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第12話 あなたなら来ると思ってたわ

 ダンジョンモールは、有事に備えて強化シャッターが備え付けられていた。

 信号が発せられ、次々と閉まっていく音が聞こえる。それに安堵するもの、怯えるもの、右往左往するもの、様々であった。

 テレビは現地での映像に切り替わる。


「お、おい! あれ子供たちじゃねえか!?」

「……そうか。祭りか」

「嘘だろ……」


 公園で祭りをしている小学生たちが、必死に走っていた。

 そして、逃げ惑う人の姿に交じって探索者が懸命に戦っている姿も映し出される。


 シャッターが閉まっていく。閉鎖は、もうすぐだった。


 伊織は、深呼吸していた。それに、椿姫が気づく。


「行くのか」

「――はい。私は戦えません。でも、できることはきっとある」


 椿姫は、伊織の肩に触れる。

 そして――。


「安心してくれ。私が前に出る。怪我人は頼んだぞ」

「……嬉しいです。ただ……椿姫さんのランクは【F】、ダンジョン外の戦闘は違反です。有事なので適応外の可能性もありますが、最悪の場合はく奪もありえます」

「そうか。だが、問題ない」


 伊織はわかっていた。椿姫が気にしない事を。


「わかりました。もし何かあっても、絶対に1人にはさせませんから」

「ふっ、伊織は頼もしいな」


 次々と閉まっていくシャッター。二人は、寸前の所でシャッターの外へ飛び出していった。


 駆ける。速く、誰よりも早く。

 椿姫が驚いたのは、伊織が付いてきていたことだった。


 ――限界を超えるには研鑽だけでは足りぬ。強い想いが必要だ。


「――叔父の言う通りだな」

「椿姫さん。――もしもの時は私ではなく、一般の方を助けてくださいね」

「……その覚悟承った」


 ダンジョンの崩壊の位置はまだ先だったが、空に巨大な魔物が飛んでいた。


 ネームド級、吸血蝙蝠(こうもり)である。

 飛行タイプ、一度食いつくと対象の血をすべて奪う凶悪な魔物。


 伊織が戦闘態勢を取ったとき、椿姫は既に壁に足をかけて空を飛んでいた。

 吸血蝙蝠は鋭い嘴を突き出す。しかし、椿姫はそれを頭部を動かすだけで回避した。


「――宮本流、飛天流(ひてんりゅう)


 直後、椿姫の剣が嘴を切り裂く。間髪入れず、敵の頭部を切り落とした。

 ぼたりと落ちるときには、二人は既に駆けていた。


   ◇


 崩壊したダンジョンの近く、1人の女性探索者が、A級の巨大魔物三体を相手にしていた。

 それぞれ獰猛な性格をしている。牛とクマとカバの亜種のような魔物だ。

 堅い皮膚に手には魔力がみなぎった爪、鋭い牙。


 一方女性は美しかった。

 黑い長髪、しなやかな身体で、演舞のように攻撃を回避。そして、間合いの遥か遠くから長刀を構えた。


「あらあら、――そこは安全圏(・・・)じゃないわよ」


 直後、長刀が間合いの遥か先の魔物を切り裂いた。

 魔物が反応できずに切り刻まれていく。


 ”うおおおおおおおお、つええええええ”

 ”決め台詞キター”

 ”安全圏なんて存在してないんだよな。帆乃佳(・・)ちゃんには”

 ”相変わらずカッコイイ”

 ”マジで強すぎる”

 ”これが、伸縮自在の長刀か”

 ”ちょっと待て、別の探索者だけど、配信の片隅で無双してるやつがいるぞ”

 ”え、これまさか――”

 ”恰好違うけどこれ、大剣豪じゃね!?”

 ”ほんとだ。絶対そうだ”

 ”うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、大剣豪がいるぞおおおおおおおおおおおお”

 ”マジでかっこえええ”

 ”なんか服装変わってね!?”

 ”変わってる。てか、後ろに伊織っぽいもいるじゃん!”

 ”すげえ、マジで頑張ってくれ”

 ”配信の片隅で、もう一人うつってないか?”

 ”大剣豪だろ?”



 すると女性探索者――佐々木帆乃佳は、静かに微笑んだ。

 それから配信には聞こえない程度で、呟く。


「謎の大剣豪――いや、椿姫。あなたなら来ると思ってたわ」

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