再びミッドウェー
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アメリカではルーズベルト大統領が頭を悩ませていた。
ニミッツ提督を呼びつけ
『提督、日本とはどうなっておるのだ。』
『はい、大統領。
現在はハワイを中心に艦隊を集結させております。
何隻か失ったものの太平洋艦隊は健在ですのでご安心下さい。
さらに新型空母が5隻就航予定ですし大西洋からの移動も考えております。』
『日本軍には新兵器が登場したと聞いたぞ!
中国も日本と講和し我々から離れてしまった。
ドイツもまだまだ侮れない状況だ。
イギリスのチャーチルも援軍要請がうるさいのだ。
早く日本を片付けてヨーロッパにちからを入れねばならない。』
『はい、任せて下さい!
新兵器と言っても水雷艇のような小さな艦艇のようです。
そんな物が1000隻あってもまったく問題ではありません。
現場では新兵器と油断した結果だと思います。』
『であれば良いのだが………』
ニミッツ提督は陸海空の三軍のトップであり非常に冷静な判断で戦争を指揮している。
そんな提督自身、小さな艦艇と油断しているのに気付いていなかった。
実際、アメリカでは空母の量産が始まり次々と就航予定である。
艦載機もF4FワイルドキャットからF6Fヘルキャットに変更され、空軍では大型爆撃機B-29が開発されていたのである。
やはり大国アメリカである。
日本と生産能力を比べると日本が空母を1隻作るあいだにアメリカでは10隻作ってしまうのである。
これではどんなにあがいても日本の負けは決まっていたであろう。
ニミッツが油断しても彼に非はないのではないか。
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山本五十六 連合艦隊司令長官は第二次ミッドウェー作戦を展開しようとしていた。
参加艦艇は
空母3隻
戦艦4隻
重巡8隻
軽巡10隻
駆逐艦20隻
の大艦隊を集結させ敵空母撃滅とミッドウェーの攻略を再度遂行したのである。
この時、第一龍砲艦隊は独自に行動していた。
山本長官の指令の元、先にハワイに陽動作戦を展開したのた。
ミッドウェー作戦の1日前、空母母龍は6隻の駆逐艦を回りに配置し、さらにその周りを龍砲2隻と龍砲改2隻が哨戒に当たっていた。
竹内中将は龍砲艦隊の指揮を執り開戦当時の真珠湾攻撃の時と同じようにハワイ北方より接近していた。
空には護衛機を飛ばしていたが前回と違い、アメリカ哨戒機に発見されてしまった。
『敵、哨戒機発見!これより撃墜に向かいます。』
零戦が撃墜しに向かったが先に打電されてしまった。
『日本艦隊発見!
大型空母1、駆逐艦6、
ハワイに向け南下中!』
ハワイ司令部では基地航空隊を即座に攻撃に向かわせ、艦隊も緊急出動させた。
ハワイ南方にいた空母部隊も呼び寄せたのである。
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竹内中将は護衛機を母龍より50機発艦させ龍砲を全艦、艦隊から離れさせた。
これは当初から予定された作戦だった。
母龍を囮にし敵の目を引きつけ、龍砲達を散会させたのちハワイに高速で近づくのである。
アメリカ航空隊は30機の爆撃機と20機の戦闘機で艦隊に近づいて来ていた。
護衛隊の零戦はそれを発見すると即座に爆撃機を狙い、一斉に飛びかかって入った。
アメリカ戦闘機は爆撃機を守るためその間に割り込み、敵味方入り乱れた状態になり、編隊は散り散りになった。
零戦隊の活躍により爆撃機は半数以上も撃ち落としたが、零戦もF6Fにより7機が撃墜された。
残った爆撃機はそれでも進出し母龍を見つけると急降下に入った。
しかしここで駆逐艦と龍砲改が立ちはだかったのである。
ここで8機を撃ち落とし残りは5機である。
母龍の機銃がカーテンのように弾幕を張る中、なんとか2機が爆弾を投下した。
1発は外れたが最後の1発が前部右甲板に当たってしまった。
母龍はもろい!たった1発でも致命傷になりかねない。
『消火作業急げ!』
幸い甲板に少し穴が空いただけですぐに消火された。
戻って来た零戦隊は左甲板に着艦させ、すぐに待機中の護衛機を発艦させた。これは2つ甲板を持つ母龍ならではの光景である。
その後母龍は北に転蛇しハワイから遠ざかり、龍砲の帰りを待つ為待機した。
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その頃、龍砲8隻は二手にわかれ島の左側と右側を目指していた。
すると右側に向かった4隻が空母艦隊と遭遇してしまったのである。
アメリカ艦隊は空母2隻からなる15隻の機動部隊であった。
ちょうど攻撃隊を発艦させようとしていたのだ。
『あの空母2隻に向け攻撃始め!』
龍砲の46cm砲が火を吹いた!
