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干渉スキルで異世界冒険  作者: カシス
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01 異世界転移とおっさんとの出会い

「さぁて……こいつはどういうことだ?」


玄関を開けたら見知らぬ草原に立っていた。

確かに玄関を開けたときは我が家の小さい庭が見えてたはずだ。

だというのに一歩踏み出したら全く知らない場所にいた。

スマホを見てみると、電波は圏外。勿論wi-fiだって通ってない。

GPSだってロストしている。


(おいおい、上に鉄筋とかの遮断物もないのにGPSも使えないってことは)


まさしくこれは小説界で有名な異世界転移ものだ。

いざ異世界に飛ばされてみると非常に危険な状態だってのがわかった。


今の俺が持ってるものって言ったらシャツパンツに長袖の上着。財布にスマホ。

勿論靴だって履いてるし靴下だって履いてるさ。


だけどこれはやばいだろ。

なんせ俺は食べ物も飲み物も持ってない。

しかも現状、腹が空いているんだ。


最悪、水は川の水を利用するしかない。現代日本人が真水を飲むのは相当な危険がある。

沸かすにも入れ物は勿論、ライターだって持ってない。

サバイバル生活をしたことがない俺にはまさに死活問題。



憂鬱な俺の心を映したように空もどんよりと黒ずんだ雲が広がっていて、太陽(恒星)は確認できない。いつ振ってきてもおかしくはない。というか


「振ってきやがった!」


ポツポツと頭に当たったと思ったらすぐにザーッと本降りだ。

こいつはまずい。今更気づいたが俺は春向けの恰好をしてたのに、この世界はすでにひんやりとした空気だ。

このままじゃ風邪をひいてしまう。


どこか雨宿りできる場所は!?


右側の森だ! ここしかない。

ここに突っ立っているよりも森に逃げ込んだほうがマシだ!


スマホが壊れないことを祈って俺は全力で森へ駆け込んだ。

とにかく、これ以上濡れるのを防がないといけない。すでに体は冷え切ってしまっている。


どこか屋根代わりになりそうな大きな木。もしくは洞窟みたいなのはないのか!?

5分ほど探してみると、少し開けた場所があった。そこには小さな小屋がある。

まさに九死に一生だ。

体が震えるのをこらえて大きめに2回ノック。


「すみません、雨宿りさせてください!」


大きめに声をかけて引き戸を開けた。


中に入ると まさしく木造の小屋といった感じで土間と6畳あるかないかぐらいの部屋。

右側の壁には手作りの木棚に薪が並んでいる。

部屋の真ん中に木の床がくり貫かれていて灰が敷いてある。これは囲炉裏だろう。

誰もいないことを確認して、靴と靴下を脱いで部屋に上がる。


とりあえずざっと部屋を確認すると奥の棚にも土瓶がある。隣に大きめの瓶があったので蓋を開けてみると水が入っていた。


「飲めるかな・・・?」


手ですくってみると、大分冷たい水だ。匂いも特に臭くはないし飲んでみた。


「……普通の水だ。井戸水か何かか?」


とりあえず当面の水は大丈夫そうだ。あとは冷え切った体を温めなくちゃいけない。

薪に火をつけて温まらないといけない。だけど勝手に使っていいのだろうか?


一瞬そう思うが、こっちも悠長なことを言ってる場合ではない。

最悪、斧を借りて薪を作っておけばいいだろうと考えて遠慮なく使うことにした。


が、


「薪しかねえ! 着火用の枝とか……それ以前に火種どうすりゃいいんだ!?」


俺は煙草を吸わないので勿論ライターなんて持ち歩いていない。

この小屋の中にも置いていないし、サバイバル動画やキャンプ動画でみるような着火用金属も見当たらない。

となると木の棒で回転摩擦による火種を作るしかない。だけどこの小屋には薪しかない。

火付け用の棒や枝がないってことだ。外に行けばいくらでもあるが、この土砂降りの中に出たくもないし、枝も完全に湿気ってしまってるだろう。


「詰んだ……」


絶望した。頭が痛い。体が冷えすぎてやばい。

とにかくパンイチになって服を絞っておいたけど何も解決していない。


「だああもう! この薪に火が付けばいいのに!」

バシバシと牧の表面を叩く。すると


「あっち! ってこりゃいったいどうして……!?」


表面から火が出ている。それも火勢が強い!


