表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閑さや 土手に染み入る 割れせんべえ  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/9

第5話

春の明け方は極寒だった。

さ、さぶいっ。運動がてらちょっと走るかぁ…。走っていると、やっぱりよしなしごとが頭に次々と浮かぶ。高校を卒業したらどうしようか、嫌でも考えてしまう。

大学、専門学校、就職…。小綺麗なニートだけは避けたい。


はあっ、土手沿いをランニングするつもりで走りだしたが、結局は土手にたどり着く前に体力が尽きてしまった。


力尽きて歩いても、考えることは変わらない。どうしよぉ。そういえば体、あったまってきたなぁ~、って、違う違う。考えないと。


そんな具合で、もう少しであそこにたどり着く。ああ、着くまでに何も考えられなかった。


あれ、いつもの所に人がいる。流石に美鈴は居ないと思っていたが。こんな早朝補導ギリギリ?の時間になぜ?

「美鈴?」

じゃない。

「あっ、すみません。…お邪魔、ですね。」

美鈴ではなかった。確かによく見たら全然違う、大人で、背も高くて、スーツを着ていて、おそらく革でできた鞄を持っている。出勤前のようだった。

自分は人の識別が苦手なのだ。やらかした。今までこの場所は誰も居ないからお気に入りだったのに、近ごろは人が多すぎる。場所、変えようかな…。いや、美鈴もモフモフもいるし、仕方がない。とか考えていると、返事をするのを忘れてしまう。

「あっ!大丈夫、大丈夫です!私こそお邪魔しました!」

「待ち合わせとかじゃなかった?」

「いえ。一人です。」

最近はよく人と話すから、うまく話せるようになった気がする。

「おひま?」

「まあ、暇です。」

「なら、少しお話していってくれない?」

嫌です!とは言えなかった…。

「あ、お願いします。」

「よかった。ちょうど話し相手が欲しかったところ。」

そこにモフモフがいるではないか。

「お名前は?」

「飯田です。」

「下のお名前は?」

「未来です。」

「未来。よろしく。」

なぜ人は揃いも揃って下の名前を知りたがるのか。

「未来ちゃんはなんでこんな時間にここに?」

「なんか目、覚めちゃったんで。」

「そっか。私も。でも未来は若くていいね。中学生?」

「いや、高校生です。」

失礼な。

「そっかそっか、ごめんね。花の女子高生じゃんか。」

「それに、若くたって良いことはない。」

「そうかな。可能性があって、自由で良いじゃない。」

「自分に可能性なんてない。」

「そんなことない。私よりもずっとある。」

今までよりも強い口調でそう言った。

「あなたも、だいぶ若く見えるけど。」

「若さって年齢じゃないの。」

自分から中学生?とか言ってきたくせに。

「だから、未来は若い。まだ捨てたもんじゃない。やりたいこと、考えなよ。」

「とは言っても…。やりたいこととか、無いし。」

「ある、絶対ある!」

急に熱血になってきた。そんなわけ…。

「まだ出会ってないだけだよ、きっと見つかる。未来なら。」

「自分は不登校で、毎日自宅でVTuberをみて、ゲームをして過ごしてます。」

「あちゃ。」

なかなかに失礼なやつだ。最近はそんな人としか会っていないから、べつに違和感はない。

「どうしよう。」

「勉強のほうは?」

「不登校ですよ、ろくにやって無い。」

「ちょっとくらい遊びに出でみたらいいんじゃない?バイトとかも。」

自分は家が好きなのだ。わざわざ騒々しいお外におでかけなんてこの場所くらいでいい。

「無理ですね。」

「じゃあ今度の土日、遊ぼうよ。…って、ダメだ。私が仕事だわ。」

土日休みではないのか。

「今日は仕事なんですか?」

「うん。…あ、もうすぐ行かなきゃだ。」

まだここに来てから30分も経っていない。自分はバイトすらしたことがないが、いくらなんでも4時代に出勤、土日も休みでないというのはだいぶブラックなのではないか?

「じゃまた。いつか遊ぼうね。」

そう言って、名前も知らない大人は去っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