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愛と正義の魔王様  作者: たじま
12/18

12、魔王様と学園戦争(アカデミー・ウォーズ) 〜しかし、なぜ裸なんだ? さぁ?リンの趣味とか? べべ、別にそんな事はない! 〜


風香る、ある春の日の放課後。

突然、ホント、唐突に、何の前触れもなく、学園騎士団アカデミー・ナイツ第二席、ダグラス・ヴェスカライズが……魔神に覚醒した。




「ふあっはははははっ!我こそは最強の魔神、ダグラス!

今ここに、学園の支配者となった事を宣、言、するッ!!!」



「お、おい、ダグラス……突然そんな所に登って、何言ってんだ?」

「そうですよ。人が見てますよ、ダグラス先輩?」



ウォルターとデルニックが恥ずかしそうにダグラスを嗜める。

学園の校門前広場。

三人並んで下校しようとした時、突然ダグラスが「とうッ!!」とか言って噴水脇のベンチに飛び乗った。

そして、右手を固く握り締め、鼻息荒く先程の宣言をした訳だ。

道行く生徒達の目の前で……。

だが、



「黙れ!!我が覇道を愚弄するか!!」



ダグラスに一喝されてしまった。

どうやら当の本人に羞恥はないらしい。



「我が覇道って……」


「我は悟ったのだ。今の我はアランよりも強い。強すぎる程に強い。もはや学園騎士団アカデミー・ナイツになど収まらぬ程にな。なのでこの学園を支配する事にした。以上だ!」


「意味が分からないんだが……」



その時、校門前広場に暗雲が立ち込めた。

まるで、これから始まる争いに恐れおののくように。



「ふん、天も震えているわ……」



「ウォルター先輩……ダグラス先輩、何か変な物でも食べたんでしょうか?

分からん。とにかく力ずくで止めるぞ、デル」

「は、はい!」


「ふん、我が覇道に立ち塞がるか、強敵ともよ。ならば拳で応えよう。来い!!」



ガカッ!!



ニヤリと笑ったダグラスの背後で、稲妻が光り輝いた。







「もう……なんで急に……?」



リンベルが髪を押さえながら眉をしかめる。

さっきまで晴れていたのに、突然黒い雲が広がったと思ったら風が吹き始め、ゴロゴロと雷まで鳴り出したのだ。

おまけに、向かう先には人だかりまでできている。

迷惑この上ない。


その時、リンベルが校門に差し掛かったのはまったくの偶然だった。

人だかりを避け、騒ぎを余所に通り過ぎようとしてハタと立ち止まる。



「ウォルター先輩? デル……?」



リンベルが絞り出すように呟いた。

どういう経緯なのかは知らないが、上衣を脱ぎ捨てたダグラスがウォルターの胸に手刀を突き刺し、頭上高く掲げながら高笑いをしていたのだ。

しかも、その足元にはデルニックも倒れている。



ニヤリ!



リンベルに気づいたダグラスが、ウォルターの身体をドサッと地面に放り投げた。

直後、



「「うわぁーーーーーーーーーッ!?」」



野次馬達が堰を切ったように逃げ出した。

学園騎士団アカデミー・ナイツ同士の戦いだからと興味本位で見学していたら、まさかの殺人へと発展してパニックに陥ったのだ。


逃げ散る生徒達を掻き分け、リンベルがダグラスの元へと歩み寄る。



「ダグラス先輩……何があったの?」

「これか?」



足元に転がる二人をチラリと見ながら、ダグラスが親指についた血糊をペロリと嘗める。



「安心しろ、リンベル。ウォルターとデルは我が胸の内にて生きている。永遠にな」



そう言ってダグラスは両目を瞑ると、血に染まった右手を胸に当て、静かに天を仰いだ。

散って逝った強敵とも達を悼むように。



「ダグラス先輩……」

「なんだ?」

「まだ答えてない。何があったの?」



目を細めたリンベルが剣の柄に手を掛けた。

そして、スーーーッと引き抜く。

返答次第ではただではおかない。

そう態度で示したのだ。

それを見たダグラスが、再びニヤリと笑う。



「ふん……所詮、血塗られた道か。

よかろう!!

リンベルよ、奴ら同様、我が力の糧となるがいい!!

とうっ!! !」


「えッ!?」


「ダグラス……キィーーーーーーック!!!」


「キックってなんだ!!」



上空からの飛び蹴りを慌てて避けながらリンベルがツッコむ。

直後、



ドゴンッ!!!!



