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第八章 愛の終わり

英二と明日香が駆け落ちをしてから3日たった。

二人は、小さな島に来ていた。

島民も少なくて、小学校と中学校が共同とか、信号が見当たらない。

そんな小さな島で自然を楽しむのもいいと思い来たのだ。

英二達はは知り合いもいない場所で、住む場所もないのでホテルを探していたが、こんな小さな島にあるはずがなかった。

悩んでいた所に、小さな赤ちゃんを連れたカップルが声をかけてくれたのだ。

名前は、大原さん。二人も去年に、駆け落ちをして、ここに来たみたいだ。

明日香と英二を見て、自分達と同じような感じがしたので親切にしてくれた。

大原さん達が住んでる家の二階を借りて明日香と英二は暮らした。

また、英二は大原さんの旦那さんの紹介で仕事も見つかった。

英二は、その日いつものように走って帰って来た。

「ただいま〜」

ドアを開けると、夕飯を作ってる明日香が立っていた。

「おかえり。早くお風呂に入って来て」

明日香は、笑顔で迎えた。

英二は嬉しかった。家に帰ると『おかえり』と言ってくれる人がいる。しかも自分の大切な人だ。

早くお風呂に入り、明日香に抱きついた。

「もう、危ないよ。」

英二は、かなり笑顔だ。バカ面って感じの笑顔だった。

「俺も手伝うよ。一人だったら大変じゃん。しかも、お腹に負担が来たらさ、ヤバいじゃん。」

明日香は、笑顔で

「前から、こんな優しかったらなぁ〜。」

二人は幸せだった。全てを捨てても、二人でいるなら、他に何もいらなかった。

明日香と英二が幸せに暮らしてる中、英二達の街では大変な事になっていた。

明日香の両親が捜索願いを出していたのだ。

警察も動き出した。慎太郎や淳と弥生にも回って来たが、三人は知らない。

弥生は心配だった。

そんな事も知らずに、英二と明日香は楽しく暮らしていた。夕飯を食べてると、コンコン

ドアを叩く音がした。

開けてみると、大原さんの奥さんの美加さんがいた。

「ごめんね。夕飯中に。お願いがあるんだけどさ…」

二人は、美加さんを中に招いた。

三人で座ると、すぐに美加さんは話した。

「明日さ、うちの子を預かってくれないかな?お腹の子が検診なんだけどさ、上の子がいると集中出来なくて。」

美加さんは二人目を妊娠していた。

今、8ヶ月に入ったみたいだ。かなりお腹も目立ってる。

二人は恩返しのつもりで了解した。

次の日、船で隣の島の病院に行くために美加さんは早くからでかけた。

もちろん、子供は明日香達が預かった。英二は、その日は仕事を休んだ。妊娠中の明日香には大変だと思ったからだ。

「サクラちゃ〜ん。プ〜さんだよ〜」

まだ、一歳になったばかりのサクラと明日香は楽しく遊んでいた。

英二は、その隣で…いじけていた。

「ちょっと〜、サクラちゃんが泣くからって、いじける事ないじゃん」

そう。英二がサクラにただ話かけただけでも泣くのだ。

「俺は怖いのか?」

明日香と楽しそうに笑うサクラを見て、切なさでいっぱいになった。

それを見ていた明日香は提案した。

「よし、お昼は三人で、お弁当持ってどっかに行こう」

いじけてる英二は、乗り気じゃなかった。でも渋々行った。三人は島の一番高い所にある公園に行った。

公園に行っても、明日香とサクラは二人だけで遊んでいた。英二はというと、そばにある大きい木の影で、ビールを飲んでいた。

「ちくしょう、また俺は一人かよ」

まだいじけてる英二。

すると、明日香のそばで砂遊びしていたサクラが手招きした。

英二は、ただ遊んでるだろうと思い、気にしなかった。

「英二〜一緒に遊ぼうだって〜」

英二は、途端に笑顔になった。

「よっしゃあ、遊びまくるか!」

三人は、子供のように遊んだ。

昼も過ぎ、弁当を食べてるとサクラが英二の膝に座って来た。

「サクラは甘えん坊だな」

鼻の下をのばしながらにやけてる英二。

「絶対に親バカになるね。」

明日香は、英二を見ながら独り言のように言った。


それから、二週間が過ぎた。

明日香と英二がいなくなって、もうすぐ1ヶ月が立とうとしていた。

「ねぇ、明日香達まだ連絡来ないのかな?」

弥生は、慎太郎や淳にグチのように言った。

相変わらず、明日香の両親は学校に来たり、警察は捜索して街にも知れ渡ってる。

