状勢
70
占領後、裕太と光一は一時の休息を利用しロサンゼルスのとある喫茶店にいた。
『裕太、ほんまにアメリカに来ちゃったな〜
こうなるとは思うてたけど、こんな早くに来ると思わんかったわ』
『俺かてそうや、ビックリやで!
考えたら扇風機がこんな事になったんやから風はやっぱ偉大やねん。』
『笑、ほんまやな〜感謝せんとあかんわ。
神様!仏様!風様!ってか。』
『笑、ところでこのハンバーガーてのはうまいなぁ、毎日食べても飽きひんわ。
さすがアメリカやで、肉がうまい!
おまけに街歩いてる女の人見たか、あんな肌露出させて目の毒やで。』
『あほ、目の保養やないか。
うちの隊の者が言うとったけどマッサージ店って言うのがあってな、そこ行ったら綺麗な金髪さんが身体揉んでくれんのやて。
裕太も行ってみいひんか?』
『なにゆうてんねん、そんなもん恥ずかしくて行けるかい!』
変なとこが生真面目なのか恥ずかしがりやなのか解らない裕太であった。
『そんな事より聞いたか、山本長官が東京に戻ってるんやけど、もしかしたら早く戦争終わるかも知れんぞ!』
『ほんまか、そやったらええな。
でもまだ暴れ足りないのもあるんやけどな。』
『まぁ、まだどうなるか解らんからしっかり準備だけはしとかなあかんで。』
『了解いたしました。大佐殿!』
『宜しく頼むぞ、少佐!』
二人は笑いながら店をでた。
71
その頃イギリスではドイツ上陸部隊の侵攻によりロンドンが陥落した。
イギリス政府はカナダに臨時政府を置きチャーチル首相も側近達と逃げ延びたのだ。
ヒトラーはイギリスに軍事拠点を構築するとアメリカ大西洋艦隊に牽制しつつイギリスの海岸沿いにV1と新型のロケット兵器の準備に入った。
V2ロケットである。
これはV1とは大きく事なっておりジエット推進では無く液体燃料を利用したロケットで、現代のミサイルの原型になったものだ。
V1は目標に対し轟音を響かせて行ったのに対しV2は高高度から無音で飛んで来るため捕捉が困難であった。
当時はどこから飛んで来るかもわからず撃墜も出来ないため心理的効果は絶大だったようである。
このV1、V2をアメリカ艦隊向けに発射予定し牽制を図ろうとしたのだ。
その上でイギリスを陥落させたドイツ軍は今度はソビエトに焦点を絞り各兵力を移動させて行った。
さすがにソビエト軍は粘り強く、どれだけ軍備を持っているのか、後から後から軍隊が現れドイツも攻めあぐねていた。
一方アメリカ政府は西海岸を占領されイギリスも陥落した報告が入ると、アイゼンハワー将軍を呼び寄せ日本軍対策を練るように指示をだしていた。
アイゼンハワーは当初、ヨーロッパ遠征軍の総司令長官になる予定だったがヨーロッパがこの有様なので待機していたのだ。
将軍は現状の戦力を考えた上、残った軍隊をさらにかき集め、ある作戦を実行しようとしていた。