自分の元いた場所が盛大に爆ぜた。

魔術を行使した形跡はない。

己の肉体のみを強化し、蹴りの衝撃だけで石畳に穴を穿ったのだ。

だがリンベルとて学園騎士団アカデミー・ナイツの一員。

あまりの威力に一瞬驚きはしたが、すぐ我に返るとまだ足を抜けないでいるダグラスへと斬りつけた。

しかし、



「甘いわぁ!!」

「なっ!?」



リンベルの身体がくるんと宙を舞う。

ダグラスが刀身を片手で掴み、斬りつけた勢いを利用してそのまま後方に放り投げたのだ。

相手はダグラスだ。もちろん、手加減はした。

それにしても刀身を素手で掴んで投げつけるなど無茶苦茶だった。



「ホントに、ダグラス先輩?」

着地後、再び剣を構えてリンベルが問いかける。



「ダグラス先輩は剣士。キックなんかしないし、剣を掴んだりもしない」

「もちろん、ダグラスだ。ただし……魔神となったな!!」



両者が同時に地を蹴る。

リンベルの鋭い斬り込みを無視してダグラスが拳を叩き込んできた。

そのあまりに無防備な攻撃に、リンベルの方が慌てて剣を引く。

そこからは防戦一方だった。

ダグラスの拳を右に左に避けながらなんとか斬り上げようとするが、如何せん間合いが近すぎる。



「良く凌ぐ。カルの魔力のおかげか。しかぁしッ!!」

「きゃあ!?」



リンベルが堪らず後方に吹き飛んだ。

ダグラスのタックルをまともに食らったのだ。



「ふはははははははははっ!! 貧弱貧弱ゥーーーーーーーーーッ!!」



「なんか、ムカつく……」


リンベルが起き上がりながら悪態をつくが、それが強がりなのは明らかだった。

タックルのダメージが残っているのだろう。足元がふらついている。



「あまりいたぶるのは趣味でない。これで終わりとしよう。さらばリンベル! 貴様も我が強敵ともであった!!」


「ーーーッ!?」



ニヤリと笑ったダグラスの身体が揺らぎ、直後には眼の前に立っていた。

頭は逃げろと叫ぶが身体は動かない。

ひどくゆっくりとした動作でダグラスが手刀を突き出してきた。

リンベルの胸元をめがけて……。



<セクハラ…………>


刹那の時間で、なぜかそんな事を考えた。その時……、



「……ぬ?」



ダグラスの動きがピタリと止まった。

まるで見えない鎖に両手両足を拘束されたかのように。

直後、今度はリンベルから引き剥がすように、ダグラスの身体が後方へと吹き飛んだ。



「リン!!」

「どうしたのダ、これハ!?」



リンベルを庇うように二つの影が立ち塞がる。クレアとレンレンカブレだ。

先ほどダグラスの攻撃を防いだのは、クレアの重力魔法だったのだ。



「ふむ……やはり、クレアか。だが、効かぬッ!!」

「え……?」



クレアが驚きに目を見張った。

拘束は緩めていない。

なのにダグラスが「ふんッ!」と両手を広げて気合いを入れた瞬間、クレアの張っていた重力魔法が粉々に砕け散ったのだ。



「ハァッハッハッハッハッハッハッ!! 我、最強ぅ!!」


「いろいろとツッコミたいけど……リン、ダグラス先輩はなんで裸なの?」

「あれ見て、そこ?」

「ひょっとして、春だから?」


「人を頭のおかしい輩と一緒にするな! これは魔神となった我の魔力に耐えきれず、衣服が粉々になったのだ!」


「ま、魔神ダとッ!?」

「そうだ!!」

「…………」


「……クレアよ、その人を憐れむような顔はやめろ。もっとレンレンのように、驚いてみせるのがマナーだ」


「そんなこと言われても……」


「クレア……悔しいけど……スッゴくムカついて、受け入れがたいけど……ダグラス先輩の言う事はホントみたい」

「なぁ、リン」

「なに?」

「ダグラスは、どうして魔神に覚醒したのダ?」

「……さあ?」

「じゃあ、ダグラスの目的ハ?」

「……さぁ?」

「目立ちたかったとか?」



「ふん、ならば答えよう!

刻が満ち、そして……我は魔神に覚醒したのだ!!」


「答えになってない」


「そして魔神になった我の目的!それは……」

「それは?」

「目指すは天ッ!!」

「てん……?」


「先ずはこの学園を手に入れ、ひいてはこの国を、いや世界を手に入れる!そして、我愛しの君に全てを捧げるのだ!!」


「なっ!?」

「そんな……」

「じゃあ、この騒ぎハ……」


「私の、ため?/私のために?/私のためダと?」



「…………」

「…………」

「…………」


「クレア、ちょっと胸が大きいからってでしゃばらないで。あれは私のこと」

「なに言ってるの、リン! あれはどう聞いても私のことだよ!」

「違う、私のこと」

「私だよ」


「なぁ、二人とも……なんデ私は眼中にないのダ?」



「貴様ら自信過剰過ぎだッ!! 

