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ひと夏の恋、七年越しの約束  作者: 紫 陽花
3/3

君と出会った夏―in primary school―

(今でこそ俺は読書が好きだけれど、小さい頃は全く好きじゃなかった。そんな俺が変わったのは、小4の夏。)



夏休みの宿題として“読書感想文"があるのを見つけた母は、これが好機とばかりに僕を市内で一番大きな図書館へと連れていった。

児童書のコーナーに着いたとき、「こんなに多い本の中から課題図書なんて探せやしない」と思ったが、それは杞憂だった。

“小学生 課題図書コーナー"から僕でも読めそうなページ数が少ないものを選んでくれたところで、母は「一時間後に、また来るから」と別の場所に行ってしまった。


とりあえず手近にあったイスに座って読みはじめてみたが、一向に面白くない。ましてや感想文なんて・・・

とにかく母が迎えにくる前に、借りる本を選んでおかなければならない。

さて、どうしようか――― と行き詰まっていると、上から声が降ってきた。


「その本、読み終わったら貸して?」


知らない子に、しかも静かな館内で話しかけるのはどうなのか――と思ったが、よく見ると知らない人、ではなかった。クラスは違うが、同学年の子だ。

「今すぐ貸すよ。でもこれ、面白い?僕には退屈なんだけど、宿題があるからどうしても何かしら借りないといけなくて困ってるんだ」

彼女は、宿題?と首をかしげた後、

「なるほど、感想文ね。これ、ページは少ないけど、その代わりあんまり本を読まない人にとっては話が分かりにくいんだよね。男子にはこの本とかオススメだよ」

僕の手を引いて課題図書コーナーへと行き、分厚い本を差し出した。

「僕、本はあまり好きじゃないんだけど・・・」

「うん、でも読み始めたら面白くて止まらないから。すぐに読み終わっちゃうと思うよ」

じゃ、と手をあげ、彼女はさっきまで僕が読んでいたあの退屈な本を手に立ち去った。



家に帰り、さっそく読み始めた僕を、母は信じられない、という目で見ていた。

彼女の言っていた通り、その本は時間を忘れて読みいってしまうほど面白かった。



子どもというのは単純なもので、たった一冊の本をきっかけに、読書に対する姿勢が180度変わる。

僕は自ら図書館に足を運び、いろんなジャンルを読むようになった。


ただ、彼女は自分が本をすすめたのが僕だと気付いていなかったようで、二学期になってお礼を言いに行った時に怪訝な顔をされた。


あの夏、僕は彼女に図書館で(′′′′)出会ったことで、人生が変わった、といえる。

家の近くの本屋にも通いはじめたが、・・・それはまた別の話だ。


fin.

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