和平へ
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『なに!シスコがやられただと。
何があったのだ。』
大本営では会議の場で怒号が飛んだ。
全員、詳細を聞くと黙り込んでしまった。
山本長官でさえショックを受けている。
ここで米内海軍大臣が
『やはり、和平ですな。
現在海軍でも高高度戦闘機を開発していますがもう少し時間がかかります。
陸軍さんも同じでしょう。
その新型爆撃機が100機でも来たら手におえなくなります。』
東條総理は
『しかし、ドイツに相談もせず行う訳には行かない。
西海岸の被害を最小限に抑えながら対策を練り、敵の滑走路に対し攻撃をすればどうかね?
こちらから攻撃に出、駐機中の爆撃機を粉砕すれば敵も諦めるだろう』
山本長官
『総理、その爆撃機の航続距離はわかりますか?
今何機保有しているのかわかりますか?
こんな状態で広いアメリカ大陸のどこに攻撃すれば良いのですか?』
『今から手当たり次第、全兵力で攻撃すれば良いだろう。見す見す解らないからと言って尻込みし、基地にこもってやられるならば攻撃に打って出た方が兵士達も英霊になれるのだ』
『そうだ、そうだ、こちらには神風が付いている。それで間違いなくアメリカは降伏するだろう。』
戦争推進派はみんな息巻いている。
『今日この上空に現れたらどうします?
ここまで飛んで来れないと言う保証はありますか?
原子爆弾がこの東京に落ちたらどうします?
まっ落ちたら誰も何も言えませんが…
まあ良いでしょう、とりあえず全基地を総なめに攻撃出来たとしましょう。
その時たった1機撃ち漏らした機が原子爆弾を積み何処かに輸送され発進したらそれをどうやって見つけますか?
今考えるのは西海岸では無く日本全体なのです。』
山本長官はみんなに諭す様に発言した。
とうとう誰も口を挟む者はいなくなった。
静まり返った中で米内海軍大臣が
『チャーチル首相に連絡して見ましょう。
現在カナダにいるはずです。
アメリカとの仲介役には丁度良いはずです。』
こうして和平に向けチャーチル首相に連絡を取ったのだ。
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連絡を受けたチャーチル首相は飛び上がって喜んだ。
『なんと、日本が停戦しただと。』
『はい、アメリカとの和平協定の為に閣下に仲裁に入って欲しいとの事です。』
『そうか、アメリカももう終わりかと心配したが………
良かった………』
首相は感極まったような感じでしきりにうんうんと頷いていた。
それはアメリカ側も同じであった。
大統領は連絡を受けると
『よし!』
と一言発しガッツポーズまでしていたのだ。
『最後の爆撃作戦が聞いたようだ。』
実際はB-29も完成したばかりで虎の子の30機であったのだ。
内心はあの龍砲が何百台と西海岸から攻め込まれたら止める手立てが無く、
さらにドイツがソビエトを陥落させ、こちらに牙を向けたら一貫の終わりであった。
原子爆弾もそれに間に合うかも解らない状況であったのだ。
であるから大統領も即座に和平協定に飛びついた。
停戦から一週間後、アメリカのワシントンにおいて停戦協定と和平協定が結ばれた。
内容は、
1、今後、両国間での紛争の撤廃。
2、西海岸のアメリカへの返還。
3、西海岸での日本軍基地の維持。
4、ハワイは日本領とする。
5、兵器の相互開発。
など他にもこと細かく決められた。
一部陸軍の反対もあったがなんとか無事協定は結ばれた。
こうして太平洋方面での戦争は終わったのである。