だいたいペチャパイ×2と人妻なんかに興味はないッ!!!」



ビキッ!!!!



「今……なんて、言ったの?」

「へぇ、死にたいようダな……」

「もう、人妻なんて……まだ式挙げてないのに……」


「クレア、うるさい」



「何度でも言ってやろうッ!!

女の価値はバスター力で決まる!!

80にも満たぬチンケなバスターで……」



「「言うなーーーーーーーーーッ!?」」



「ふん……やはりバスター力の小さな女は気品もない。

毎日牛乳を飲んで出直せいッ!!!」



「言わせておけバぁーーーッ!! 雷の、槍ィーーーーーーッ!!! 」

「フレイム・バレットーーーーーーッ!!」



怒り心頭のリンベルが炎の弾丸を、レンレンカブレが雷の槍を、まったくの手加減無しでダグラスに叩き込む。しかし、



「ふんッ!!」

「「え……?」」



ダグラスは、まるで蝿でも振り払うかのように右腕一本で軽々と弾いてしまった。

カルの魔力サポートを受けたリンベルと、ヨ・ハ・ルル最強の魔術師と謳われたレンレンカブレの攻撃魔法を……。



「今の我に魔術など、効かぬ!通じぬ!

ましてやチンケなバスターから放たれる魔術など笑止ッ!!」


ムッカーーーッ!!



「見せてやろう、我の力をッ!!!」

「「ーーーッ!?」」



言うや否や、ダグラスの身体から魔力が溢れ出した。

可視化できるほどの膨大な魔力の量。

それはカルと本契約しているリンベルやクレア以上のものだった。



「ハァッハッハッハッハッ!! 

漲る魔力!(バッ!) 

溢れだす気品!(シュバッ!)

そしてこの、素敵に無敵な強者のムーーーヴ!(キメ!) 

……我は今、確実にカッコいい!!(うっとり)」


「パクるな!!」



「さて……我はそろそろお茶の時間だ。出でよ! 覇王ダグラスタワーーーーーーーーーーッ!!」

「ダっさ……」



両手を広げたダグラスの後方に、突如、地響きを立てながら巨大な塔が現れた。

ネーミングはともかく、無から巨大な塔を作り出すその力はどうやら本物のようだった。



「さて、貴様等では力不足だと悟ったであろう。アランとカルに伝えるがいい。あの頂きにて待つとな。さらばだ!!」



そう捨て台詞を残し、ダグラスの姿は忽然と消えてしまうのだった。








「それで、あんな塔が?」

「ちょっと学園長に呼ばれてる間に、そんな事がな……」



学園騎士団アカデミー・ナイツの本営で、アランとカルが呆れたように嘆息しながら窓の外を見た。

事の真意はともかく、荒れ地に建つ古代遺跡のようなあの巨大な塔は、この学園には景観的にそぐわない。



「悔しいけど、私じゃまったく歯が立たなかった」

「同ジく」

「それだ。レンレンとリンベルは相当強い。なのに、それを歯牙にも掛けないなんて事があるのかな?」


「ふむ……なら、ちょっと試してみるか」

「え……?」



言うな否や、覇王ダグラスタワーの上空に巨大な魔法陣が広がった。

それは二つ、三つ、四つと次々に増えていき、五つ目の魔法陣が展開したところで光りを放つ。



「え……? ちょ、カルーーーーーーーーーッ!?」

ドカンッ!!!!!!



