表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/36

痩馬に重荷

身の丈に合わないような、重い責任を負うこと。

「いつから気づいていた? アタシがキリアだって」




バチバチと電気を帯びたハンマーは、パチンととびきり大きな音を発すると、ただの竹刀へと形を変えた。

あ、るいちゃんの魔法ってこういう仕組みなのね。




「会った時からなんとなくね。そのメタリックな格好も、本当は『裏』のものなんでしょ?」


「ああ、そうさ。でも『表』にはロックというものがあるって聞いたから、この格好でも問題ないって思ったんだ」


「確かにね。普通の人にはただのメタルロッカーにしか見えないよ」




竹刀を竹刀袋に入れ、綺麗に結ぶ。見たところただの竹刀のようだ。




「にしてもさぁ……ジンより先に『表』の人間が気付くってどうよ?」




ギロッとネコくんを睨むお姉さん。ボス猫から制裁を受ける新入り猫みたいにびくついているネコくんに思わず笑いがこみ上げてきた。




「ま、まぁまぁお姉さん! ネコくんは記憶喪失で何も覚えていないらしいので」




茉莉菜ちゃんがフォローするけど、お姉さんの機嫌は一向に治らない。




「記憶喪失ぅ? ……はっ、面倒くせえの」




ポンポンと、竹刀で自分の肩を叩く類ちゃん。姉御肌タイプの子みたいだ。




「へぇ、優しいんだ? すぐ信じるなんて」


「嘘言ってこいつに利益なんかねーだろ。それに、『裏』の人間はこっちと違って順応が早いんだよ。ちょっとやそっとで後れをとることはないさ」




成る程。だから燐火ちゃんも警察になれたのか。優秀で結構。




「あの……ところでその馬……」




申し訳なさそうに、茉莉菜ちゃんが馬を指差す。錦糸のようなタテガミがさらさらなびいてて美しい。




「ん? ああ、そうだったね。どうしようか?」




耳がピクピク動いてせわしない。ふんわりクリームを塗るようにタテガミを撫でてやると、ちょっとだけ落ち着いた。




「随分懐いてるじゃないか。お前が飼えば?」


「んー……それなら役所に届け出さなきゃだし、健康診断とかワクチンとか……馬小屋も建設して……」


「そんな細かく考える必要ないよ」


「こっちじゃあ馬を飼うっていうのはそう簡単なものじゃないの。ねぇあかりちゃーー」




ドスッと、鈍い音がした。


あかりちゃんはネコくんを押さえつけるように、今まさに扼殺しようとしていた。




「アッカリン!?」




茉莉菜ちゃんが悲鳴を上げると同時に、類ちゃんが動いた。


あかりちゃんの手首を掴み、引き離そうと力を入れているけどびくともしない。



それは、あの時と全く同じ光景。




「テメェ、何してやがる!?」


「黙れ!!」




普段のあかりちゃんには考えられない荒げた声に、茉莉菜ちゃんがビクッと飛び上がる。


そして、あの時の俺と同じように、類ちゃんもまた突き飛ばされた。俺と違ったのは、頭をぶつけるところがなかったことくらいか。




「死ね……この裏切り者っ!!」


「! フリーー」


「ちょっとたーんま」




ネコくんがフリードを召喚する前に、馬の前脚であかりちゃんを押さえつける。圧死させないように気を配れるのは、この馬の器用さのおかげといってもいい。


見下ろしたそれは、別人みたいに険しい顔だ。成る程この子が、今のあかりちゃんを苦しめているってわけか。




「ねぇ君。君は誰? どうしてネコくんが憎いの?」


「離せ! 『表』の人間に話すことなどない!!」


「ということは、君は『裏』の人間なんだね?」




その顔に、初めて怒り以外の表情が見られた。




「もう一度聞くよ。君は誰? どうしてこんなことをするの?」




気付けば、その子の手の力はすっかり緩んでいた。

ネコくんを殺すことだけに集中していたその手は、自らの体を支えるために働いていた。




「私は……ジンになるはずだった人間。ただそれだけ」


「ジンに?」


「こいつがいなければ、本当は私がジンになるはずだったのだ。……ああ憎い……ジンが憎い……!!」




どうやら予想は当たっていたみたいだ。

答え合わせが済んだのなら、もう“彼女”に用はない。ここでネコくんを殺されては面白くないので、“彼女”には早々に消えてもらおう。




「もういいよネコくん。フリード呼んで」




その時、“彼女”の目が見開かれ、




「ま、待て天パ!!」




と叫んだのが、俺が覚えているこの日の最後の記憶だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