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第14話 初の実戦

 変な汗が流れる。

 何の決心もつかないままに、いきなり実戦へと投入されるとは、夢にも思っていなかった。


 いや……そもそも、ここは軍の訓練校だ。

 皆、それなりの覚悟を持って入ってきているのだろう。

 たぶん、僕だけが『学生生活の延長』程度の、軽い気持ちでいたんだ。


 心臓が早鐘のように鳴り響いているのが自分でもわかる。


 で……でも、きっと大丈夫!僕等より先に出撃していった第二陣は、第一陣の倍の戦力が投入されているんだ!

 味方機の位置情報を示すレーダーに視線を向ける。

 訓練生含め、味方を示すマーカーが約100機分表示されており「これだけいれば大丈夫」と、根拠のない自信がこみあげて来るような気がして、少し気分が楽になった。


 視線を正面に戻すと、真っ暗な宇宙空間の遠くの方で、チラチラと明かりが見え始める。

 どうやら第二陣が接敵したのだろう。


 しかし、大きな光が見える度に、レーダーから味方機のマーカーが1つ、また1つと消えていく。


CP(コマンドポスト)より各部隊へ。敵機の性能を考慮し、敵1機に対して3機以上で応戦せよ。繰り返す。敵1機に対して3機以上で応戦せよ』


 基地からの通信が入り、各部隊の隊長が「了解」のコールを返す。

 ピーターも分隊長として、僕等を代表して返答している。


 でもちょっと待って?

 出撃した第二陣は60機で、敵機はまだ20機以上残ってたよね?それに、既に何機か堕とされてたよね?


『防衛部隊へ!敵機数機は素通りでソチラへ行く。何としても食い止め、前衛部隊の戻りを待て。訓練生諸君!戦闘は基本的には基地常駐部隊に任せろ。しかし残念な事に、諸君等を守ってやるための余剰戦力は我が基地には無い。諸君等もおよそ一か月後には正規兵となる身。降りかかる火の粉だけは自らの身で

掃ってもらいたい。何としても生き残れ!』


「ハ……ハハハッ……」


 通信を聞いて変な笑いが出る。

 マジで言ってるの?

 高性能機に乗ってる正規兵が3人掛かりで何とかするような敵が近づいてきたら、自分達で何とかしろ?頑張って生き残れ?


 どうやってだよ!!


 いや……落ち着け!いったん落ち着こう僕!


 防衛部隊には、僕達以外にも正規兵が10機いる。

 それに僕達訓練生も6人で1組なんだ。

 敵を倒す事を考えるんじゃなくて、防御に専念すれば、前線で3人1組で敵を倒した部隊が戻るまでの足止めくらいなら……


 ドンッッ!!


 近くで激しい音がして、思考が現実へと戻ってくる。

 音のした方へと視線を向けると、再び大きな音と共に、何かが爆発した風景が目に入ってくる。


『おい……あそこにはステファン達がいなかったか?』


 呆然とした口調でマイクから通信が入る。


 そうだ……あの辺りには、僕達と同じ訓練生のチームが配置されていたハズだ。

 つまり、さっきの爆発は……


『気を引き締めろマイク!ステファン達はきっと大丈夫だ!それよりも、敵は近い!気を抜いてるとやられるぞ!!』


『お……おう!』


 おそらく皆、僕やマイクと同じように呆然としていたんだろう。

 いち早く正気に戻ったピーターが全員に檄を飛ばす事で、気持ちを持ち直せた。やっぱりリーダーをやるようなヤツは、その辺しっかりしているんだと改めて思う。

 僕じゃ無理だ。


 しかし、そんなやりとりをしている間も、敵にやられて機体が爆発する光景は続く。

 1度に2つ以上の爆発も確認できたので、2機以上の敵が、僕等の周辺で暴れているのではないだろうか?

 焦りだけはどんどん大きくなっていく。

 こっちに残った正規兵は何やってんだよ!?


『しかし、このままでは私達も彼等と同じになってしまう。ピーター指揮を取ってくれ!我等一丸となれれば、生き残れる道はあるはずだ!』


 アンディからの通信も、やはり声に焦りは見える。

 でもアンディの言う通りだ。何もわからずにやられるよりも、一つの指揮系統でまとまって行動した方が、生き残れる確率はグンと高くなるハズだ。


『そうだな……では一旦、各機距離をとろう。まとまってしては良いマトになってしまう。敵は、爆発が見えた方向から来る事が予測されるので、そちらの方向を警戒しつつ……』


【後ろ!右下!!】


 突然、敵からの攻撃位置を示すアザレーの声が聞こえ、普段からのクセなのか咄嗟に身体が動く。

 回避行動をすると、次の瞬間、僕のすぐ横を、敵のビーム兵器か何かだろうか?閃光のような物が通り過ぎて行く。


『うわっ!!?』


 ピーターの叫び声と同時に、ピーターが搭乗していたレーヴァンが爆発するのが見えた。


 ……え?


『ピーター……おい!ピーター!!応答しろ!!悪ぃ冗談はやめろ!!』


 ジェロムが必死に呼びかけているが、ピーターからの反応は無い。

 レーダーを見ればわかる何があったかはわかる。ピーター機のマーカーが消えている。


 でも……でも……ちょっと待ってよ……

 僕は今、咄嗟に敵からの攻撃を避けたよ……その直線上にピーターがいた?

 じゃあ……僕が避けたせいでピーターは……?


『落ち着けジェロム!!冷静にならなければ皆やられるぞ!!』


 アンディからの檄が飛ぶが、立て直す事は難しくなっている。


『このクソがあぁぁぁ!!』


 攻撃が来た方向へと、マイクがライフルを数発撃つ。

 しかし、敵ももう移動しているのだろう。何の反応も無い。


『無駄弾を撃つなマイク!冷静に……がっ!!?』


 その言葉を最後に、アンディからの通信が途切れ、アンディ機の爆発が目に映る。


 何だよ……何だよコレ……


 ピーターもアンディも、さっきまで普通に喋ってたじゃないか?

 数時間前まで一緒に訓練して、笑って……


 感情が追いつかない。

 僕は今、どんな顔をしているんだろう?


 操縦レバーを持つ手が震えているのがわかる。

 怖い、悲しい、怒り……色々な感情が渦巻いて気持ちが悪い。

 凄まじい吐き気がする。ただ、一部残った理性が、嘔吐している余裕はない、とストップをかけているような感じだ。


 頭の中はグチャグチャになってしまっているが、僕はただ、視覚と聴覚だけは研ぎ澄まそうとしていた。

 たぶん思考の根底にある「まだ死にたくない!」という衝動にかられるように……


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