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絆ノ幻想譚  作者: 花明 メル
第二章 広がる世界、潜む闇
119/156

第119話 リヒトとレオ

遅くなりました&修正しました!

ほんとすみません!



 馬車に揺られて数日。


「ルーチェさんや、聞いていいかい?」


 冗談っぽく話しかけたのは、馬車の中でだるそうに横になっていたテオだ。


「どうしたんですか? 変な話し方して……」


 ルーチェは、ぷるるとアミティエの転がり遊びを観察するのをやめて、テオの方を見た。


「いやさ、ずっと思ってたんだけど……ルーチェって《絆の光(コネクション)》の光属性と、ノクスの影属性の魔法を使うところは見るけどさ、他の属性はほとんど使わないよね? 何で?」


 テオの問いに対して、ルーチェは少し考えた。


「そうですね、理由があるとするなら……慣れてないから、でしょうか?」


「「慣れてないから?」」


 ルーチェの回答に、キールとテオの声が重なる。

 ルーチェの隣に座るオルトの耳もピクリと動く。


「……その、なんというか、使おうと思えばもちろん使えるんです。ぷるるの水魔法とか、シアの風魔法とか、使ってるところ見たことありますし、キールさんやテオさんというお手本もいますから、使えないことは無いんですけど……」


『でもあるじ、たまにおみずもつかうー。おみずびゅーって』


 ぷるるがぷにょぷにょと体を揺らしながら言う。

 

「まあ確かに、野営の準備の時とか、そういう日常の時は水魔法使うけどね」


 ルーチェはぷるるの言葉に同意するように、ぷるるを見ながら言った。


「けど、戦闘となると、結局使い慣れた光魔法に落ち着いちゃうんですよね」


 ルーチェがキールとテオを見てそう言うと、オルトが控えめに手を伸ばし、ルーチェの袖を引っ張った。


「お姉ちゃん……その、この子は?」


 オルトはアミティエを指さした。


「アミティエ?」


「うん。アミティエは……どんな魔法使うの?」


 ルーチェはちょっと気まずそうに唸った。


「うーん……実はね、アミティエはまだ魔法が使えないんだ。幼虫の個体だからね。実はどんなこと考えてるかも私には分からなくて」


「え、そうなの? じゃあいっつもどうやってコミュニケーション取ってるわけ?」


 ルーチェはぷるるとアミティエに視線を向ける。


「いつもは、ぷるるにアミティエの気持ちを訳してもらったり……」


(あとはリヒトに訳してもらったりとか、だね)


 ルーチェが心の中でそう呟くと、リヒトの声が響く。


『お嬢様。実は私にも、アミティエ様の意思は分かり兼ねるのです』


(え、そうなの!?)


 ルーチェは心の中で驚きの声を発した。


『実は私も、ぷるる様を通じて、アミティエ様の意思をお嬢様にお伝えしておりました』


(そうだったんだ……意外……)


『理由としましては、アミティエ様の存在と言いますか、心の声が“小さすぎる”というのが要因かと思われます』


「小さすぎる……?」


 リヒトの言葉に、ルーチェは思わず呟いた。


「何が小さすぎるって?」


「えっと、アミティエの心の声……というか意思がとても弱くて、私では感じ取れないみたいで」


「なるほど、弱い魔物、そして幼体であるが故……ということなのでしょうか? 意思がとても微弱なのかもしれませんね」


 キールが腕組みして考えるように言った。


「へぇ、ならそんなアミティエとコミュニケーション取れてるぷるるは凄いってことだね」


 テオがぷるるのスライムボディを優しく撫でる。


『えへへー、あるじー、ほめられたー!』


 ぷるるは跳ねるように震えることで喜びを表した。


「ふふ、嬉しいね、ぷるる」


 ルーチェも嬉しそうに微笑んだ。


「そういえばルーチェさん。私も一つ聞きたいことがあるのですが……」


 キールがルーチェを見つめながら言った。


「はい、何でしょうか?」


「ルーチェさんは、一度に2、3体くらいしか契約魔物たちを出しませんよね。それには何か理由が?」


「あ、それですか……。出さない……じゃなくて、今のところ3体までしか出せないんですよね」


「それは能力や魔力的な制限ということですか?」


「はい、何回か試したんですけど、3体が今の私の限界で……」


 ルーチェがそこまで言うと、テオが思い出したかのように起き上がる。


「あ、そういえばさ、あの精霊獣と仮とはいえ契約して、何か変化とかあったりするの?」


「んー……今のところは特に。魔力量の容量が増えた感じと、光魔法の力というか、うーん、なんというか、出力する量が……増えた? 大きくなった? そんな感じがします」


「いや、十分変化あるじゃんか……」


 呆れたようにテオが言った。


「あはは、でも負担とかはないですよ! とっても元気です!」


 ルーチェはニコニコと微笑んだ。


「そ? ならいいけど、無理はしたらダメだよ?」


 テオが優しくそう言った。


「ルーチェさん、くれぐれもご無理なさらずに。何かあれば我々に相談してくださいね」


 キールも心配そうに言った。


「はい!」




***




 《魂の休息地(ソウルルーム)》内部。


 部屋のような空間。そこに唯一置かれた椅子に座っていたリヒトは、立ち上がるとシアの元へ向かった。


「シア様。申し訳ございませんが、しばしの間、私の代わりに、あちらの席に居ていただいても?」


 リヒトがそう言うと、シアは立ち上がる。


「世話が焼けるわね。いいわよ」


 シアはルンルンとしっぽを揺らしながら、椅子の方へと向かった。


 リヒトはその様子を一瞥した後、部屋の端にどっしりと座っている精霊獣レオの元へと向かった。


「レオ様。体調の方はいかがでございますか?」


 レオは片目を開けてリヒトを見る。


「……問題ない。我は精霊獣だ。囚われていた時の傷など、とっくに癒えている」


「それは何よりでございます」


 リヒトは丁寧に礼をした。


「それよりも……だ。リヒトと言ったな?」


「はい。ルーチェお嬢様の忠実なる下僕であり、執事のリヒトにございます」


「……貴様も我と同様の……いや、我とはまた違った異質さを持っているな。神によって直接創られた……精霊リヒトよ」


「異質……ですか。確かに、この世界においては異端であると、自覚しております」


「……大切な主に、言ってやらなくて良いのか?」


「……何を、でしょうか?」


 リヒトは穏やかな顔のまま問いかける。


「フン……この世界において、本来であれば……人一人につき、精霊一体と契約するのが常識。それは契約者本人の裁量に関わらず、肉体的・精神的な負担が大きい故、そのように定められている」


 リヒトは僅かに息を吐いた。


「あの娘は現在、我とは仮契約とはいえ、事実上2体の精霊と契約していることになる」


「なるほど、だから仮契約を?」


「フン……なんの事だ?」


 レオは顔を背けた。


「レオ様はその事実を見抜いていたからこそ、お嬢様の身を案じて、仮契約という形にしたのでは?」


「知らんな。我はただ友になりたい、帰してやりたいなどと夢見がちなことを言う娘を見極める為に、敢えて仮契約としたのだ。……おかしなことを言うな」


 レオはリヒトを睨んだ。


「……そうでしたか。それは失礼いたしました。失言をお詫びいたします」


「フン……食えぬ男だ」


 レオは呆れたように鼻を鳴らすと、伏せて眠りにつく。


「……おやすみなさいませ、レオ様」


 リヒトはそう言うと、椅子の方へと戻っていった。



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