アランの制止する声を打ち消すほどの巨大な落雷の音が学園中に響き渡った。

一番上の魔法陣から発した落雷を次々に増幅させて目標を破壊する特大魔法。

あのヨ・ハ・ルルの聖堂騎士団テンプル・ナイツ本営を瓦解せしめた、あれを使用したのだ。


因みにクレアとリンベル、レンレンカブレは慣れたもので、カルが「ちょっと確かめてみるか」と呟くと同時に耳を抑えていた。



「カル、あそこにはダグラスがいるんだぞ」

「そう慌てるな。話から察するに、どう考えてもダグラス先輩ではないだろう」

「身体を乗っ取られてる可能性は?」

「…………」

「…………」

「……まあ、あれだ。とりあえず、外を見てみろ」



カルが (誤魔化すように)覇王ダグラスタワーへと視線を向ける。

そこには、以前と何ら変わらぬ姿の塔が立っていた。



「あれを食らって無傷なんて……カルでも破れない防御結界が張られているってことか……」

「破れない事はないだろうが、仮に破壊しても、またぞろ生えてくるのがオチだろうな」

「じゃあ……」

「ああ。どうやら、招待に応じるしかないようだな」



カルの言葉に、アランがコクリと頷いた。









覇王ダグラスタワー

学園の中央に、魔神と化したダグラスが召喚せしめた謎の塔。

それは直径五十メートル程の石造りの塔で、明り取りの窓が所々に空いてはいるが、人が使うのを何ら考慮していないであろう事はその外観からも明らかだった。


その入口。



「これはまタ……」

「なんて言うか……」

「悪趣味」



言葉を濁すクレアとレンレンカブレに代わり、リンベルがズバリと切り捨てた。

入口の左右に、ポーズをとった筋肉隆々の男達の彫刻がズラリと並んでいたのだ。


それを横目に扉を開けて中に入ると、そこは何もない広間だった。

部屋を区切る為の壁もなく、窓もない。

そして、おかしな事に外から見た大きさ以上に広かった。

奥行きは優に百メートルを超え、おまけに天井が見えない程高い。

おそらく空間に干渉して広げているのだろう。

入口と反対側の壁には、最上階へと続くであろう重厚な扉がある。

そして、部屋の中央には……、



「来たな。アラン・オリバー! カル・マ・シリング!」

「ここから先は、我ら二人がご案内しよう!」



上半身裸で決めポーズをとる仮面の男達がいた。

それを無言でじっと見つめるカル達一行。

顔を隠してはいるが、どこからどう見てもウォルターとデルニックだったのだ。




「ウォルター先輩にデルまで、消えたと思ったら、こんなところでなにしてるの?」


「ウォルター? デル? ふっ……人違いだ。そいつらは、このようにマッスルな筋肉の持ち主ではあるまい?」←ムキッ!!


「筋肉が被ってる」


「そして、力漲るパワーの持ち主でもあるまい?」←ムキッ!!


「力も被ってる」



「そう! 俺は覇王ダグラス隊幹部、冷酷のマスクド仮面!

クゥーーールファイター!! マン・フレット!!」

↑ムキムキッ!


「同じく哀しみのマスクド仮面!

クライングウォーリア!! ミスト・バーーーン!!」

↑ムキムキッ!!



「やっぱり、人違いみたい。二人はこんな、バカじゃない」



「さて……煩い小蝿は放っておいて」

ムカッ!!



