裕太の遊び!
過去にこんな物があったらと言う良くある話しを書いてみました。
特に第二次世界大戦の悲惨な日本が明るくなれば。
昭和初期
『みんな〜!浮いたで〜!
見てみぃ〜!』
『ほんまや!』
『すごいやん』
『なっ言うた通りやろ、絶対浮くって』
とある田舎町、
赤間裕太は中学の倉庫で、廃タイヤを床に置き。その中にカバーのない扇風機を下向きにいれ上手く固定した。
そして電源をつなぎスイッチを入れたのだ。
すると『ぶ〜〜〜〜ん!』とうなりを上げ改造扇風機は下に風を吹き付け見事に数センチ地上から浮き、バタバタと音を立てている。
『ほらな!風の力はすごいやろ!
これを大きくしたら乗れるかも知れんぞ。』
『いくらなんでもそれはないわ、重すぎるって!』
『あほ!やってみいひんとわからんがな。』
裕太と一緒にいるのは白木光一である。
光一は背は低いがかっちりとしててスポーツ万能であり裕太の同級生である。
一方、裕太は光一より背が高く身長175cmで同じくガッチリ体型で、見た目は光一よりスポーツができそうに見える。
だが彼は決まったルールが嫌いなためやっていない。
一生懸命やるものより好き勝手にやるのが好きなようだ。
そんな裕太はふだんから学校帰りにガラクタを見つけてはどんな遊びが出来るか考えていたのだ。
そんな初夏のある日、壊れた扇風機を見つけ分解していた。
なんとか治せないかと悪戦苦闘しているのである。
やっと回るようになったのだが、むき出しの羽とモーターだけの状態で動かしていたため回転速度がついて来ると羽根だけが吹っ飛んでしまった。
また壊してしまったようだ。
で今度はカバーの変わりにちょうど良い古タイヤを細工し、取付けて見ると今度は羽も飛び出さずうまくいったのだ。
改造扇風機の出来上がりである。
『ヤッホー、これでこの夏は安泰だ!』
『光一に見せてやろう。』
こんな調子でいつも機械いじりが好きで分解しては何かを作っていた。
夏が過ぎ秋になるとその改造扇風機も使わなくなったため他に何かに使えないかと考えていた。
思いついたのが改造扇風機を風の出る方向を下向きに寝かせ、その上に荷台を載せ固定した機械だ。
さっそく動かそうと家を飛び出し光一の家に寄ったのだ。
『光一!おもろいもん出来たから学校行くで〜!』
『これから買い物頼まれて行かなあかんねん…』
『そんなもん帰りでもええやん!アカネも誘って行こか!』
『しゃーないな〜…ほんと強引やし…』
光一と同級生のアカネも誘い、中学の倉庫に向かった。
『ここならえ〜やろ!広いし平らやし。』
『裕太〜!なんやねんこれ!』
『俺が作った、空飛ぶ機械や!』
『こんなもんで飛ぶんかい?
どう見てもガラクタの集まりや!』
光一はまったくバカにしたような口ぶりだったが仕方なく手伝っていた。
『よっしゃ〜!これでええ』『光一スイッチ入れてや!』
『はいはい!パチっと。』
[ぶ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!]
うなり始めた機械は数センチだが見事に浮いていた!
『お〜!ほんまやん。浮いとるわ。』
『アカネ どや?』
『すっご〜い!ゴミが浮いとるわ〜』
『ゴミ言うなや〜』
光一が倉庫の端にあった10kgぐらいの石を持って来た。
『これ載せてもいけるんちゃう?』
『おっ!大丈夫そうやん!まだ浮いとるわ。』
『アカネ〜!試しにそのまま押してみ〜』
アカネは改造扇風機を軽く押して見た。
『うん!わ〜!すごく軽く動くね、風って凄いわ。』
『やっぱこれ3っか4っ繋げたら人も乗れるで。』
裕太は自信が出てきたのか作って見たくなった!
『作ってみいひんか?』
『でも、そうそう扇風機なんてないやん…』
この時代では扇風機もかなり高価な物で簡単に手に入る物ではなかった。
貧乏な中学生に新品を買うお金などあるはずがない。
そうそう落ちてる訳もなく人の乗れる実験はあきらめざるを得なかったのだ。
その後3人は中学を卒業し、それぞれ進学せず就職をした。
裕太は町工場、光一は郵便配達員、アカネは食堂の手伝いとそれぞれ新たな道を歩む事になった。
ある日、光一が自転車で配達をしていると先の交差点で車が転倒していた。
『何かあったんですか?』
『米を運んでる3輪トラックがドブにハンドル取られてひっくり返ったんや!運転手はなんでもないんやけどな!』
近くにいたおじさんに聞いたらそんな答えが返ってきた。
まわりでは大人達が車を起こすのに必死になっていた。
しかしなかなか車は重く、起こすのは無理なようだった。
『こりゃ一度、荷台から荷物を全部出さな動かんで。』
『そやな、しゃーないわ!一個づつ出そか!』
『でも回りはぬかるんでて荷物出したら置かれへんで!商品にならんがな…』
そこで光一が
『あそこの食堂に運んで預かってもろたらええんとちゃいますか?
知ってる店やし!』
そう提案した。
『そやな!みんな〜!手伝ってもらえへんか?』
光一も手伝いに混ざり50mほど離れたアカネが働く食堂に米袋を運び始めた。
『あら!光一!どないしたん?』
『いやな、そこで車が横転して荷物出さな動かへんのや。ちょっとこの荷物預かってもらえへんか?』
『ええよ!裏の倉庫でよかったら使うてや。』
荷物は全部で50個もあった!
1個が30kgもあるから大変な思いで運んだのである。
そんな時、裕太が作った改造扇風機を思い出していた。あんなのがあればこんな時、楽だろうな〜!と思いながら荷物運びを手伝っていた。
1週間後、光一は裕太と一緒にアカネの食堂にご飯を食べに行った時である。
『裕太!この前なそこの交差点でトラックひっくり返って大変やったんやで〜。
重い荷物を何回もここの倉庫に運んだんやから。
そん時な!裕太のタイヤ改造扇風機思い出したんや、あれ実用化でけへんか?
あっアカネ〜!チャーハン一つな。』
『はいよ〜!』
『あほ!電気がそんな長く引っ張れへんやろ、コードが長いのは実用的やあらへん!
アカネ!俺は天ぷらそばに大盛りご飯たのむわ。』
『は〜い!』
『発電機を付けたらどや?
俺もそば追加して〜』
『俺もそれは考えたけど、そない重いもん乗っけたら今度は荷物が詰め無くなるやろ。
今んとこ他の方法がみつからんのや。』
『そっか〜…なんかもったいないな………』
『そんなことより光一!お前んとこの壊れたバイクもらえへんか?
親父さんに頼んでみてや。』
『あれか〜結構ひどいで!
親父もけっこういじってたさかい、ボロボロやで。それでもええんか?』
『あ〜!頼むわ〜!』
『一応聞いて見るけどな!親父けっこうケチくさいからな〜。』
『そこをうまく頼むわ。』
そこでアカネが食事を持って来た。
『は〜い!お待ちどう様〜、
漬けもんサービスしといたからね。』
『お!サンキュー!
いっただきま〜す。』
二人は会話もそこそこにご飯を駆け込み始めた。
その後数年はこの内容の会話はすることは無かった。