明日香達はというと、貧乏だか幸せに暮らしていた。

お腹の子供も順調に育っていた。

ある日、ふと明日香はケータイの電源を入れた。久しぶりに弥生と話したかったからだ。

弥生には話そうと思い、ドキドキしながら電話をかけた。

すぐに、弥生は出た。

「もしもし?明日香?どこにいるの?」

「ごめんね。連絡遅くなって。今は小さな島にいるよ」

明日香は、久しぶりに聞いた親友の声に懐かしさを感じた。だが、同時に不安な事を聞いた。

「バカ!今それどころじゃないよ。明日香のお母さん倒れたのよ」

明日香は、体が震えた。

タイミングよく英二が仕事から帰って来て、事情を説明した。すぐに二人は、大原さん達に連絡して荷物を持ち帰った。


病院に着くと、病室の前に弥生と明日香の父親がいた。

明日香の父親は二人の姿を見ると、突然英二を殴った。

「お前のせいだ。あいつが倒れて」父親はにらみつけた。

「話も聞かずに殴らないでよ。」

明日香が間にはいったが、そのまま病室の中に連れられて行った。英二は何も言えないまま病院を後にした。

弥生と歩いてると、弥生は英二の前に立ってビンタした

「何で、連絡もくれないの?明日香のお母さんね、朝から夜遅くまで探していたのよ。それで、体壊して…人に迷惑かけるぐらいなら別れたら?」

英二は本当の事を言われて、言い返せなかった。

その夜、一人で考えていた。

(俺たちは間違っていたのか?これで幸せになれるのか?)そう思うと、自分たちがしてきた事が、みんなを不幸にしてるとおもってきた。

次の日、久しぶりに学校に行った。

そこでもまだ、悪い事は起きた。

明日香の父親が、学校に訴えて、明日香の高校と英二の高校は合同に臨時の集会が行われていた。

全校生徒の前で、英二の処分を校長先生が話した。集会には、明日香も父親も来ていた。

「え〜、皆さんも知ってると思うが、このたび我が高校の生徒が恥じる行為をした。我が先生達は、その事件を受け止め何が生徒のためにいいのか考えた結果、男子生徒を退学とし、女子生徒を一週間の停学とする」

生徒達は、ざわついた。中には、納得いかない生徒もいて会場は騒いだ。

「静かに!え〜今回の本人であり、また、我が校の生徒会長でもある鎌田英二君からお詫びの言葉をもらいたい。生徒の模範的な存在となる会長が、退学処分になるなんて…

一言、謝罪してください」

生徒や先生方、会場にいる全員が英二を見た。

英二は、何も言わずに舞台に上がった。しばらく黙り話した。

「俺は…みんなや周りの人に迷惑をかけました。初めは、二人の事だけを考えていた。迷惑をかけてるつもりもなかった。でも間違ってた。二人の気持ちだけでは生きていけないって気づいた。だから、この処分は当たり前だと思う。」

会場は静まり返って聞いていた。

「でも、俺は…後悔してない。これからも、俺は一人の人のために何でもする。初めてなんだ。ケンカや酒やタバコより好きな事を見つけたのは。初めて誰かを守りたいって思ったんだ。

明日香のためなら、俺はどんな罰でも受ける。これからもずっと…

俺は今なら素直に言える。

俺は…明日香を愛してます」

会場は再び騒ぎ出した。

すぐに、先生方出てきて、英二を外に連れ出した。

それを見た明日香も英二を追った。


たまり場に着き、二人は一言も喋らなかった。

突然、明日香は立ち上がり話した。

「ねぇ、覚えてる?ここで色んな事があったね。」明日香は、ソファーやテーブルをなでながら話した。

英二は下を向き、何かを考えていた。

明日香の動きが止まり、明日香は泣き崩れた。

「何でかな?私たち、そんな悪い事をしてるの?愛し合ったらダメなの?」英二は、明日香の後ろに立ち、強く拳を握りしめた。

「明日香、俺たちさ…人に迷惑かけてまでも一緒にいたかったのかな?」

英二の頭の中で、前に明日香の母親が言った言葉が蘇った。(明日香のためなら、別れて)

英二は、深呼吸すると、

「明日香…別れよう」

明日香は泣いた。

このままじゃ、一緒にいれないって知っていたけど、現実にはしたくなかった。英二は、そのまま後ろを向き、たまり場を出た。

「英二?英二〜」

いくら呼んでも、英二は黙ったままドアを閉めた。

明日香と英二は別れた。

お互いのためにも、周りのためにも…

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