「アラン・オリバー、カル・マ・シリング」

「お二方は覇王ダグラス様より丁重にお通しするよう申し使っています。あちらの扉よりお進みください」

「但し……残りの三人はその限りではない」

「ここでお帰り願いましょうか」



「そう? 分かった。 じゃあ、クレア、レンレン、帰ろう」

「いいの?」

「あんな態度を取るなら構わない。ここで一生、出番もなくボーっと突っ立って、ポーズの練習でもしてればいい」



「ちょっと待てい!!」

「こ、このまま我等がおめおめと帰すとでも思ったか!」

「帰りたければ、我等を倒して行くことだ!!」



「……帰って欲しいのか、欲しくないのか、どっちなのダ?」

「要は構って欲しいんじゃないかな?」

「なら最初からそう言えばいい」



「身も蓋もない事を言うな!!」

「ここは、「ダメなら強引に押し通るまでだ!」とバトルを始めるのがセオリーだろうが!!」



「なぁ……あの二人、なンか面倒な性格になっテないか?」

「ホントだねぇ」

「まぁ……本音を言えば、倒してでも押し通るつもりだったから別にいいんだけど」



「「なら始めからそう言え!!」」



「リン」

「なに?」

「手加減が通じる相手じゃない。やるなら全力でいけ」

「……分かった」



カルにアドバイスを受けたリンベルが緊張した面持ちで頷く。

全力でいけと言う以上、あの二人もダグラス並に強いということだった。




「クレア、俺達が方を付けてくる。あまり無茶はするなよ」

「はい、カル様」

「それと、レンレン」

「なんダ?」



振り向いたレンレンカブレのおでこを、カルの人差し指がトン!と突いた。

その瞬間、レンレンカブレが「ーーーッ!?」と驚いたように目を見張る。



「分かるな?」

こくん。




「みんな、無茶はしないこと。いいね?」

「任せて、すぐに追いつく」

「なのダ!」



自信満々に答える二人を見て不安にかられるアランだったが、その肩をカルがポンと叩いた。



「ここは任せて、俺達でとっとと終わらせよう」

「……それもそうだね」



アランがウォルターとデルニックを一瞥してから扉に向かって歩き出す。

それを見て無言で道を開ける二人。

カルはその背後を守るように続いたが、特に何も仕掛けてはこなかった。


アランとカルが扉へと至る。

すると扉は音もなくスーーーッと開いた。

中は黒い渦を巻く異空間だ。

おそらく、ここと最上階を直接繋げたゲートなのだろう。

その中にアランが躊躇なく踏み入る。

それにカルも続く。

そして黒い渦が二人を飲み込むと、扉が再びスーーーッと動き、パタンと閉じてしまった。



「さて……ではこちらも始ッ!?」

「ぐあッ!?」



マン・フレットが驚愕し、ミスト・バーンが悲鳴と共に吹き飛ぶ。

油断していたミスト・バーンの背後に一足飛びに近づいたリンベルが、その脇腹を蹴り飛ばしたのだ。

それも、クレアとレンレンカブレに向かって。



「デル、ごめん!!」


待っていたとばかりクレアが勢いよく両手を振り下ろす。

直後、



「ぶべっ!?」


飛んできたミスト・バーンが、ビタン!!と盛大に地面に叩き付けられた。

更に、



「くらエーーーーーーーーーッ!!」


ドガンッ!!!

「ぎゃあーーーーーーーーーッ!?」



情け容赦のないレンレンカブレの雷撃が、身動きの取れないミスト・バーンに炸裂した。

一方。



「消し飛べッ!!」

「ーーーッ!?」



リンベルが炎帝剣を抜きながら逆袈裟に斬り上げる。

咄嗟に上体を反らせて斬撃を避けるマン・フレット。

だが、



「ぬあッ!?」


その炎までは避けられなかった。

悲鳴を上げ、炎を纏ったままでなんとか地を蹴り距離を取るが、着地と同時にガクンッ!と片膝を突いてしまった。




これでどちらも戦闘不能だろう。

リンベル、クレア、レンレンカブレが安堵と共にそっと胸を撫で下ろす。

しかし、事はそう簡単にはいかなかった。




「まだ、まだぁーーーーーーーーーーーー!!」


マン・フレットが両手を左右に広げて気合いを入れると、燃え盛る炎が一瞬にして消し飛んでしまった。

更に、



「とう!!」


クレアの重力魔法が緩んだその一瞬の隙を見逃さず、ミスト・バーンが伸び上がるように地を蹴り、重力の枷から脱出。

そのままマン・フレットの横にスタッと着地した。



「あれを食らって生きてるなんて不可能。ぜったいズルしてる」

「ふっ……これも我等の能力。悪く思うな」

「悔しかったら、覇王ダグラス様に忠誠を誓うのだな」




なんか上半身裸の二人が、腕を組みながらドヤ顔を浮かべた。

ような気がした。

仮面で顔は見えないけど。











「ここは……?」


アランが辺りを見渡す。

ゲートを抜けると、そこは塔の最上階ではなく、見渡す限りの荒れ果てた荒野だった。




「転移させられた?」

「違うな。もっと厄介な状況だ」

「厄介?」

「ここは奴固有の結界の中だ」

「結界? ということは……」

「奴のやりたい放題って事だ」



「ふははははッ!そのとおり! 即座に見破るとはさすがだな、カル・マ・シリング!!」




振り向けば、崖の上から二人を見下ろすダグラスの姿があった。

それをカルとアランが無言で見つめる。

少しテンションは高いが、声と姿は間違いなくダグラスだった。しかし、



「姿形は似ているけど、肉付きがまったく違う。あれは剣士ではなく、素手で戦う拳闘士の身体だね」

「纏ってる魔力の質も違う。あっちと違って完全に別人だな」




カルとアランが断言する。

小さな所作から筋肉の動きを察知し、相手の行動を先読みできるアランと、身体から微かに漏れ出す魔力を可視化できるカルにとって、あれがダグラスでないのは一目瞭然だった。




「それで? 僕とカルとの対戦をご所望と聞いたけど?」

「うむ。我等で頂上決戦といこうではないか」

「いい度胸だ」

「おっと! そう慌てるな、カル・マ・シリング。二人同時に相手してやっても構わんが、それでは芸がない。すぐに終わってしまうからな。なので、貴様は……」


「ーーーッ!?」



ダグラスがニヤリと笑った瞬間、カルの姿が忽然と消えてしまった。

またどこかに飛ばされたのだろう。



〃もっと厄介な状況だ……〃


カルの言葉が脳裏を過る。

あのカルがレジストする間もなく転移させられる程、厄介なフィールドという訳だ。




「彼が心配かね?」

「カルが? まさか」



ダグラスの問に、アランがふっと笑った。



「安心しろ。我は好物は始めに頂く主義なのでな。すまぬが邪魔者は他所で遊んでいて貰う事にしただけだ。まぁ……相手が相手なので死ぬかもしれぬが、それならそれで我と戦う資格はなかったと諦める」

