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絆ノ幻想譚  作者: 花明 メル
第三章 閉ざされた航路の果てへ
138/160

第138話 オルトの誓い

今日はちょっと諸々の都合上ちょっと短めです。

明日投稿できたら明日、できなかったら明後日。

色々お話の中にイベントとか用意してるんで、楽しみにしてておくんなまし…。



 いつの間にか泣き疲れて眠ってしまったルーチェ。

 

 オルトはそっとベッドサイドに座り、ルーチェの頬に残った涙の跡を優しく拭った。

 

──その時、コンコン、と小さなノックの音。

 

 オルトは音を立てないようにそっと立ち上がり、扉へ向かう。

 

 開けると、キールとテオが立っていた。

 

「オルト、ちょっと来れる?」

 

 オルトは振り返り、ベッドに眠るルーチェを心配そうに見つめた。二人もその視線の意味を察したのだろう。テオが屈んで目線を合わせた。

 

「あー……ルーチェは、多分しばらく起きないと思う。疲れてたんだよ。だから、そっと寝かせてあげよう?」

 

「お父さんから、話は聞いた。僕たち、少し下でお話しない?」

 

 二人の穏やかな声に、オルトは小さくうなずいた。



 

 

 一階に降りると、ダグの姿はなかった。

 

「話すなら三人だけの方がいいだろうって……気を使ってくれたんだよ」

 

 キールが静かにそう言った。

 三人はリビングのL字ソファに腰を下ろした。

 テオが口を開く。

 

「オルト。ルーチェってね、明るくて優しい子だけど……ほんとの気持ちを言えないタイプなんだ。だから、オルトの言葉に自分を重ねて泣いちゃったんだと思う」

 

「……僕のせい?」

 

 ぽつりとつぶやいたオルトに、今度はキールが応える。

 

「違う。誰が悪いとかの話じゃないんだよ。オルトは知らないだろうけどね……ルーチェさんも、オルトと同じで、ずっと孤独だったんだ」

 

「……孤独」

 

「そう。お父さんもお母さんもいない。ひとりで街まで来て、冒険者になって、魔物と戦って──全部、自分でやってきたんだ」

 

 オルトはその言葉を噛みしめるように、小さくつぶやいた。

 

「全部……ひとりで……」

 

 テオが優しい声で続ける。

 

「でさ、そんなルーチェが、やっと誰かのことを“守りたい”って思えた。それが、オルトなんだよ。ここまで分かる?」

 

「……うん」

 

 テオはまっすぐオルトの目を見た。

 

「じゃあ、聞くぞ──オルトは、これからもルーチェと一緒に居たい?」

 

 その問いに、オルトは大きく何度もうなずいた。

 

「よし。じゃあ次な。今、ルーチェが何に悩んでるか、分かるか?」

 

 少しの沈黙のあと、オルトが答える。

 

「……僕、足手まといだから、じゃないの……?」

 

 首を横に振ったのは、キールだった。

 

「違うよ。ルーチェさんは、オルトに傷ついてほしくないんだ。冒険者っていうのは、魔物や悪い奴らと戦うこともある。そんな危険な世界に、大事な存在を連れていくのは……怖いんだよ」

 

 テオが続ける。

 

「つまり、今のオルトは“守られる存在”ってこと。だから悩んでる。ルーチェだけじゃない、俺もキールもそう思ってる」

 

「……守られる……」

 

 オルトはその言葉を反芻するように呟いた。

 

「もう一回聞くぞ? オルト、それでも──ルーチェと一緒にいたい?」

 

「……うん」

 

 今度は迷いのない声だった。

 

「なら、オルトも変わらなきゃいけない。強くならないといけない。俺たちと一緒に、戦えるように」

 

 キールが補足するように言った。

 

「依頼によっては、別れて行動することもある。誰かを守りながらじゃ、判断が鈍って──命に関わることもある。だからこそ、ルーチェさんを守るために、オルトが“一緒に戦える存在”になってほしい」

 

「ルーチェは……戦わせたくないって言うかもしれないけどな。でも、俺たちは──オルトに強くなってほしいと、本気で思ってる。……そうすれば、ルーチェがもう泣かなくてすむからな」

 

 テオの声には、確かな想いがこもっていた。

 

「……うん、お姉ちゃんが笑ってた方が、嬉しい」

 

 その言葉に、テオが微笑む。

 

「……なら、オルトはどうしたい?」

 

 少しの沈黙。そして──

 

「僕は……」

 

 その先を言おうとしたとき、キールが口を挟む。

 

