ラファンダムの一生
ラファンダムの一生
何も無い空間に、突然“存在”しはじめたラファンダム。
それには“心”があったが、“知識”がなかった。
胸がきゅっとなる。それが「さみしさ」とは知らない。
胸がもやもやする。それが「かなしみ」とは知らない。
ラファンダムはただ“ラファンダム”として存在するだけであった。
実験施設に、研究サンプルとして生み出された、パナマ。
全てと言って過言でない程の膨大な“知識”を与えられたが、それには“心”がなかった。
同じ人間として生まれたのに自分は自由に生きられず、研究サンプルとして一生を終えなければならない。おかしな話だと思ったが、パナマは気にしなかった。怒る心も、嘆く心も無かったのだ。
しばらくして、ラファンダムとパナマは出会った。
知識のないラファンダムと、心のないパナマ。
「この実験は、知識と心、どちらが人間にとってより大切なのかを調べるための対照実験です」
人々は興味を示し、二人のサンプルを観察する。そんな中で一人の少女がつぶやいた。
「二人とも同じ人間なのに。実験道具にするなんて酷い」
研究者は笑った。
「その考えは間違っていますよ。私たちの生活は数々の実験を経て成り立っている。その実験台はいつもマウスやモルモットです。それが今回は人間二人になっただけで酷いことなんて一つもありあせん。だってマウスや、モルモットも、人間と同じ生き物でしょう」
人々はそうだね、と頷いた。
少女は少し、首を傾げた。
視点の転換。
人の傲慢。
ラファンダムの心と、パナマの知識はそれに気付くことはなかった。
けれどパナマは知っている。
(あんな腐った人間でなくてよかった)
けれど人々は思う。
(自分が実験台でなくてよかった)
ちょこちょこと書いたネタなのですが、とつとつと文字が並ぶ方が作品の雰囲気にあっていて良いかな、と思い、次回予告のような短い文章にしました。本当は他にも書きたいことがあったのですが、それを表しきれない文才のなさに悔しさを感じた一作です…。