「そうはならないと思うけどね」



どんな趣向を用意したのかは知らないが、カルが殺られるところなど想像できないアランだった。




「それじゃあ、始めようか」


笑いを収めたアランが、スッと剣を抜く。

それを見て、



「よかろう!!!」


腕組みを解いたダグラスがキッとアランを睨み返した。









「ホント、やりたい放題だな」


カルが呆れたように辺りを見渡す。

さっきと同じような景色だが、近くにアラン達の姿はない。


さっきのあれが魔術による転移ならレジストのしようもあるが、これはいわば事象の改変。

この空間の神的存在であるダグラスに、あそこではなく、元からここに居た。

そう定義されたのでは手の施しようがなかった。




「さて……あっちか……」


スッと目を瞑ったカルが、一呼吸すると目を開け、遥かな地平を睨んだ。

魔力感知でアランとダグラスの位置を瞬時に把握したのだ。




「ホゥ? コレダケ離テオルノニ感知出来ルトハ予想外ジャ。モットモ、行カセハセンガノ」



カルがゆっくりと後ろを振り向く。

いつの間に現れたものか、黒い鱗に覆われた、身の丈30メートルにも及ぶ巨大な黒竜がカルを見下ろしていた。



「障害物のない開けた空間で、相手は火を吐き空を舞うドラゴンか」

「卑怯ダト言ウナラ泣イテモ良イゾ?手加減ハセンガナ」


「気にするな。相手の得意な土俵で完膚なきまでに凹ますのが俺の流儀だ」



「ヨク吠エタ、小僧ッ!!」



挑発された黒竜が、怒りも顕に翼を広げる。

直後、



ドガガガガガガガガガガガガッ!!!



刃の様に鋭く尖った大量の鱗がカルに襲いかかった。

左右の翼にびっしりと生えた鱗を武器として飛ばして来たのだ。




「フハハハハハハッ!! 他愛ノナイ小僧……ナニィ!?」



土煙が晴れると余裕の表情から一転、黒竜があり得ないと言った顔で驚きを顕にした。

肉片に成り果てたと思っていたカルが、平然と立っていたのだ。




「小僧……イマ、何ヲシタ?」

「なんだ、分からなかったのか? しょせん雑魚か」


「小僧ォーーーーーーーーーーーーッ!!」



魔力を込めた言霊で威嚇しながら、黒竜が翼をはためかせる。

手出しのできない上空から一方的に攻撃するつもりなのだ。

普通、そんな状況になったら絶望するところだが、カルはそれを悠々と眺めていた。

そして、黒竜が充分な高さまで上昇したところで、おもむろに人差し指をピン!と弾く。



「ギャアーーーーーーーーーーーー!?」



すると、黒竜が 〃ズズンッ!!!〃 と地響きを立てて地面へと落下した。

空間を断絶し、その片翼ごと切断したのだ。



「オノレェーーーーーーーーーッ!!」


起き上がった黒竜が憎々しげにカルを睨みつける。

戦意は消えていない。

それどころか切断した翼の辺りに光が集まり、直後には元通りに復元してしまった。



「まぁ……思ったとおりだな」


カルがまったく動揺する事なく呟く。

状況的に考えて、再生くらいするだろうと踏んでいたのだ。



「治ったんなら、さっさと掛かってこい。次は何だ? ブレスか?」


「調子ニ乗ルナァーーーーーーーーーッ!!」



黒竜が大きく息を吸い胸を反らせた。

どんな防御結界があろうと関係ない。

その結界ごと灼熱の業火で包み、蒸し焼きにすればいいのだ。

だが、そうはならなかった。



「グギャアァァァーーーーーーーーーッ!?」



黒竜がブレスを吐いたまさにその瞬間、その鼻先に魔法陣が展開し、そのままブレスを跳ね返したのだ。


自らの炎に顔を焼かれ、黒竜が首を大きく反らす。

カルの右手がスッと上がった。

そして左右に打ち振る。

するとどうだ?

カルの手が届いているかのように黒竜の顎が右へ左へと叩かれた。

それを四度、五度、六度と繰り返し、最後は軽く握った拳を勢いよく振り下ろす。



ドガンッ!!!

