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第7話 お喋り機動戦闘機

 僕の、機動戦闘機の操縦技術というのは、歩いたり走ったりジャンプしたりができる程度。

 つまりは完全な初心者というやつだ。

 まぁ、ある程度の操縦方法というのは座学で教わってはいるが、知っているのと出来るのとでは雲泥の差がある。


 それなのに、今日からはチームメイトに混じって一緒に訓練しろ、とか言われてしまっている。


 前回の動きは、自称アザレーの指示に従ったからできたわけで、僕自身の実力ではないのだが、信じてもらえないのはとても残念な事である。

 何で正直に話したのにメルヘン趣味とか言われないとならないのだろう?


 機動戦闘機は喋ったりしない?

 アーネスト教官は、いったい何を言っていたのだろう?



【え~!またアザレー混じるの?】


【何よアンタ達。何か文句あるの?】


【だってアザレーってリーダーぶるじゃん。変な動きしかできないくせに】


【それは私を操縦するヤツが下手くそってだけでしょ!性能的に見れば、アンタ等よりも上なんだからね!】


【はいはい、性能厨乙。その性能を実践で発揮できないなら意味ないじゃん】


【そうそう。私達やレーヴァン達の方が汎用性高いと思うよ】


【量産化見送られた試作機なのに偉そうだよアザレー】


【それって私にケンカ売ってんの?アッカーシャハテ03。模擬戦になったら、アンタを真っ先に落としてやるわよ】


【いつもそう言って真っ先に撃墜されるのアザレーじゃん】


【だから操縦者が下手くそなのよ!!】



 うん。喋ってるよねコレ。ってか滅茶苦茶ケンカしてない?

 いちおう、さっきからアーネスト教官が、今日の訓練について説明してるんだけど、機動戦闘機達のケンカが気になって、全然頭に入ってこないんだけど、どうしたらいいですか?


 っていうか、何で誰も、このケンカを止めないの?

 操縦者が乗ってないから動かないけど、人間だったら確実に手が出るレベルのケンカじゃない?

 それとも、コレっていつも通りの出来事なの?日常になるほどケンカしてるから、もうガン無視決め込んでるの?

 じゃあ、せめて僕にも教えといてよ!?「勝手にケンカ始めるけど、いつもの事だから無視していいよ」とかさ!?

 僕が乗る機体が中心になってるケンカだから、余計に気になっちゃってしょうがないんだけど!?


「あの……アーネスト教官。さっきから機動戦闘機達の口喧嘩がうるさくて、教官の話が聞き取りにくいんですけど……」


 控えめに挙手をして、不満を口にする。

 皆は慣れているから気にならないのかもしれないが、僕は機動戦闘機達の口喧嘩を聞いたのは初めてなのだ。

 少しは考慮してもらいたい。


「ユウキ……お前なぁ……また『アザレーが喋った』とか言い出すのか?お前の趣味にケチをつけるつもりはないが、今は訓練内容の説明中だ。そっちに集中してくれ」


「いや!喋ってるじゃないですか!!アザレーだけじゃなくて、そっちのアッカーシャハテ?とか言われてる機体とかレーヴァン?とかいう機体も!」


 アーネスト教官の言葉聞いて、即反論する。

 機動戦闘機は喋らない、とか言われたけど、現に今喋っている。絶対に皆聞こえているはずだ!あんなに大音量で喋っているんだ!聞こえなかったなんてあるわけがない!


「まぁなんだ……まだ教えてもいない機体名を知っている事に関してツッコミを入れたいところだが、少し落ち着けユウキ。今、この格納庫内は俺の声以外は何の音もしてないぞ」


 アーネスト教官は何を言ってるんだろう?

 誰が聞いても機動戦闘機達は喋ってるじゃないか?何であんなに騒がしい言い合いを、聞こえないフリして無視するんだ?


「おいおいユウキ。お前、ゲロ吐きすぎて頭おかしくなったか?」

【ちょっと!あの人間、何で私達の言葉理解してるの!?】


 マイクが僕を馬鹿にする言葉をはいたのと、ほぼ同時にレーヴァンという機体が、僕という人間を認知する。


「バカか?機動戦闘機が言葉を話すわけないだろ?」

【っていうか、何で私達と同じ言語を喋ってるのよ!?】

「ユウキ……スマンが、どんなに耳を傾けてみても機動戦闘機の声は私には聞こえない」

【どうよ!新しく来た、私の操縦者は!凄いでしょ!!】

「そもそも機械が喋るわけねぇんだから、聞こえないのは当然だろうがアンディ!」

【凄いっていうか、有り得ないでしょ!?喋れる人間なんているわけないでしょ!?】

「まだ調子が悪いなら無理しなくていい。医務室に行くかユウキ?」

【じゃあ何なのよ!?あの人間いったい何なのよ!?】


 ヤバイ……倍うるさくなった。


 とりあえず落ち着こう。

 落ち着いて考えよう。


 機動戦闘機達も含めた全員が言った事を客観的にまとめてみると……



 もしかして、機動戦闘機の声が聞こえるのって僕だけ?

 ついでに言うと、機動戦闘機に声を届かせる事ができるのも僕だけなのかな?


 何で?どういう事?何で僕だけなの?

 え?ひょっとして、コレが異世界転移の特典?


 まぁそうだね。機械と会話できるとか、現実的にはありえない能力だから、チート能力って事でいいとは思う。思うんだけど……

 ちょっと微妙な能力じゃない!?


 いや……無いよりはマシだから、もらえる能力はもらっておくよ。

 でも、どうせならもっと、こう……無敵になるような、皆から羨望の眼差しで見られるような、そういう能力が欲しかったな。


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