第16話 起死回生
さて、アザレーとの会話で、少しだけ気分が楽になったとはいえ、現状かなりピンチな事には変わりない。
「どうするべきかなアザレー……戦う?逃げる?それとも敵の攻撃を避け続ける?」
僕がいくら考えたところで答えは出ない。結局のところアザレー頼りになるので、最初っからアザレーに全てを委ねた方が良い。
【囲まれてるから逃げるのは難しいと思うわよ。敵の攻撃を避け続けるってのも現実的じゃないわね……いつまで避け続ければいいのか明確な時間が出ないと、精神的にキツイんじゃない?】
確かにそうかもしれない。
アザレーは機械だから精神的とか関係ないかもしれないけど、僕は精神面が弱いから、そのうち絶対に操縦ミスとかやらかす自信がある。
【だからと言って戦うってのも、ジュン1人で敵3機全てを撃破するのは難しいと思う……あ、ジュンの操縦を馬鹿にしてるわけじゃないわよ。ただ、現実的に考えて、そんな楽観視できるような敵じゃなさそうって事よ】
そりゃあ、ベテランの正規兵達がボコボコ落とされてるのを目の当たりにしてるんだから、注釈されなくても、僕の実力ってものは自分でよく理解している。
アザレーは、何一つとして間違った事は言っていない。
【ただ、そうね……狙いを絞って、3機の内1機だけでも落とせれば、攻撃を避け続けるって案の難易度が、かなり下がると思うわ】
なるほど。3機の攻撃を避け続けるのはキツイけど、2機にしてしまえば、援軍が来るまで避け続ける事ができるかもしれない……と。
攻勢に出るリスクはあるかもしれないけど、3機全てを落とそうとせずに、1機だけに目的を絞れば、まだ活路があるかもしれないってわけだ。
まぁどの選択肢を選んだとしても、か細い綱渡りにはなりそうだから、少しでも生き延びる可能性の高い選択をするべきだよね。
問題は、どの選択肢が一番確率が高いかが数値化できないから、実際どういう行動を取る事が正しいのかわからない事ではあるんだけどね。
でも今は、アザレーを信じるしかない。
「わかった。ソレで行こう!狙うのは正面のヤツでいいかな?」
【3機とも性能は同じっぽいから、どれ狙ってもいいわよ。不幸中の幸いっていうか、連中ここに来るまでに残弾無くしてるから、若干距離を取りつつ、弾を撃ち尽くすつもりで1機に集中して】
ああ……敵さん弾ギレしてたのね。
僕に長距離攻撃当たらないから、接近戦仕掛けて来たってわけじゃないのか。
まぁここに来るまでにだいぶ撃墜してたもんね……それを考えると、皆の命は無駄じゃなかったのかもしれない。
ただ、ここで僕もやられたら全てパーだ。皆の死を無駄にしないために、絶対に1機だけでも落としてやる!ついでに僕も生き残れればそれに越した事は無い。
「よし!!」
言葉に出して気合を入れ、行動に移る。
内部武装であるガトリング銃で、僕を囲んでいる3機を攻撃しつつ、敵機のいない方向へと逃げるように移動する。
3機とも、弾に当たっても構わない、といった感じで、すぐに僕を追う動きをみせる。
実際弾にあたっても、装甲が少し傷つく程度で、深刻なダメージはほぼ無さそうだった。
【装甲がかなり厚いわね……】
僕が感じたのと同じ感想をアザレーが言葉にする。
すぐさま、腰に装着しておいた、先程基地から持ち出したビームライフルを手に取り、標的としていた機体へと撃つ。
そいつは、凄い反応速度でビームを回避する。
「装甲が厚いのに、あの速度かぁ……ズルいな……」
【でも避けたって事は、効果があるって事よ。残弾数に気を付けて、上手く倒してねジュン】
アザレーの言う通りだ。
おそらくビーム兵器を脅威とは感じているのだろう。
しかし、ビーム兵器は強力だが、エネルギー効率は悪い。連発していては、あっという間に弾切れになってしまう。
とりあえず、警戒しながら近づいてくる2機からは距離を取りつつガトリングで足止め攻撃を続ける。
途中タイミングを見計らいながら、標的に向かってビームライフルを撃つ。
二撃目・三撃目。
続けざまに、同じように回避される。
「たとえ止まってても、初速であの動きか……けっこうエグい性能してるね敵さん」
【わ、私だって本気出せば、アレくらいいけるわよ!……たぶん】
アザレーさん……今張り合ってどうすんの?
【それはともかく、マズイわよジュン。あの反応速度で避けられ続けたら、あっという間に弾切れよ】
それはわかっている……でも!
「大丈夫。次で当てるよ」
チームメイトとの模擬戦を思い出す。
1対5になった初期の頃で、5人全員で一斉に襲い掛かってきた時があった。
全員の初撃を対処するのに必死だったが、その後はごちゃごちゃになり、結局は味方誤射の連発で、労せず勝利する事ができた。
それからは、一斉に襲い掛かってくる事はなくなったのだが……
今回の敵はAIだけあって、さすがに味方誤射が無いように、規律正しく効率的な動きをしているように見えた。
「つまりは……こういう事でしょ!」
標的に向かって、ビームライフルを2連射する。
先程までと同じように、1射目を避けるが、避けた先には2射目が待ち構えている。
最初にライフルを撃った時から、動きはずっと観察してきた。
自分が狙われている、という実感はあったのだろう。僕が狙った標的の機体は、避ける方向はバラバラだったが、常に『次の攻撃に対応しやすい位置』へと避けていた。つまりは、その方向へと誘導し、そこに向かって連射すれば、敵はソチラへと誘われ直撃を受ける事になる。
効率を優先するAIの弱点ともいえるかもしれない。
僕の放ったビームライフルの直撃を機体のド真ん中で受けた標的の敵機は、少し動きを止めたかと思うと、すぐに爆発四散した。
どうやら良い感じに、機体を誘爆させるような動力に繋がる配線にヒットしたようだ。
「少しは……皆の仇を取れたかな?」
そうは言っても、たったの1機。仇が取れたとはあまり思えないが、せめてもの一矢くらいは報えたかもしれない。
ふと、手に持っていたビームライフルから、バチバチと嫌な音が聞こえた。
どうやら連射するのは、あまり構造上よろしくなかったようだ。
爆発して、それに巻き込まれても嫌なので、2機のうち右側にいる敵へと投げつける。
わかってはいたが、何事もなく避けられた。
「さて、と……ここからが本番だ」
気合を入れなおし、背中から長刀を手に取る。
攻撃回避に専念するつもりではあるが、丸腰というわけにはいかないだろう。
少しでも敵を警戒させるための武装だ。
「アザレー……いつも通りアドバイスよろしく!」
【ええ……絶対に生き延びましょうジュン!】
2人……いや、1人と1機で鼓舞し合い、敵機の2機へと意識と視線を集中させるのだった。




