傷痕 作者: 籔田 枕 掲載日:2015/06/15 傷痕 足を病(や)み 辞めると誓い はや三年(みとせ) 腐(くた)れる如く 膿を生む爪 死になむと 遺書を認(したた)め凍えたる 宵闇の室(へや)の隅にほの見ゆ 遠き日に 何が成せるか 考えむ ――思ひ浮かばず 寒き手を見る 一寸(ちょっと)だけ 火傷したてふ 友の腕 ただれても猶(なほ) 笑うに愛し そこな翁 あはれ札束 握りしめ あはき夢追い どこ行くどこ行く 塩水の 飲めば飲むほど 乾けるを 人の欲 是(これ)違(たが)わざりけり 今度こそ 死なむと 刃 頸(くび)に宛てる 傷痕(きずあと)三筋(みすじ) 絶望に触(ふ)る