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わたしの炊飯器君〜ある日、炊飯器が擬人化しまして〜  作者: 地野千塩


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第六話 誰かのために肉じゃがを

 炊飯器君は幻だったのだろう。きっと仕事で疲れていた私が見ていた妄想、幻覚の類いにもの。そう思わないとやっていられなかった。


 その後、私は新しい炊飯器を買い、いろいろなレシピに挑戦していた。


 ご飯系だけでなく、煮物やケーキも作れる。サラダチキンも作ってみた。コンビニで買うのよりしっとり柔らかで美味しい。


 炊飯器では揚げ物は出来ないので、少し痩せてきた。それに炊飯器一台あれば自炊もけっこう楽だった。自分だけでなく、誰かの為にご飯を作っても良い気がして、婚活パーティーにも行ってみた。


 正直、理想的な相手はいない。年収も三百万円代の人が多く、バツイチや低身長のお相手も多い。


 とはいえ、氷河期世代で苦しめられた私は三百万円稼ぐ事も大変だと知っていた。訳アリなのもお互い様だ。なんせ自分は炊飯器君という幻を見ていたような女だ。


 そう思うと心に寛容さも芽生え、笑顔で婚活していた。


「私、自炊好きです。特に炊飯器で調理するのが好きで、最近は肉じゃがを作ってまして……」


 そんな事を話すのも楽しくなってきた。できれば、この肉じゃがを食べてくれる人が見つかればいいが。


「初めまして。米沢拓朗といいます」

「え?」


 その人と婚活パーティーで出会った時は驚いた。五十歳のバツイチ男性だったが、顔が炊飯器君そっくりだった。ちょうど炊飯器君を老いぼれされせた雰囲気で、私の目は丸くなっていただろう。


「どうしました?」

「いえ、あの、あなた知り合いとそっくりで他人という気がしないというか」

「本当ですか? いや、これは運命ですかね?」


 なぜかトントン拍子に話が進み、デートの日取りも決まってしまった。


 そのデートの日の朝、向かいに住んでいる主婦に挨拶された。何か嫌味を言われるか身構えてしまったが。


「そういえば、一緒に住んでたっていう親戚の大学生はどうしました?」


 以前、炊飯器君との事を疑われ、親戚の大学生と暮らしていると嘘をついていた。


「あの優しい子、元気?」


 私はこの主婦から走って逃げた。


 炊飯器君は幻ではなかった? いや、まさか。


ご覧いただきありがとうございました。完結です。


実は本作は完全趣味で書いている陰謀論・都市伝説系の短編から、細部をアレンジして書き直したものです……。なぜそんなジャンルからライト文芸ぽいホッコリ系の本作が生まれたのかは作者も謎です……。


現在コージーミステリを連載中です。サレ妻が殺人事件に巻き込まれて探偵になるギャグ風のコージーです。よろしくお願いします。

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