「なんでかわからんがとにかく助かったのか」


こうなったらもちろん体を温めるしかない。あとは暖かい飲み物だ。

とりあえず土瓶に水を入れて囲炉裏にかけた。次第にお湯が沸けば体も温まるだろう。


火勢が強く、すぐに水が湧いたので陶器のコップに入れて飲んでようやく体も落ち着いた。

落ち着いてようやく衣服を乾かさないといけないことにも気が付いた。


「と言っても干すのに引っかけるものが何もないな。この小屋は」


基本的にあるのは囲炉裏に薪と土瓶と食器。それと水瓶。

食べるものもない。

そう思っていたら腹が減っていることを思い出した。


「部屋にこもったは良いが兵糧攻めでござりますな」


あほみたいに独り言を言うと、小屋の引き戸が勢いよく開いた。


「かぁぁ寒い! ったくいきなり降ってきやがって……お?」


突然入ってきたおっさんと目が合った。

かなりぴっちりとしたシャツから出ている太い腕。

背中から見える弓矢。


お互い数秒見つめあって


「あんた誰だ?」


腰のベルトからダガーを抜かれた。これまずいパターンだ!


「待ってくれ! 俺は雨宿りさせてもらっているだけなんだ!」


おっさんはすぐに襲い掛かってはこないようだ。数秒睨まれて


「まぁそうだよな。ったく今日は晴れるはずだったんだがな!」


ニカっとおっさんは笑って部屋にあがってきて俺の向かいに座った。


「あんたもついてないな。ところで見かけない顔だがあんたも狩人なのか?」


おっさんが囲炉裏に手を寄せて温まりながら聞いてきた。

俺はおっさんのセリフでなんとなく覚悟が決まった。

猟師じゃなくて狩人って言葉の違い。これがまさに日本じゃなく異世界なんだって思い知らされた。


「いや、俺は……信じられないかもしれないが別の世界から飛ばされてきたみたいだ」


嘘偽りない(と思う)言葉を投げかける。


「別の世界? 別の国から来たってことか?」

「えっとだな、全く別の星っていうのかな。ここは地球じゃないんだろう?」


もう率直に聞いた、これが実は地球のどこかの未開の地だったってわけじゃないなら否定されるだろう。


「チキュウってなんだ?」


ですよねー。まぁそうだろうと思った。


「俺は地球っていう惑星の日本って国に住んでったんだよ。つい数十分ほど前まではな」

「チキュウ ニホン どちらも知らない名前だな。」

「だろうな、つまりここは俺の知ってる世界じゃない、だというのに俺は日本語で喋ってるのにあんたと普通に会話できてる」


おっさんは少し黙って考え始めた。そして


「俺はお前が大陸共用語で喋ってるようにしか聞こえないぞ」

「だろうな、俺の世界の小説、いや物語では俺みたいに別の世界に突然行くことを異世界転移って呼んでるんだ。異世界転移した奴は大抵会話や読み書きがなぜか通じてしまうらしいんだ」


俺の話を聞いて、おっさんは笑い出した。まぁそれが普通の反応だよな。


「それが本当なのかどうかはわからんが、とりあえずお前は知らない土地で当ても誰もいない一人ぼっちってことか」


まさにその通りだ。俺からすれば、このおっさんは第一村人発見! 状態なんだから。


「まぁお前の状況はわかったよ。手助けしてやりたいが俺も特別余裕があるわけじゃない。ここは俺のような狩人が使う休憩小屋だからお前も勿論使っていい。だが水や食料は自分で用意しなくちゃいけない」

「と言っても俺は武器一つ持ってもないし使ったこともないぞ。」


それを聞いてジロリと睨まれる。

そして溜息をつかれた。


「そうだろうな、お前の体はどう見ても貧弱だ。少なくとも剣やダガーで動物を狩るのは無理そうだ。」


そりゃそうだろう。日本の猟師だって猟銃を使うだろうしな。近接武器で戦ったりもしないし、まして俺は猟師ですらない。


「そうだな、お前は罠を使うか弓を使うのがいいだろう。今度俺の予備の弓を貸してやる。罠を使うなら自分で作れ。今日は雨が止んだら、ひと狩りして家に戻る。とりあえずお前もその時は一緒に来い」

「本当か! すまない助かるよ。俺は真中武。おっさんは?」

「マナカタケシか、俺はムスド。見ての通り狩人だ。それと俺はおっさんではない。25歳だぞ!」


いかつい顔をしてるから実年齢より高く見えていたようだ。俺には30後半のおっさんにしか見えなかった。


「マナカタケシ お前の服が乾いたらひと眠りしておけ。雨が止むまでは休んでおいたほうがいい」

「ありがとうムスドさん。武だけでいいよ。それでさ、竿とか紐がないと乾かせないんだよな」

「俺もムスドでいい。さん付けは不要だ。とりあえず薪を置いてそこに服を乗せておけ。少しはましになるだろう」


言われてみればその通りだ。俺たちは囲炉裏に向かい合って座ってるから右側のスペースに薪を積んで服を置いた。

とりあえずおっさんの援助が期待できると思ったらようやく安心できたようだ。眠気が今更襲い掛かってきた。

まだ服は乾いてないからパンツ一丁だが、俺は少し横になることにした。



初投稿ですが、よろしくお願いします。

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