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番外編4

 慌ただしくなった基地の格納庫の片隅。

 自機のコックピット内で、アーネストは一人冷静にモニターを見ていた。

 こうなる事は、あらかじめ予想する事ができていた。



 ————近いうちに奴等は次のフェイズに移行するだろう。そうなった時はアーネスト、君の力も借りたい。君が現役時代に使っていた機体は私が手配しておく。いつでも対処できるようにしておいてほしい。



 同期である基地司令から数日前に聞かされていた言葉だ。

 だからこそ、この宇宙基地にも無理言って愛機を置かせてもらっていた。


 機体名『ホルテンズィエ・カスタム』

 従来機よりも、より多くの武装を積み、かつ運動性能も落とさないようにする。というコンセプトで開発された『ホルテンズィエ』をアーネストが使いやすいようにカスタマイズした機体である。


 この宇宙基地に多く配備されている最新鋭の量産機よりは若干性能的には落ちるかもしれないが、訓練生達が使っている機体よりかは、はるかに良い性能をしていた。


 しかしアーネストは、機体性能よりも自らの操縦技術に重きを置いていた。

 実際、機体性能にかまけて……いや、高性能なのを自らの実力だと勘違いしている、この宇宙基地にいる現役兵など、束になってかかってきても簡単に倒せるとさえ思っていた。


 そう、年齢のせいか全盛期ほどの力は無いが、それでもまだ誰にも負けないという自負があった。


 それなのに……


「なんだ……この体たらくは……」


 訓練生は全滅。奇跡的に生き残ったのは1名のみ。

 訓練生含めた宇宙基地全体で言えば、戦死者81名。


「敵の新型機……『奴等は次のフェイズに移行する』……か。また『未来視』だな。アイツはどこまで予想していたんだ?」


 警戒するように言われていたので準備を怠ったつもりはない。

 教え子でもある訓練生達を誰一人として死なせるつもりはなかった。

 だからこそアーネストは、訓練生が配置された空域へは先行して向かっていた。


「あんな奴までいるなんて誰が予想できるってんだクソッ!」


 先行していたアーネストの前に現れたのは数機の新型機。

 大きさ的には、今までの敵機と同じくらいのヤツが5機。

 そして……1機だけ大きさもデザインも全然違う機体がいた。

 サイズは小さく、動きが素早く、そして……レーダーに映らないステルス性能を持った機体だった。


 素早い上にレーダーに映らないのは非常に厄介だった。

 一度でも見失ってしまうと致命的だ。レーダーが反応してくれないので自らの目で探さなくてはならなくなる。


 アーネストが必死に、その小型機を抑えている間に、他にいた5機の敵機はアーネストを素通りしていった。


 結果として、その5機によって、訓練生達がほぼ全滅させられてしまい、その事実がアーネストを余計に苛立たせていた。


 記録を見ると、その5機の内3機を、ユウキ訓練生1人で撃墜しており、長く彼を見てきたアーネストは、改めてユウキ訓練生の非凡な才能を確認していた。


 しかし、そんなユウキ訓練生も、アーネストのミスで撃墜されてしまったのだ。


 一瞬……ほんの一瞬、敵のステルス機を見失ってしまったのだ。


 敵機同士でデータリンクでもしているのだろうか?そのせいでユウキ訓練生を脅威と感じたのかはわからないが、アーネストが見失った一瞬の隙をついて、ステルス機はユウキ訓練生を狙いに行ったのだ。


 アーネストが気付いて駆け付けた時には、ユウキ機が撃墜されるその瞬間だった。


 不幸中の幸いだったのは、ユウキ機を攻撃している隙をついて、ステルス機を撃墜できた事だろうか。


 そしてもう1つの幸いは、ユウキ訓練生はタイミング良く脱出しており、無事回収でき、訓練生全員が死亡する、という悲惨な事態をギリギリ回避する事ができた。


 ユウキ訓練生以外にも、脱出を試みた連中もいたようだったが、まだ敵が残存する時期だったためか、脱出ブロックを攻撃され死亡していた。


 唯一救出できた、そのユウキ訓練生も精神的に酷い事にはなっており、ずっと「アザレーはどうなった?アザレーは直るのか?アザレーを直してほしい!アザレーを……」と自らの愛機の名を永遠と言い続けていた。


 修復不可能なほど大破した世代遅れ機を直す……というよりも、ほぼ作り変えだ。そんな機体を作り変えるような事はしない。

 もちろん機動戦闘機は無料(タダ)で作れるわけではない。軍が使える予算は決まっているなかで、金額がほぼ同じなら、旧型機なんて作らずに新型機を作る。


 しかしそんな事を、今の混乱したユウキ訓練生に正直に言うわけにもいかず、適当にお茶を濁す発言をしておいた。


 戦闘で死にかけ、精神的に混乱した経験は、アーネストも若い頃にあった。

 こればっかりは慣れるしかないが、今のユウキ訓練生の気持ちは痛いほどよくわかるつもりだった。

 精神的にまいっている状態で、自分が欲しい言葉と真逆な事を聞かされたりしたら、本当に立ち直れないくらいのダメージを受ける。

 だからと言って、その場だけでの嘘というのは、それが嘘だったとわかった時に、かなりきついダメージを受ける。


 正直、自分がとった受け答えが正しい対応だったかどうかはアーネストにはわからない。

 後はユウキ訓練生次第ではあった。


「無事……立ち直ってくれよ……」


 アーネストは、自らの想いを口に出してつぶやくのだった。


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