三日月と三日坊主(ウタほたるのカケラ〈US〉出張版【サイズS】第1iS片)
長続きしません。
※noteにも転載しております。
——ほらまた三日坊主だ!
からかわれた僕だけど、口にこそしないものの、いくらか反論はあった。
これでも、五日続いたのだ。
だが、そんな些細な違いを主張したところで、たいした名誉回復もできないだろう。
僕はやるせない気持ちのまま、物想いに耽るように夕焼けを眺め、やがて夜になってもそのまま星空をみつめていた。
満天とはいかない夜空に、雲が切れると。そこから顔を出したのは、ぴんと尖った三日月——いや、正確には三日めの月かはどうかはわからないが。そんな形をした月が、夜空に刃を立てるように浮かんでいた。
僕が三日で投げ出そうが、五日続こうが、「三日坊主」と呼ばれてしまうように。
おまえも、二日めの月だろうが、四日めの月だろうが、「三日月」と呼ばれちまうんだな。
そんなことを愚痴ってもしょうがないのはわかってはいるのだが、同じような想いを抱いている同志に逢えたようで、なんとなく気が楽になる。
けれど、あの「三日月」も四、五日——もしかすると二、三日後には、ぷっくりと太って「半月」と呼ばれるようになるはず。
きっちり半分ではなくとも、だいたい半分でだ。
僕もせめて一週間もてば、「三日坊主」と呼ばれないですんだのだろうか。こう思うと、あの月に負けてはやれないな、なんて。こんな僕でも、やる気を新たにできる。
こんな気持ちのときは、やっぱり夜空を見あげるものだ。
僕は同志である「三日月」に、つぎこそは「三日坊主」にならないことを誓ったのだった。
それから、数日もたったか。
あしたから、また新しく始めようと心に決めた僕は。そろそろ半月になろうかという月を、夜空にさがした。
「三日坊主」にらならないための誓いをたしかめるためだ。
だがおかしい。
今夜は雲も申し訳ていどの、なかなかの星空。ところが、そのどこにも月がみつからないのだ。
そして、僕はひとつのことに思いあたる——もしかして!
いや、それ以外に考えられまい。
あのときの月は「三日月」だが、これから満ちていく三、四日めの月ではなく。欠けきろうとしている、二十七日めあたりの月だったのだ。
僕は愕然とし、そして絶望した!
二十七日めあたりのあの月まで「三日月」と呼ばれてしまうのなら、僕も一ヶ月近く頑張ったって、おなじように「三日坊主」と呼ばれてしまうのか?!
今回こそはと意気込みながらも、今回は始めるまえから心を折られてしまった僕。
またもや「三日坊主」に終わることは、予想に難くない。