第1章 転生
現世は何一つ面白いことなんてない。
ただただ時間を消費するだけの毎日、会社に出社し、上司に叱責され、家に帰り気絶するように眠る。
唯一の救いが実家暮らしで、一人ではない点だ。もし一人暮らしをしていたら間違いなくとっくの昔に身を投げているだろう。
身近に家族がいるそれだけの理由で思いとどまっている。
俺は誰かに迷惑をかけること嫌いでたとえどんなにつらくても死にたくなっても、例え泣いたとしても、けろっと何もなかったように家族や友人、会社の同僚にいつもどおりに接する。
ただそんな当たり障りのない毎日をただ過ごす。そんな俺にも唯一の趣味があるそれが天体観測だ。そんな中で俺が一番好きなのがポラリスである。こぐま座のα星でこぐま座の中で最も明るい恒星、そして俺が好きな理由は北極星で世界中どこから見ても、北に存在し誰から見てもかけがえのない存在であるからだ。
俺は常日頃から夢があった。それは誰からも「必要とされ、愛されるそしてとってかわる存在がいない」そんな人間になることである。
そんなことを心に秘めて今日も会社に出社しようと家を出る。
駅に向かう途中で事件は起きた。
信号を待っている最中に一人の小学生ぐらいの男の子がスケートボードを乗りながら信号を突き進む。
だが信号は赤当然車も向かってくる。男の子が信号の中腹に差し掛かり右からけたたましいほどのクラクションが鳴り響く。
俺は「危ない」と声を発すると同時に体が動く男の子の体を反対方向に突き飛ばす。
だが今度は俺が代わりに横断歩道の中腹にいる。その時、走馬灯が自身の頭の中を駆け巡る。
親や同僚、友人の記憶が舞い戻る。だが現実そう甘くない、もう2度と会えなくなることを覚悟し、俺はただその時を待つ。
「ガシャーン」という音と共に悲鳴が上がる。その悲鳴が聞こると同時に、それを皮切りに瞼を閉じる。
どのくらいの時間がたったのだろうか。俺は永遠とも思えるような長い時間暗闇に漂っていた…
しかし目の前の名にもないはずの空間から白い光がこちらに迫ってくる。
俺は普段まったく神や仏などの存在を崇拝しないがこの時ばかりはその神に助けを求める
「もし神が存在するならば助けてくれー」と虚空に向かって叫んでみる。
すると目の前になにやら神々しい人物が現れる。
見た目は白髪の老人で右手に杖を持っている。その老人が口を開く
「わしは俗に言う神だ。君は地球とは異なる星で生きてもらう」
「え?どうゆうことですか?」
俺は疑問を投げかける
「君は地球で生きるのに適していないだから、違う星で過ごしてもらう」
「どういうことですか」
そんな俺の質問をよそに神は矢継ぎ早に話す。
「君には1つだけ特別な力を授けよう」
と神はいう。
「特別な力?」
俺は頭の中を高速回転させる。
「これはいわゆる転生ってやつなのか、だとしてもなぜ俺が転生する羽目になるのか、こういったものは日本人の俺の感覚からすれば天国や地獄に割り振られるものじゃないのか?」
などの疑問をひとしきり頭のを巡らせていると神はまるで俺の頭を盗聴しているかのように疑問に答えた。
「一般的には君の考えているとおりに地獄や天国に割り振るのだが、前世で何らかの未練や、思いを秘めている人にはもう一度転生という形でやりなおしてもらっているのだ。」
「君には夢があるのだろうそれが今回君を転生させる理由だ、そして君に与える特別な力が君の夢をかなえるものだとわしは考えるが使い方は君次第、そしてその能力についてはわしはここでは君に教えないだから君は能力などに振り回されずにありのままの自分で次の人生を歩んでほしい」
「そして君が転生する世界は、剣や魔法が行き交ういわゆるファンタジー世界である。くれぐれも命を粗末にすることなく過ごしてくれ。質問はあるか?」
神はひとしきり説明したようで次に俺に質問の有無を投げかけてくる。
俺はいま様々な思考を巡らせ様々なことを聞こうと思ったが、一つだけ聞くことにした。
「俺はその世界で唯一無二になれますか?」
普通であれば世界や魔法、剣のことについて聞くのかもしれないが、
俺にとって大切なのはそんなことではない。
俺の夢が一番大切なのでこれを聞くことにした。
「それはなんともいえんが、君が自分自身で己のみちを切り開くならば、おのずと道は開けよう」
と神は言った。
「そうですか…」
俺は少し形容し難い気持ちになりつつも小さな声でそっとつぶやいた。
「ほかに質問はあるか?」
「何もないです」
と答えると自分の体まわりにポリゴンが散らばり少しずつ自壊を始める。
決してこれが痛いわけではなく、この場所からいなくなろうとしていることを直感的に感じる。
もう少しでいなくなろうとした瞬間に最後に神が話しかけてきた。
「すべてを自分一人で解決しようとしないことが一番の近道だということを決して忘れるでないぞ。」
その最後の言葉を後に俺はこの空間をあとにした。