そんなことを考えながら教室に入ろうとした。
だが様子を見て一瞬息を潜めた。
窓辺でカッターをもって立っていた人物を見たからだ。
悲しそうな虚ろな目をした良子だった。
何となく身を隠しその様子を伺ってみた。
良子はワイシャツの袖をまくった。
その腕は遠目から見てもわかるくらいに赤黒かった。
それは多分傷だ。それも人為的につけられた。
良子はその腕をためらいなくカッターで傷つけた。
恋乃羽は驚きものをとをたててしまった。
窓辺で遠くを見ていた良子が恋乃羽を見た。
「恋乃羽ちゃん…」
「りょ、りょうちん何やってるの?」
「目に見えない傷を目にみえるようにしてるの…」
「目に見えない傷…」
「こんなに辛いのにね、真っ赤なのにね…」
良子の腕から血が1滴床に落ちる。
良子はカッターを机に置いた。
「私帰るね…。」
良子はそのまま鞄を持つと恋乃羽を置いて教室から出ていった。
残された恋乃羽はフラりと良子の置いたカッターへと向かった。
「目に見えない傷…」
道化師を演じる悲しい自分の傷に思いを馳せると自然とカッターを手に取っていた。
すっ、白い手首に一本刃を滑らせる。
不思議と痛みは感じない、心が傷んでそれが形になっただけだからだろう。
傷跡からはぷっくりと赤い血が浮き上がる。
「あぁ、僕傷ついてるんだ…」
恋乃羽は暫く呆けていた。
良子は教室を出たあと学年のちがうて洗い場までやって来て石鹸で赤黒い手の線を洗い落とした。絵の具で描いたそれはたやすく落ちた。そして残るのは先程着けた傷のみ。
ハンカチで圧迫止血をし流血を止める。
持ってきていたガーゼと包帯でくるくると器用に手当てする。
さて、恋乃羽はどうなるだろう。
色を変え行くその葉に思いを馳せる。
あの日から恋乃羽は真っ先に向かっていた幹の元より良子の席に向かうようになった。
良子も恋乃羽を特別のように扱った。
次第に恋乃羽は良子と居ることが多くなり良子について回るようになった。
今まで恋乃羽がグループの中心で話を回していたが今は良子が中心となっている。
そして幹より良子に頼るようになった恋乃羽は宿題は良子乃方針で丸写しでなく理解するように教えられるようになり道化師のように誰かを頼らなくてもよくなった。
その間にも恋乃羽の腕は赤く染まっていく。
そして時々体育館裏の秘密の場所でを良子に密かに見せていた。
良子はその度に恋乃羽の傷をさすりかさぶたを指でなぞった。
自身は包帯を巻き返しその上に赤黒く血の色に似せた絵の具を染み込ませた。
「りょうちん、私の腕ボロボロだね。」
「恋乃羽の心はボロボロだね。」
「りょうちんの心もね…」
作り物の包帯で隠された良子の腕をうっとりと眺め傷ついた自身の腕をからせる恋乃羽。
沙が学校に来なくなった。入院したらしい。
そんなこと今の恋乃羽にはたいして気にならなかった。
良子との傷の交流。良子だけに見せる傷ついてきた心を癒してもらえるような時間が大事だった。
「恋乃羽…あのね…お願い、助けて。」
放課後良子の待つ体育館裏に向かうとちゅう幹が恋乃羽を引き留めた。
泣きそうな顔だった。
今泣きたいのはこっちだ。
「ごめん今急いでるからまたこんどね。」
「まって!まって恋乃羽…」
弱々しい幹の事を振り切り良子のもとへと向かった。
あぁ、良子早く私を助けて…
恋乃羽は甘く陶酔した気持ちで良子の元へと向かった。
何度目かわからないいつもの話をした。
「僕は小さいときから誰かのために生きてきたの。お姉ちゃんは反抗期でお父さんに食って掛かる。お父さんはお酒を呑んで暴れる。お母さんはお姉ちゃんが大好き。お父さんは私が止めないといけないから色んな話で気をそらせたり甘えてみたりでもお父さんは弟が一番で…。
人の顔色ばっかりうかがうのが僕の癖。学校でも同じことして回りが楽しく過ごせるようにって…僕の事は考えられない。僕はまるで道化師だ…誰も僕のためには動いてくれない…」
ポロポロ泣く恋乃羽を優しく抱きしめ背をさする良子。
そのうちに泣き止むと笑顔で良子にすり寄る恋乃羽。
「りょうちん大好き!」
幸せそうに恋乃羽は笑った。
それは何て事ない昼休みに起こった。
桜が良子に掴みかかってきたのだ。
「ねぇ良子ちゃんどうしたらいいの?どうしたら?どこを直したらいいの?」
そんな桜をみんなで引き離した。
桜はその日早退した。
次の日から桜は良子の回りどころかクラスメイト皆から遠巻きに見られるようになった。
良子に掴みかかったんだ当然だ。
前は良子を独占していたバチが当たったんだと恋乃羽は桜を良子から遠ざけ近づく隙を与えなかった。
幸せな日々だ。良子の側に居れば、この傷を共有できれば恋乃羽は幸せだった。
昼休みに皆と昼食を終えて雑談しているときだった。
暫く見ていなかった幹がゆらりゆらりとこちらに近づいてきた。
「良子ちゃん…」
ゆらりと近づいてきたと思ったら勢いよく良子に飛びかかり良子の首を締め出した。
「良子ちゃんが悪いんだ良子ちゃんが悪いんだ良子ちゃんが悪いんだ…」
キリキリと良子の首を占める幹を何人かの生徒で引き剥がし押さえつけた。
「りょうちん!大丈夫!?ねぇりょうちん」
恋乃羽は泣きそうになりながら良子を失うかもしれない恐怖に良子の生を確かめるように顔や腕を仕切りに確認するように確かめた。
「けほ、けほっ…大丈夫だよ…」
良子の言葉で安心した恋乃羽は良子に危害を加えた幹を軽蔑と憎しみの眼で睨んだ。
幹はわなわなと震えて押さえつけていた生徒を勢いよく降りきると大声を上げて窓へと向いそのまま勢いよく飛び降りた。
ぐしゃっと音がした気がした。
そのあとは大騒ぎだった。
先生が駆けつけ救急車が警察が色々なことがあった。
その日は早めに生徒たちは帰された。
事情聴取に噂話色々と目まぐるしい毎日だったが良子と過ごせれば恋乃羽はさして問題なかった。
今日も一緒に帰ろうと思ったが良子が見当たらない。暫く探したが見当たらない。暗くなるまで探したが見当たらない。
そして諦めて帰る途中、人だかりができていた。何か事件があったらしい。
物騒な世のかだ。
次の日登校して担任の言葉に絶望した。
良子が刺されて重症だと言うこと。
色々と聞き込んだ結果桜に刺されたと言うことがわかった。
そして良子は死ぬかもしれないと言う。
良子のいない世界?生きてる意味などない。
良子の元に早く行こう。
いつもの体育館裏の秘密の場所にきた。
恋乃羽は思いっきり自身を切り着けた腕足胴そして首。
血がどんどん流れていく。
良子と一緒だ。良子の傷は恋乃羽の傷。恋乃羽は良子にそんな思いを重ねていた。
退院した良子。赤く染まった体育館裏の秘密の場所。ここで恋乃羽は真っ赤になったのか。良子は微笑んだ。
「散るからこそ葉は美しい…」
読んで下さりありがとうございます