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第18話 緊急脱出

【痛いっ!!何も見えない!?……痛いぃぃ!!】


 アザレーの悲痛な声がコックピット内に響く。

 この叫びだけで、機体が受けたダメージが結構深刻な事が理解できる。


「アザレー大丈夫!?……残った1機は倒せたの!?さっきの攻撃はどこから来たの!?」


【わかんない!?わかんないよ……斬った手応えはあったような気はするけど、攻撃は気が付いたらすぐ近くにビームがあって……】


 今モニターに映っているのがアザレーの視界だとすると、ほぼ何も見えてない状態だ。そんなアザレーを質問攻めするのは酷なのかもしれない。


 ただ、今のこの状況では情報は重要だ。

 僕とアザレーの生存率に直結する。


 最後の1機に向かって、袈裟斬りしたのはわかっている。

 僕等が受けた攻撃は、その最後の1機からの相打ちの一撃だったのか?それとも、僕の攻撃は致命傷にはなっておらずに、まだ僕等を攻撃しようとしているのか?

 はたまた、4機目が出現して攻撃してきたのか?

 その場合は、3機目がまだ生存しているのか倒せているのかでも色々と変わってくる。


 とりあえず、現状わかっている事はたった一つ。

 このまま棒立ちしているのはマズい。


 何でもいい!モニターが死んでて外の状況がわからないけど、アザレーを滅茶苦茶に動かす。

 目的も何も無くランダムで動いていれば、攻撃を当てるのも苦労するはずだ!


 僕はペダルを適当に踏み込んだり、レバーをガチャガチャしたりと必死に動かす。


 そして、再び機体に衝撃がはしる。


【いやあぁぁぁ!!痛いっ!!痛いぃぃ!!】


 アザレーの悲痛な叫び声が再び響く。

 いる!最低でも1機は、まだ敵機は近くにいる!!


 マズい!こんな状態じゃ何もできない。

 武装……武装は……長刀だけ?

 まったく何も見えない状態で接近戦?バカじゃないか!?


 逃げる?どこに?レーダーもいかれてるしモニターも死んでる。自分がどっちを向いてるかもわからないのに、どっちに向かって逃げろって言うんだ!?


 ……死ぬ?

 ヤバい!!本気で!?……え?嘘でしょ?このままじゃ本当に死ぬんじゃ……


 急に手足に重りが付いたように重くなるような気がした。

 震えが止まらないし、冷や汗も止まらない。

 歯がガチガチ言ってるのがわかる。


 怖い!怖い怖い!やだ!死にたくない!!まだ死にたくない!!


【痛い……助けて、助けてジュン……身体中が痛いの…………ジュン……】


 何言ってんだアザレー……助けて欲しいのは僕だよ!

 僕の事守ってくれるんじゃなかったのかよ!!


 必死にランダムで動くように滅茶苦茶な操縦を繰り返す。


 しかし、再び機体に衝撃がはしる。


【いやあぁぁぁ!!痛い!!もう嫌!!痛いぃぃ!助けてジュン!!】


 駄目だ!本気でもうダメだ!!死ぬ!このままじゃ僕もアザレーも死んでしまう!!

 視界がぼやける。涙が止まらない。

 嫌だ……死にたくない……死にたくない!


 ん?待って?『僕もアザレーも』?

 違う!アザレーは機械だ。壊れても直す事ができる。

 つまり死ぬのは、生身の人間である僕だけだ。


【ジュン……助けてよ……ジュン……】


 そう思うと、聞こえてくるアザレーの声にイラ立ちすら覚えた。


 何を痛がって同情を引こうとしているんだ?今痛いって言っても、直せばそれで万事解決じゃないか?命に替えのきかない僕とは全然違う。だったら……


 僕は椅子の下にある、緊急脱出用レバーに手をかける。


 機体から脱出したとしても、生存できるとは限らない。

 でも、このままココに残り続けていれば、確実に死んでしまうだろう。


 機動戦闘機のコックピット部分は、換装可能な1ブロックとなっており、緊急脱出するとその部分が機体から強制的に分離され、外に射出される。

 大気圏内外共用なので、宇宙空間でも射出された後にパラシュートが開くが、特に今は意味がないだろうが、その後は常に自動で救難信号を発信し続ける。


 その状態で、敵に攻撃されたり、コックピット内の空気が切れたりしたら、どっちにしろ死んでしまうが、それまでに発見救助されれば僕の勝ちだ。生き残る事ができる。


 このままココに残ってアザレーと心中……いや、死ぬのは僕だけか。ともかく、ココに残り続けるよりは、格段に生存率が上昇する。


【ジュン……ジュン?】


 まだ何かを言い続けるアザレーを無視し、僕は緊急脱出レバーを思いっきり引く。

 正面から、何かが外れる音が聞こえた。おそらく、コックピットブロックが射出されるためには邪魔になるコックピットハッチが外れた音だろう。

 そのすぐ後で、凄まじいGが体にかかる。

 どうやら無事緊急脱出装置は作動したのだろう……


【……ジュン…………】


 最後に、悲痛そうなアザレーの声が聞こえたような気がした。


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