「グアッ!?」



黒竜がお辞儀をするように地面に叩き付けられた。




「あんな無防備な状態でブレスを吐く奴があるか。もっと頭を使え」




「ウォオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!!」




上から目線で物を言われ、怒り心頭の黒竜が咆哮とともに起き上がる。

完全にキレていた。




「貴様ァ!貴様ァ!貴様ァアアア!! ナゼダ! ナゼ儂ガココマデ手玉ニ取ラレル!!」


「そんなの、弱いからに決まってるだろう」


「弱イダト!? 儂ハ最強ノドラゴン! 覇王ダグラス様ガ想像シ、ソシテ最強ニ設定サレタ、無敵丿ドラゴン!! 貴様ニ負ケル道理ナドナイノダッ!!」


「まぁ、それが敗因だな……」

「敗因……? ドウ言ウ事ダ?」


「奴は本物のドラゴンを知らない。それが敗因だと言ってるんだ」

「本物ノドラゴンヲ……知ラナイ?」


「もし奴が炎帝竜のように最強クラスのドラゴンを知っていれば、それを想像することができていれば、流石に俺でも手こずるだろう。

だが、悲しいかな奴はそれを知らん。

結果、図体がデカいだけで機敏さもない、ただの勘違いトカゲの出来上がりという訳だ。

だから俺が勝つ。

何故なら、俺は奴の想像の遥か上にいるからだ」



「ソンナバカナ……」

「さて、講釈は終わりだ」



そう呟いたカルが、再びピン!と人差し指を弾く。

すると黒竜の首が中程から絶たれ、そのままズルリと地面へと落下した。

絶命したのは確実。

だが、カルはそこで手を緩めなかった。

右手を空高く掲げる。

すると、空中に無数の氷柱が現れた。

魔力で強化した、鋼以上に強靭で、そして鋭利な氷柱だ。

それらが一斉に降り注ぐ。

再生する間もなく容赦なく降り注ぐ。

地響きを立てながら、黒竜の遺骸が粉々に千切れていく。

しかし、



「やはり命を絶っても蘇るか」



カルが呟いた途端、黒竜の肉片が金色に光りだした。

それらは瞬く間に集まり、光の塊となる。

黒竜の姿を形作っていく。

やがて、



「フハハハハハハハッ!! 無駄無駄無駄ダァーーーーーーーーーッ!!」



黒竜の勝ち誇った笑い声が高らかに響き渡った。




「確カニ貴様ハ強イ。ソレハ認メヨウ。

ダガ儂ハ不死身! 死ノ概念ノナイ、覇王ダグラス様ノ想像セシ最強ノドラゴン! 

儂ハ何度デモ蘇ル。 対シテ、貴様ノ魔力ハイツカハ尽キル。

ソノ時ガ貴様ノ最後ト知レ! 

フハハハハハハハ………………ッ!!」




「吠える前に、自分の姿を良く見ろ。間抜け」


「自分ノ? ウン……? ナッ!? 何ダコレハ!?」



勝利を確信しドヤ顔を浮かべていた黒竜の表情が一転、驚愕に変わった。

30メートルはあるはずの自分の巨体が、僅か15センチ程の手乗りサイズしかなかったのだ。



「お前の周りに結界を張った。蘇生再生するというシステムには介入できんが、取り込む魔力は制限できる。結果がそれだ」



「キ、貴サマピギャアーーーーーーーーーーーーッ!!」



黒竜の悲鳴が荒野に木霊した。

狼狽する黒竜を、カルが足の裏でゴリッ!と踏みつけたのだ。

憐れ。 翼はおろか、全身の骨を粉々に砕かれた黒竜は、潰れたカエルのようにヒクヒクと地面で蠢く存在へと成り果ててしまった。

それを見下ろしながらカルがパチン!と指を鳴らす。

すると、瀕死の黒竜を何重もの結界が包んだ。

魔力の流入を完全に断ったのだ。



「これで何もできんだろう」



今の対戦でこの空間への対応策は把握した。

自分の周囲に結界を張っておけば、相手の干渉は避けられるという事だ。

これで、再び飛ばさせる事はない。



「さて、お礼参りといくか」



カルが再びアラン達がいるであろう遥か彼方を睨んだ。









「クレア、レンレン、デルをよろしく!!」



叫ぶと同時にリンベルが地を蹴る。

誘うように、マン・フレットが左に駆け出したのだ。

敵と並走しながら暫く走り、クレア達から充分離れた所で軌道を変え一直線に突き進む。



「来い! リンベル!!」

「言われ、なくても!!」



迎え撃つマン・フレットにリンベルが真っ向から剣を振り下ろす。が、


ギンッ!


