第三章 気づかない気持ち
英二が好きになるのは誰なのか?祐介と明日香は?
英二達と弥生達が出会って、3ヶ月が過ぎた。
相変わらず、祐介と明日香は、ため息が出るほどバカップルだった。英二は、あきれて何も言えない様子だった。
「ねぇ、今度さみんなで遊びに行こうよ」
明日香が提案した。
「いいね。じゃあさ、隣町の遊園地に行こうよ。」
弥生も乗り気で言った。
英二は、聞かないフリをしていたが無理やりメンバーに入っていた。
「ごめん。俺は行けないや。どうせならWデートして来いよ。」
ケイは、明日香と祐介、またいいムードになった、英二と弥生に気遣い断った。
今度の日曜日、祐介と明日香、英二と弥生の四人で行く事になった。
遊園地に着くと、やはり親子連れやカップルだらけで、英二はつまらなさそうだった。
祐介達は、英二に気づかずに、はしゃぎまわった。
(どっか、目を盗んで行こう)
英二はそう思い、三人から離れた。
タバコを付け、出口に向かってると、目の前に明日香が現れた。
「何だよ!急に出てきやがって!」
「帰るの?せっかく来たのにさ。」
相変わらず、英二にとっては苦手なタイプだ。
「ガラじゃねぇからな!こんな所に来ても、おもしろくねぇよ」
英二は、明日香をどけて歩いた。
すると、急に手を掴まれて、
「じゃあ、楽しみ方を教えてあげるよ」
英二に何も言わさず、無理やり手を引っ張り出した!
「おい!祐介はいいのかよ?」
「平気。今頃、弥生とゲームで対決してるからさ」
そう言うと、英二の手を握りながら、色んな乗り物に案内した。
英二にとっては、迷惑そうだったが、だんだん慣れて来て、一緒に楽しむようになった。
二時間ぐらい二人だけで遊び、最後に観覧車に乗った。
「すごいね!祐介見えるかな?」
観覧車の外を見て、祐介を探す明日香。それを見た英二は、
「重症だな!好きになりすぎなんだよ」
と、冷たく言った。
「好きだよ。」
急に、明日香は真剣な顔になり言った。一瞬、英二は赤くなった。
「祐介の事。でも、不安な部分もあるの」
自分じゃなくて、祐介の事だったのか。英二は、静かに聞いた。
「最近さ、祐介、かまってくれないんだ。たまり場に行くと、いつもの祐介なんだけど、2人っきりになる事が全然なくて…もしかしたら…他に好きな子でも、いるのかな?って不安だよ。」
少し、涙目になりながら明日香は言った。
「バカバカしい!あいつに限って、んな事あるかよ」
しばらく、明日香は黙って、
「そうだよね。あるわけないよね?」
そう笑った。
観覧車を降りて、祐介達と合流して英二は、帰った。
その夜、部屋のベッドで英二は明日香の言葉を思い出していた。(よし!この優しい英二様がひと肌脱ぐか!)
次の日、英二は明日香に、祐介が待ってるからと近くの公園へ行くように言った。
祐介には、昨日の明日香の言葉を言って、公園へ行くように言った。
夕方になり、(今頃デートしてるかな?)と思いつつ、英二はたまり場へ行った。
たまり場には、ケイと慎太郎しかいなかった。
「祐介達は、デートか?」
知ってるくせに知らないフリをして聞いた。
「ううん。明日香は知らねぇけど、祐介は飲み会だって。」
英二は、驚いた。
「は?」
「いいよなぁ!祐介さ、この前知り合った子と飲み会なんてよ。まさか、あいつが二股とかな。」
英二は、耳を疑った。
時計を見ると、待ち合わせの時間から三時間たっていた。
雨も降り始めた。
急いで、祐介に電話してみると、
「もしも〜し、英二も来いよ!女の子沢山いるぞ」
酔ってテンションの高まった祐介が出た。
「てめぇ〜、待ち合わせはどうした?」
「ん?忘れてた。もういないんじゃねぇか?」
かなり酔ってんのか、本気で言ってんのか、わからない祐介に英二はムカついた。
「てめぇ〜、今度会ったら殺す」
そう言うと、電話を切り、傘を持ち雨の中を走った。
あまりにも、すごい形相だったので、慎太郎とケイは立ち尽くしていた!
その頃、明日香はまだ公園にいた。
トイレの前で雨宿りをしながら、震えていた。
バシャバシャと音がしたので、(もしかしたら…)と思い、振り向くと、祐介じゃなく以外に英二だった。
「英二君?どうしたの?」
息を切らしながら、英二は
「今、祐介から電話があって、今日来れないんだとよ」
英二は、明日香を傷つけないためにウソをついた。
「…やっぱりだね!いつも来れないんだ。まっいっか!」
一生懸命に笑ってる明日香を見て、英二はドキドキした。
「ったく…来れないならさ呼ぶなっつーの」
英二は、傘を明日香に渡しながら言った。
少し、明日香の肩が震えているのに気づいた。
その瞬間、明日香は英二にもたれるように泣き出した
「おい!大丈夫なのか?」
ただ泣きじゃくる明日香を見て、英二はしばらく黙って、そっと抱きしめた。
雨の音だけが、二人を包んだ。
しばらくすると、明日香は英二からゆっくり離れ、
「ごめんね。落ち着いた」
と言って、英二にピースをした。
そして、二人は沈黙のまま雨が止むのを待ち、それぞれの家に帰った。
英二は、シャワーを浴びながら、ついさっきの出来事を思い出していた。
初めてだ。英二は自分の中の何かが変わっていくことに気づき始めていた。
それから、3日たち、祐介が二股してる事がバレて明日香と祐介は別れた。
「ごめん。みんな。俺のせいだ。これからは俺がたまり場には来ないようにするよ」
そう言うと、祐介はたまり場を出て行こうとした。
「おい!」
祐介を呼ぶと英二は、思いっきり殴った。
突然の事で、その場にいた明日香達は驚いた。
「これ以上、傷つけたら、俺が許さねー。」
周りは、更に驚き黙った。
祐介は、黙りつつたまり場を出た。
「何で英二がきれているんだ?」
「さあ?」
慎太郎とケイは顔を見合わせた。
英二は、気づかない内に明日香を好きになっていた。
周りもまだ、その事に気づいてない様子だった。
それからと言うもの、たまり場には祐介以外はいつものメンバーが集まるようになった。
明日香も元気になり、祐介の事は忘れていた。
英二は、自分の気持ちに気づかずに毎日を過ごしていた。