「それを、オルトの言葉でルーチェさんに伝えてあげるんだ。……それが、いちばん大事なことだから」

 

 オルトは、しっかりと二人の目を見て──力強くうなずいた。


 

 二階からパタパタと足音が聞こえた。

 

 テオが顔を上げて、ふっと笑う。

 

「お、やっと起きたな。うちの眠り姫は」

 

 そして、階段を下りてきたルーチェがリビングに姿を現す。オルトの姿を見つけると、ルーチェは少しホッとしたように微笑んだ。

 

「おはよ、ルーチェ」

 

 テオが軽く手を振る。

 

「……あの、どうしてお二人がここに?」

 

「ダグさんに頼まれたんですよ」

 

 キールの言葉に続いて、テオが肩をすくめながら言う。

 

「“二人の様子を、代わりに見てやってくれ”ってさ」

 

 その時、キールが静かに口を開いた。

 

「ルーチェさん」

 

「はい……?」

 

 キールの視線が、隣にいるオルトへ向けられる。

 ルーチェもそれに気づき、オルトへと目を向けた。

 

「──オルトの言葉を、聞いてあげてください」

 

 ルーチェは一瞬不思議そうにしながらも、真剣な顔でオルトの前にしゃがみ込んだ。

 

 オルトは小さく息を吸い込んで──言った。

 

「お姉ちゃん……あのね、僕……お姉ちゃんを守れるように、強くなりたい」

 

 その言葉に、ルーチェの瞳がわずかに見開かれる。

 

「……ううん。強くなるから……だから……連れてって……! 一緒に行きたい……!」

 

 オルトはぎゅっと目を閉じて、返事を待った。

 まるで、すべてを賭けるように。

 

 ルーチェは静かに──そして優しく、問いかけた。

 

「……いいの? ここに残らなくて」

 

 その声は小さく揺れていた。

 

「……僕は、お姉ちゃんと一緒がいい!」

 

 即答だった。迷いはなかった。

 ルーチェの瞳が、ふわりと緩む。

 

「……そっか。分かった。じゃあ、一緒に行こうね───オルト」

 

 その瞬間、オルトの顔がパッと明るくなる。そして勢いよくルーチェに抱きついた。オルトの耳はピンと立ち、尻尾が元気よくフリフリと揺れていた。

 

 ルーチェは微笑みながら、オルトを優しく抱きしめ返した。



 

***


 

 

 翌朝──

 

「そうですか……」

 

 長老ザハドがゆっくりと目を伏せる。

 

「オルトも、共に行かれるのですね」

 

 隣に立つエリエッタも、少し寂しげに微笑んだ。

 

「……本当にお世話になりました」

 

 ルーチェは丁寧に頭を下げる。

 

 その傍らで──オルトは、父ダグとぎゅっと抱き合っていた。

 

「オルト……ここはお前の……いや、お前たちの家だ」

 

 ダグは少し言葉を選んで続けた。

 

「いつでも帰ってきていい。また、顔を見せてくれ」

 

 その言葉に、オルトの尻尾が控えめに揺れる。

 そして、しっかりと父の胸元を見上げて言った。

 

「……うん。ありがと──“お父さん”」

 

 その一言に、ダグの目に静かに涙が浮かんだ。

 何も言わず、ただオルトの背中をそっと撫でた。



  

 それから、四人は馬車へと乗り込んだ。

 積み込まれていた贈呈品の荷物の影で荷物番をしていたノクスが、再び静かに影へと戻っていく。

 

 そして、ゆっくりと──車輪が回り始めた。

 

「ありがとうございましたー!」

 

 馬車の後方席から、ルーチェが元気に手を振る。

 隣でオルトも、小さく手を振り返す。

 

 村の人々が、笑顔でそれに応えた。

 

 長老ザハドも帽子を取り、ゆっくりと掲げる。

 エリエッタは小さく涙を拭って、それでも最後まで手を振り続けていた。

 

 村が遠ざかっていく中、静かな風が吹いた。

 キールが前を見据え、口を開く。

 

「……行きましょう。王都グラーデンへ」

 

 馬車の進む先には、また新たな出会いと事件が待っているのかもしれない。


 それを見据えるように、全員が進む先を見つめていた。


 

メリークリスマス!!

ケーキ食ったか?チキン食ったか?

作者はチョコケーキ食ったぞ!

せっかくの夜なんだ、今日くらい誰かと過ごせよ!!

無理すんなよ!早く寝ろよ?

明日も頑張れるように!

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