距離も近かったため初弾から命中である。
1発で空母は大揺れし発艦が出来なくなってしまった。
4隻の龍砲は敵艦隊の中に踊りこみ主砲を撃ちながら右に左に駆け回ったのだ。
アメリカ艦隊は大崩れし、いきなり乱入して来た龍砲4隻に翻弄され、応戦しようにも味方艦に誤射の可能性もあって砲撃出来なくなっていた。
さらに龍砲はスピードを生かし敵艦の至近距離から巨弾を浴びせ、一隻一隻と沈黙させて行った。
空母は1隻が大火災を起こし、もう1隻はすでに沈み始めている。
他の艦艇もボロボロである。
駆逐艦は轟沈し、かろうじて浮いている船も脱出に必死である。
『攻撃中止!このまま南に抜けろ!』
あっと言う間の出来事であった。
散々暴れ回った龍砲達は炎上している艦艇をよそ目に南下を再開した。
4隻は無傷で当初のポイントに若干の遅れだけで到達した。
予定時間になり8隻の龍砲は滑走路と真珠湾に向け巨弾を発射し始めた。
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ハワイはいきなり巨弾が降ってきたため空襲警戒警報が間に合わず、今サイレンが鳴り響いた。
まず滑走路がやられた。
飛び立とうしていた飛行機も大きな穴に足を取られ搭載していた爆弾が誘爆してしまった。
駐機されていた大型爆撃機や戦闘機などが次々と砲撃を受け炎上して行ったのである。
龍砲の陸上用砲弾は空中で100個の小型爆弾に分かれ、半径100mの物をすべて破壊してしまうのだ。
龍砲は4種類の砲弾を使い分けている。
一つは艦艇用の貫通力を高め船内で爆発するようになっている徹甲弾。
二つ目は小さな焼夷弾が約1000発入り爆発すると花火のように半径500mにも広がる三式焼霰弾。主に航空機に有効である。
三っ目は炸薬量が多く爆発の力で敵を破壊する榴弾。全般に使われる。
四つ目は新たに造られたもので今回使った100個の小型爆弾に分かれる散開弾。広範囲な地上攻撃や車両などに使われる。
今回は榴弾と散開弾を織り交ぜて使っていた。
砲撃ポイントはあらかじめ打合せ済みの場所である。
滑走路、港湾施設、格納庫群、司令部などを砲撃した。
石油施設だけは今後の為に標的からはずされていたのだ。
8隻合計で160発の砲弾をハワイに打ち込んだ。
龍砲達はまた高速で艦隊に戻って行った。
ハワイでは滑走路は使い物にならなくなり、駐機中の飛行機はほぼ全滅状態だった。
司令部の建物も半分が吹き飛んでしまった。
そこに攻撃より帰投して来たアメリカ機がハワイ上空にいた。
『なんて事だ!基地が燃えている。
滑走路も使えないぞ。』
『近くの艦隊に打電しろ。』
『こちらハワイ航空隊、基地が敵攻撃によりほぼ壊滅状態、
当機も着陸出来ず。救援求む!』
この無線を受けたのはロサンゼルスよりハワイに向かっていた空母任務部隊である。
エセックス級空母4隻からなる機動部隊をハルゼー提督が率いていた。
報告を受けたハルゼーは
『何っ!ハワイ基地が壊滅。どう言う事だ?
日本艦隊はミッドウェー沖にいるはずだろう。
別の艦隊がいたのか?』
『はい!少し前、北の海域に空母1隻の艦隊がいたと報告が届いております。
基地航空隊が向かい空母に被害を与えたそうです。』
『たった1隻の空母にハワイはやられたと言うのか?』
『報告によりますと空爆ではなく艦砲射撃によるものだそうです。
大和級の大型艦艇の砲弾だと言っております。』
『でその敵艦はどこに行ったのだ?
日本はまだそんなに艦隊を持っていたのか。
情報部は何をやってるんだ。』
『それがレーダーにも写らず、どこから来たのかもわからないそうです。』
ハルゼーは机を叩きつけ、
『ふざけるな!だったら早く索敵機を飛ばして探せ!』
『はっはい!了解しました。』
ハルゼーは切れやすく頭に血が登りやすい性格であったが恐れを知らず攻撃に向かうため、ブル〔雄牛、猛牛〕ハルゼーと異名を取っていた。
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その頃、ミッドウェー沖の主力部隊はの海戦と同じく空母は見つけられなかった。
さらに第一龍砲艦隊より2隻の空母を撃破、ハワイへの砲撃成功の報を聞き、ミッドウェーの攻略を優先したのである。
今回は爆撃より防衛のため護衛戦闘機を多数あげ、ミッドウェーから来る攻撃機に対し守りを固めつつ戦艦部隊を前進させて行った。
ミッドウェー島のアメリカ軍は大規模な日本艦隊が来るのが解っていたため最初から撤退を進めていたのだ。
艦船はすべての装備と人員を詰め込み沖に撤退し、航空機はすべてハワイに避退していた。
さらに撤退する前に滑走路や建物はすべて爆破し使えない状態にしていった。
索敵機の報告がその後入って来た。
『敵基地、すべて破壊され人影なし。撤退した模様!』
報告を聞いた山本長官は
『よし、一気にハワイに向かうぞ!』
『長官!上陸部隊がまだ間に合いませんが?』
『構わん!このまま第一龍砲艦隊と合流しハワイ沖にて敵艦隊を迎え撃つ。全艦に打電しろ!』
『了解しました。』
こうして第二次ミッドウェー海戦は起こらなかったのである。
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ハワイでは残った艦艇の集結を急いでいた。
規模を見てみると
空母1隻
戦艦2隻
巡洋艦2隻
駆逐艦5隻
その他小艦艇が多数
しかし、先ほど龍砲にやられた艦隊の救出作業にも艦艇を割かなければならず、今攻撃されると日本艦隊に負けるのが見えている。
さらに基地航空隊は使えない。
期待はハルゼー提督が率いている空母任務部隊の到着である。あと24時間あれば間に合いそうだ。
日本艦隊もハワイに急行して向かっている。
時間的に見て双方がぶつかるのは必至のようだ。