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第12話 宇宙空間での訓練

『どうだいユウキ。無重力での操縦は慣れたかい?』


 コックピット内にピーターの声が聞こえてくる。


「ボチボチ慣れてきたって感じかな?地上での操縦方法とは、やっぱりちょっと違うから若干手こずってるよ」


【大気圏下で空中戦闘するのと変わりなくない?むしろ宇宙空間の方が動くの楽だと思うわよ】


 ピーターに返事したつもりなのに、何故かアザレーが反応を返してくる。

 キミに話してるわけじゃないから黙っててくれないかな?僕以外は両サイドの言語がわからないってのは、こういう時に弊害が出るな。


『やっぱ天才様は違うねぇ……「若干」程度で収まるのはお前だけだよユウキ』


 マイクまで会話に参加してくる。

 キミ等、ちょっとは黙って訓練に集中しようよ。



 現在、訓練校での最終課題のため宇宙空間にいる。


 機体も多く乗っかる輸送艦みたいな宇宙船に乗って、宇宙へと旅立った僕等は、低軌道上にある宇宙ステーションで一旦休憩を挟み、その後数万キロ離れた静止軌道上にある宇宙基地へとやって来た。


 こんなホイホイと宇宙旅行できちゃうとか、改めてこの世界の技術の高さを思い知ったような気がする。

 っていうか、宇宙基地も、ちょっとした惑星なんじゃないかと思えるくらいデカい。


 ともかく、この宇宙基地が、どこからともなくやって来る「謎の敵」に対する、最前線基地となっているので、訓練中とはいえ油断は禁物だったりする。


 まぁ、その「謎の敵」が来たところで、僕達訓練生の出番はない。

 この基地に駐屯している部隊が何とかしてくれる。


 そんなわけで僕達は、適度に警戒しつつ、一日でも早く宇宙空間での機動戦闘機の操縦に慣れるだけである。

 宇宙基地での滞在期間は2か月。

 その間に宇宙空間での動きを一定水準以上にしなければならない。


 宇宙実習の最終工程で、全訓練生チームでの混戦模擬戦が行われ、ここで不様な動きをしようものなら、卒業できないどころか『軍人としての資格なし』と扱われ、退学扱いにされる。

 つまりは、訓練校に在籍していた2年が全て無駄な時間、という恐ろしい事になる。


 まぁ救済措置として、文官として任官できるパターンもあるが、それは座学等でかなり優秀な成績を維持している必要があるので、僕にとっては無縁の救済措置といってもよい。


 そんなわけで僕は、この『宇宙空間での機動戦闘機操縦』で良い成績を収めなければ人生詰むのだ。


『良い事じゃねぇか。そんな天才様がウチ等のチームにいるんだ。他部隊との模擬戦連勝記録更新してトップチームとして卒業できるんだ。至れり尽くせりじゃねぇか。天才様万歳ってもんだ』


 ジェロムまで会話に参加してくる。

 キミ等、実はマジメに訓練する気ないだろ?


 ともかく、先程ジェロムが言った「他部隊との模擬戦連勝記録」とかいうのは、ちょこちょこと行われていた、他訓練生チームとの合同模擬戦での事である。

 過去の訓練生チームを探しても、最初から最後まで、全て負けなし、というチームは存在していなかったらしいのだ。


 訓練校に入った時点では、誰も機動戦闘機を動かした経験はない。

 つまりは全員が横並びでスタートする。

 ある程度才能がある人が1人いたところで、操縦始めたばかりでは、相手チーム全てを相手にするほどまでは実力差は出ず、結構負ける事があるらしい。

 他にも、大器晩成型で、後半追い上げて実力を伸ばす人がいたりと、意外と勝敗はバラけるとの事だ。


 そんな中、僕等のチームは連勝記録を伸ばし、現在、歴代訓練生チームが持つ連勝記録を更新しているというのだ。


 その連勝記録を更新する事に関しては、僕も折角なら記録を残したいとは思うよ。

 でも、いくらなんでも僕1人でどうにかなるものじゃないとは思うんだよね。


『マイク、ジェロム。確かにユウキの才能は凄いとは思う。けど、ユウキの力に頼って胡坐をかくのは少し違うと思うよ』


『その通りだ。それにここで行われる最終模擬戦は、全チームが同時参戦する。今までと同じような、チーム対チームの戦いとは違うだろう』


『ああ……他チームの連中も、ユウキの才能は理解しているだろう。一番あり得るのは、全チームが共謀して「まずは全員でユウキを潰す」という作戦だろう。ユウキだって無敵というわけじゃない。いきなりユウキがやられたら、あとは悲惨な結果になるぞ』


 ついにはピーター、アンディ、レイまで加わってくる。

 まぁ……訓練しながら喋る程度ならいいのかな……うん、ちゃんと訓練しながらだったらね。

 ……マイクとジェロムはマジメにやれ!


 それにしてもレイが何か恐ろしい事言ってなかった?

 一番あり得る作戦が、全員で僕を潰しに来る?

 何それ?そういうイジメ良くないと思うよ。

 皆、僕を過大評価してない?僕はただ、機動戦闘機と話ができるってだけの普通の訓練生だよ……まぁ多少は操縦が得意な部類になるかもしれないけど、その程度だよ。


「レイの言う通りだよ。混戦になったら僕一人でどうにかなるようなもんじゃないし。皆で力を合わせるのが一番だと思うよ」


 要約すると「僕が集団リンチされるのを助けて!」という事を伝えておく。


【何言ってるのよジュン。私とアナタが組めば、敵が何体来ようと負けたりしないわよ!!】


 またややこしい事を……負けたら不機嫌になるんだから、そういう発言を止めて、僕に過剰な期待をする事も止めに欲しいんだけどなぁ……



 ビーッ!ビーッ!


 僕達の会話を中断させるかのように、突然機体のスピーカーからアラーム音のような音が聞こえてくる。


『聞こえるか訓練生(ひよっこ)共!!敵襲だ!大至急基地内に戻れ!!』


 アラーム音が終わると同時に、基地からの通信が入る。


 ……え?『敵襲』?


 基地の方へと目をやると、僕等訓練生が乗る機体よりも性能の良いと思われる、正規兵の乗る機動戦闘機が続々と格納庫から飛び出しているのが見えた。


 確かにここは最前線基地。そういった事も有り得るのだろう。

 ただ、知識としてだけ知っている『敵』を初めて視認できる距離に確認し、頭が軽く混乱する。


 そうだ。学校感覚でいたけど、僕達はある意味戦争をしているんだ。

 その事実を、いきなり突きつけられ、頭を思いっきり殴られたような気分になる。


『何をしているユウキ!早く基地に戻るんだ!!』


 ピーターからの通信で現実に戻る。


「りょ……了解」


 何とか返事だけをして、僕も急ぎ基地へと戻るのだった。


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