第138話 オルトの誓い
今日はちょっと諸々の都合上ちょっと短めです。
明日投稿できたら明日、できなかったら明後日。
色々お話の中にイベントとか用意してるんで、楽しみにしてておくんなまし…。
いつの間にか泣き疲れて眠ってしまったルーチェ。
オルトはそっとベッドサイドに座り、ルーチェの頬に残った涙の跡を優しく拭った。
──その時、コンコン、と小さなノックの音。
オルトは音を立てないようにそっと立ち上がり、扉へ向かう。
開けると、キールとテオが立っていた。
「オルト、ちょっと来れる?」
オルトは振り返り、ベッドに眠るルーチェを心配そうに見つめた。二人もその視線の意味を察したのだろう。テオが屈んで目線を合わせた。
「あー……ルーチェは、多分しばらく起きないと思う。疲れてたんだよ。だから、そっと寝かせてあげよう?」
「お父さんから、話は聞いた。僕たち、少し下でお話しない?」
二人の穏やかな声に、オルトは小さくうなずいた。
一階に降りると、ダグの姿はなかった。
「話すなら三人だけの方がいいだろうって……気を使ってくれたんだよ」
キールが静かにそう言った。
三人はリビングのL字ソファに腰を下ろした。
テオが口を開く。
「オルト。ルーチェってね、明るくて優しい子だけど……ほんとの気持ちを言えないタイプなんだ。だから、オルトの言葉に自分を重ねて泣いちゃったんだと思う」
「……僕のせい?」
ぽつりとつぶやいたオルトに、今度はキールが応える。
「違う。誰が悪いとかの話じゃないんだよ。オルトは知らないだろうけどね……ルーチェさんも、オルトと同じで、ずっと孤独だったんだ」
「……孤独」
「そう。お父さんもお母さんもいない。ひとりで街まで来て、冒険者になって、魔物と戦って──全部、自分でやってきたんだ」
オルトはその言葉を噛みしめるように、小さくつぶやいた。
「全部……ひとりで……」
テオが優しい声で続ける。
「でさ、そんなルーチェが、やっと誰かのことを“守りたい”って思えた。それが、オルトなんだよ。ここまで分かる?」
「……うん」
テオはまっすぐオルトの目を見た。
「じゃあ、聞くぞ──オルトは、これからもルーチェと一緒に居たい?」
その問いに、オルトは大きく何度もうなずいた。
「よし。じゃあ次な。今、ルーチェが何に悩んでるか、分かるか?」
少しの沈黙のあと、オルトが答える。
「……僕、足手まといだから、じゃないの……?」
首を横に振ったのは、キールだった。
「違うよ。ルーチェさんは、オルトに傷ついてほしくないんだ。冒険者っていうのは、魔物や悪い奴らと戦うこともある。そんな危険な世界に、大事な存在を連れていくのは……怖いんだよ」
テオが続ける。
「つまり、今のオルトは“守られる存在”ってこと。だから悩んでる。ルーチェだけじゃない、俺もキールもそう思ってる」
「……守られる……」
オルトはその言葉を反芻するように呟いた。
「もう一回聞くぞ? オルト、それでも──ルーチェと一緒にいたい?」
「……うん」
今度は迷いのない声だった。
「なら、オルトも変わらなきゃいけない。強くならないといけない。俺たちと一緒に、戦えるように」
キールが補足するように言った。
「依頼によっては、別れて行動することもある。誰かを守りながらじゃ、判断が鈍って──命に関わることもある。だからこそ、ルーチェさんを守るために、オルトが“一緒に戦える存在”になってほしい」
「ルーチェは……戦わせたくないって言うかもしれないけどな。でも、俺たちは──オルトに強くなってほしいと、本気で思ってる。……そうすれば、ルーチェがもう泣かなくてすむからな」
テオの声には、確かな想いがこもっていた。
「……うん、お姉ちゃんが笑ってた方が、嬉しい」
その言葉に、テオが微笑む。
「……なら、オルトはどうしたい?」
少しの沈黙。そして──
「僕は……」
