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ゆいまーる  作者: リア
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死体発見!?

始まったばかりの癖に、師走とはよく言ったもんだと思う。

久々に有り得ない位の忙しさの為残業し、真っ暗になった家路をただひたすら歩く。

明日は待ちに待った土曜日だ。週休二日万歳。

DVDも借りたしコンビニも寄ったし、大好きなちょっと高めのアイスも買った。ふふふ久々に夜更かしするぞ!と意気込んでいたというのに。

家の傍、小さな公園の前を通り掛かってぎょっとした。


「し…し、」


いや本当叫ばなかった自分を褒めたい。どうみても死体に見えるのだ、冗談抜きで。

もしそうなら通報しないと。ここは朝になったらお子様達も通る、トラウマになったらどうしてくれる。

ご遺体様には恐縮だがこんな所で死ぬなと思いつつ、必死に勇気を振り絞って近づくと。

ゆっくりだが、その胸が上下しているのが判った。


い、生きてる!

慌てて駆け寄り、肩を揺さぶる。


「ちょっと、しっかり!大丈夫!?」


全然反応がない。

何だかあちこちコートが擦り切れてボロボロだ。怪我もしているみたいで、鞄などを持っている様子もない。


ホームレス?

いや、まさか。だって若いし。

でももしそうだったらどうしよう。保険効かないよね。

今月ピンチだし、貯金はキャッシュコーナー閉まってるからおろせない。

警察に通報してお願いしちゃおうか。

でもこの間、酔っ払って路上に寝てる人がいたの通報した時2時間待った。

今、こんな状態で2時間放っておいたらこの人、死んじゃうかもしれない。


死ぬ。

目の前にいて、息をしているこの人が、死ぬ。

いやそれは駄目だろう、人として。


額に触れると目茶苦茶熱い。かなり熱が高い。

手足や肩、胸、腹などにさわる。顔をしかめるけど激しく痛がる様子はない。どうやら骨折はしていないようだし出血している様子も見られない。


「よし」


この位なら自分でも手当て出来そうだ。

もし何か異変が起きたらその時に救急車を呼ぼう。

こんなとこでボロボロになってるんだ、多分訳ありだろう。なら騒がれたくもないだろうし。


義を見てせざるは勇なきなり。

無謀な事をしているのは判っているが、そもそも今現在の手持ちが数千円しかない。お金払えないから仕方がないのだ。

公園から僅か数分のアパートにダッシュで帰る。今日ほど部屋が一階で良かったと思った事はない。

キッチンの床にごみ袋を敷き詰め、お風呂を沸かしてダッシュでまた公園に駆け戻る。


「おにーさん、ちょっとごめんねっ」


よいしょ、っと。

足を引きずるのはこの際勘弁して貰おう。

ずりずりと引きずり、汗だくになりながら冷え切った身体をキッチンの床に引いたビニールの上に寝かせ、靴と靴下を脱がせ、ボロボロになったコートを無理矢理剥ぎ取る。

良かった、コートの下はまともなスーツだ。

ジャケットを脱がせ、ネクタイを外し、ベルトを緩めてワイシャツやインナーも脱がせると、やっぱりあちこちに打ち身が出来ていた。

とりあえずお風呂から洗面器にお湯を汲んできて冷えた手足や上半身を拭いて、打ち身にエアーサロンパスを吹き掛け、手足の擦り傷も簡単に消毒して手当てしてやる。

さすがにスラックスまでは脱がせられないよ。あたし一応女だし。ごめんね、気持ち悪いかもしれないけど我慢して。


寝巻用のぶかぶかのTシャツを着せ、また足を引きずりつつひいた布団の上に寝かせて、

冷凍庫から氷枕と冷えピタを持ってきて、氷枕は頭の下に、冷えピタはおでこに貼ってやる。

後は解熱剤だけど、合わない薬があったら困るからなぁ。

でもせめて水ぐらいは飲ませないと。


「おにーさん、おにーさん」


何度か呼び掛けると、ようやく目を開けてくれた。


「お水飲めそう?喉渇いてない?」


かすかだがゆっくりと、首が縦に動く。


「ちょっと待ってね。」


冷蔵庫からポカリをとって、吸い飲みに入れて口に運んでやる。


「ゆっくりだよ」


言い聞かせながらゆっくり傾ける。

喉が何度かゆっくりと動き、吸い飲みが空になった。


「まだ飲めそう?出来たらもうちょっと飲んで欲しいんだけど」


またかすかに頷いてくれたので、何度か繰り返す。

これだけ飲めば脱水症状は大丈夫だろう。


「ここには、もうおにーさんを殴る人はいないよ。ゆっくり休んでね」


囁くと、少し顔を緩ませて。




ありがとう




唇がそう動き、瞳を閉じた。

おいおいまさか死んだんじゃと思ったけど、ちゃんと胸が動いている。

ま、とりあえずは大丈夫だろう。

何か異変があればすぐに動けるよう、ノートパソコンを傍に置き、それでDVDを見る事にした。

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