ひととき
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ハワイではさっそく工兵隊が滑走路と港湾施設の復旧を急ぎ、基地としての機能を回復させていった。
日本からの増援部隊の要請も行ないアメリカ軍の置いていった戦車や車両などを日本兵が使えるように手直しもしていった。
ワシントンでは
『何ハルゼーが死んだ?太平洋艦隊の壊滅だと!』
大統領が報告を受け、愕然としている。
『はい!現在ハワイは占領され我が残存部隊はロサンゼルスに向け避退中との事です。』
『どうするのだ?』
『先ほど大西洋艦隊より空母を3隻、戦艦2隻にパナマ運河を通り西海岸に向かわせたところです。
さらに建造中の空母に就航を急がせました。』
『その新造艦はいつ出来るのだね?』
『2隻の空母と1隻の戦艦が二週間以内に就航予定です。』
『そんな数で足りるのかね、日本の新兵器の龍砲とやらはとんでもない破壊力があると聞いたぞ。
その対策は進んでおるのか?』
『はい、情報部のまとめによりますと龍砲は120kmという高速で移動し主砲は46cmもあり、水面を浮いて疾走する船舶だそうです。
しかし、弱点もあります。
浮上するため艦体は軽く装甲もかなり薄いようです。
報告では駆逐艦の砲撃でも充分効果があるそうです。』
『しかし、その駆逐艦が手当たり次第やられてるではないか?
巡洋艦や戦艦までやられいるのにどうするつもりだ。』
『はい、それで空軍と協力し爆撃機や攻撃機に、龍砲に効果のある砲門を乗せ、攻撃しようと思っております。
いくら早いといっても飛行機にはかなわんでしょう!』
そんな会話がワシントンではされていた。
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一方ハワイの港の母龍内では
裕太がたくさんの工員とともに龍砲に取り付いていた。
龍砲の電波測距儀に改良を加えていたのだ。
狙った敵に対し自動で照準を合わせる装置である。
さらにこれは装備されている機銃に対しても行われていた。
裕太は作業を見ている光一に対し
『白木少佐、これで一段と命中精度が上がるぞ!』
『はい!大佐ありがとうございます。これで玉の無駄遣いも減るであります。』
『6号艦も新しいのが配属されたし5号艦の修理も終わったからこれでまた、龍砲艦隊は完璧だ。』
『はい、そのように自分も報告を聞いております。
大佐、お願いがあるのですが後でまた食事に付き合って頂けませんか?』
『お〜良いとも、すぐ行こう。』
二人は人前だと周りの目もある為、上官と部下の体制を崩さないようにしていたのだ。
食堂に着くと
『光一、もう一つ話しておきたいことがあるんや。』
『なんや?アカネの事か?』
『違うわ、あほ!龍砲の事や。
いま日本に就航した龍砲が5隻になったんや、さらに10隻が就航予定になっとる。』
『ほぉ〜凄いやん!で?』
『それでお願いやねんけど…
一度、日本に戻って新しい艦長達に実践の話しをしたって欲しいんや。』
『俺が〜?嫌やで人前は苦手やねん。』
『頼むって!
今、海軍内で白木少佐の噂は凄いねんぞ。』
『ほんな事言うたって………』
『それに暫くは作戦も無いんやろ。
俺も一緒に行くから頼むわ〜。
それとも上官命令でも出したろか。』
『わっ、汚ね〜。それはないやろ。
しゃーないな〜昔から強引やもんな。』
『おっ受けてくれるんか?
助かるわ、早速竹内中将の許可もろてくるわ。』
『断わらしてくれんのやからしゃーないやろ。』
『笑、恩にきるわ。
新しい艦長達も英雄が来たら喜ぶで!』
こうして二人は一時帰国する事になった。