花火よりも美しい……
「綺麗な花火……」
彼女が目を細めて嬉しそうに言う。
「来年もまた、来ような?」
彼女の肩を抱き寄せ、見つめてそう言うと、彼女は愛おしそうに、自分のお腹をさすって言う。
「うんっ! 今度は、この子も一緒にね!」
「ああ。そう、だな。今度は一緒に来れると良いな」
彼女のお腹には俺達の子がいる。否、いたのだ。けれど流れてしまった。彼女は……妻は、まだ受け止めきれずにいる。
彼女を強く抱き締める。
「悠くん、どうしたの? 苦しいよ」
「ああ。ごめん、何でもないよ」
彼女を抱き締めていた腕を緩める。
「嘘! だって、悠くん、泣いてるよ?」
彼女に言われて気付いた。知らない内に涙が出ていたみたいだ。涙が頬を伝う。
「心愛だって泣いているじゃないか」
その後は、お互いに何も話せなくなっていた。暫くの沈黙の後、彼女が俺の袖を引っ張る。
「困らせてごめんね、本当は分かっているの。私のお腹にはもう、いないって事を」
「そう、か」
「うん。けど、いつまでもこうしてられないよね。立ち直らなきゃ……」
真っ直ぐな瞳で前を見る彼女。その姿がとても美しく寂しそうで、いてもたってもいられず、もう一度彼女を抱き寄せ、キスをする。とても深く深くどこまでも……
猫兎彩愛です☆
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