その先を言おうとしたとき、キールが口を挟む。
「それを、オルトの言葉でルーチェさんに伝えてあげるんだ。……それが、いちばん大事なことだから」
オルトは、しっかりと二人の目を見て──力強くうなずいた。
二階からパタパタと足音が聞こえた。
テオが顔を上げて、ふっと笑う。
「お、やっと起きたな。うちの眠り姫は」
そして、階段を下りてきたルーチェがリビングに姿を現す。オルトの姿を見つけると、ルーチェは少しホッとしたように微笑んだ。
「おはよ、ルーチェ」
テオが軽く手を振る。
「……あの、どうしてお二人がここに?」
「ダグさんに頼まれたんですよ」
キールの言葉に続いて、テオが肩をすくめながら言う。
「“二人の様子を、代わりに見てやってくれ”ってさ」
その時、キールが静かに口を開いた。
「ルーチェさん」
「はい……?」
キールの視線が、隣にいるオルトへ向けられる。
ルーチェもそれに気づき、オルトへと目を向けた。
「──オルトの言葉を、聞いてあげてください」
ルーチェは一瞬不思議そうにしながらも、真剣な顔でオルトの前にしゃがみ込んだ。
オルトは小さく息を吸い込んで──言った。
「お姉ちゃん……あのね、僕……お姉ちゃんを守れるように、強くなりたい」
その言葉に、ルーチェの瞳がわずかに見開かれる。
「……ううん。強くなるから……だから……連れてって……! 一緒に行きたい……!」
オルトはぎゅっと目を閉じて、返事を待った。
まるで、すべてを賭けるように。
ルーチェは静かに──そして優しく、問いかけた。
「……いいの? ここに残らなくて」
その声は小さく揺れていた。
「……僕は、お姉ちゃんと一緒がいい!」
即答だった。迷いはなかった。
ルーチェの瞳が、ふわりと緩む。
「……そっか。分かった。じゃあ、一緒に行こうね───オルト」
その瞬間、オルトの顔がパッと明るくなる。そして勢いよくルーチェに抱きついた。オルトの耳はピンと立ち、尻尾が元気よくフリフリと揺れていた。
ルーチェは微笑みながら、オルトを優しく抱きしめ返した。
***
翌朝──
「そうですか……」
長老ザハドがゆっくりと目を伏せる。
「オルトも、共に行かれるのですね」
隣に立つエリエッタも、少し寂しげに微笑んだ。
「……本当にお世話になりました」
ルーチェは丁寧に頭を下げる。
その傍らで──オルトは、父ダグとぎゅっと抱き合っていた。
「オルト……ここはお前の……いや、お前たちの家だ」
ダグは少し言葉を選んで続けた。
「いつでも帰ってきていい。また、顔を見せてくれ」
その言葉に、オルトの尻尾が控えめに揺れる。
そして、しっかりと父の胸元を見上げて言った。
「……うん。ありがと──“お父さん”」
その一言に、ダグの目に静かに涙が浮かんだ。
何も言わず、ただオルトの背中をそっと撫でた。
それから、四人は馬車へと乗り込んだ。
積み込まれていた贈呈品の荷物の影で荷物番をしていたノクスが、再び静かに影へと戻っていく。
そして、ゆっくりと──車輪が回り始めた。
「ありがとうございましたー!」
馬車の後方席から、ルーチェが元気に手を振る。
隣でオルトも、小さく手を振り返す。
村の人々が、笑顔でそれに応えた。
長老ザハドも帽子を取り、ゆっくりと掲げる。
エリエッタは小さく涙を拭って、それでも最後まで手を振り続けていた。
村が遠ざかっていく中、静かな風が吹いた。
キールが前を見据え、口を開く。
「……行きましょう。王都グラーデンへ」
馬車の進む先には、また新たな出会いと事件が待っているのかもしれない。
それを見据えるように、全員が進む先を見つめていた。
メリークリスマス!!
ケーキ食ったか?チキン食ったか?
作者はチョコケーキ食ったぞ!
せっかくの夜なんだ、今日くらい誰かと過ごせよ!!
無理すんなよ!早く寝ろよ?
明日も頑張れるように!