手甲で弾かれ軌道を逸らされた。

しかしリンベルの動きは止まらない。

そのまま流れるように斬り上げ、再び斬り下げる。

だが間合いを掴まれてしまったのだろう。スッと外され、直後には詰め寄って拳を叩き込んできた。

いくら盾代わりの手甲があるとはいえ、リンベルの鋭い斬撃を、それも炎を纏う炎帝剣を相手に、素手で渡り合うマン・フレット。

あり得ない事に炎の力は完全に無効化されていた。



「苦情は言わぬの、だな!!」



剣を跳ね上げたマン・フレットが右足を勢いよく振り下ろす。

震脚により床石が砕かれ、ぐらりとリンベルが体勢を崩す。

その隙を逃さず、マン・フレットの蹴りが炸裂した。



ドガン!!



と壁に叩き付けられるが、即座に地を蹴り斬りかかるリンベル。

再び剣と拳の応酬が始まる。



「炎がダメなら、剣で……押し切る!!」

「ーーーッ!?」



リンベルのギアが一段上がった。

さすがにこれでは剣の軌道を逸らすのが精一杯。

だが、それとて時間の問題だった。

徐々に捌ききれなくなったマン・フレットが、ついには両手をクロスさせて防御体勢を取る。



「いやぁーーーーーーーーーッ!!」



そこにリンベルが渾身の一撃が叩き込まれた。

マン・フレットが堪らず吹き飛ぶ。

だが無様に転びはしない。

二回、三回と床を転がったところでトンッ!と右手を突き、その反動を利用して着地した。



「フレイム・バレットォーーーーーーーーーッ!!」



そこにリンベルの放った炎の弾丸が迫る。

その時、マン・フレットの両目がキラリと光った。

物理的に。



「マン・フレット……ビーーーーーーーーームッ!!」

「何でも、ありかッ!!!」



怪光線が一閃しフレイム・バレットを薙ぎ払うや、リンベルが大声でツッコんだ。

同時に先ほど砕かれた床石に剣先を突っ込み、引き起こしてそのまま蹴り込む。

リンベルの身長程もある巨大な床石が弾丸となって襲いかかる。

再びマン・フレットの両目が光った。

だが、それは目眩まし。

床石を盾にして距離を詰めたリンベルが、地を蹴り高く舞い上がる。



「ヘルフレイム・バァスタァーーーーーーーーーーーーッ!!」

「人の事が言えるか!!」



マン・フレットが慌てて横に跳んだ。

マン・フレット・ビームに負けず劣らずの極大の炎の斬撃が飛んできたのだ。

もちろん、ヘルフレイム・バスターの着弾点は火の海へと変わっていた。






「リンのやつ、全力全開ダなぁ……」

「すごい……本気になった戦士の戦いって、ビームが飛び交うんだ……」

「そんな訳あルか!!」



再び接近戦を始めた二人を眺めながら呟いたクレアの感想にレンレンカブレがソッコーでツッコむ。

あれが普通と思われては、他の者の立つ瀬がなかった。




「さて、そろそろこちらも始めようか」


二人の戦いを後ろ手に組みながら見学していたミスト・バーンが、そう言って振り向いた。

それに、レンレンカブレがニヤリと笑って応える。



「どうやラ、私の見せ場のようダな。ここは任セろ、クレア」

「う、うん



「ふっ……魔術師ごときが、俺とサシで勝負? 格好つけてないで、二人でかかって来い」


前に出たレンレンカブレを見て、ミスト・バーンが心底可笑しそうに「くくく……」と笑った。すると、



「そンなに、負けた時の言い訳が欲しいノか?」


トンガリ帽子の鍔を上げながらレンレンカブレが挑発し返した。そして、



「蛟よ、食いちぎレぇ!!」



手に持った杖を前に突き出した。

レンレンカブレの左右に魔法陣が広がり、二匹の蛟が現れる。

水に魔力を練り込んだ召喚獣だ。

それらは地を這い、瞬く間にミスト・バーンに迫った。しかし、



「甘い!!」



襲い掛かる蛟に、ミスト・バーンが右に、左にと手の甲を叩き付けた。

たったそれだけで頭が吹き飛び、形を保てなくなった蛟が飛散して水に還ってしまう。



「二匹だけだト思うなヨ!!」



だが既に次の準備はできていた。

ミスト・バーンを取り囲むように、今度は多数の魔法陣が展開したのだ。



「甘いと言っている!!」



腰を落としたミスト・バーンが、その場でクルッ!と回る。

襲いかかった全ての蛟が、バシャッ!!と音を立てて一瞬で吹き飛ぶ。



「何匹来ようと同じ事だッ!!」



ミスト・バーンが叫んだ。

既に次の魔法陣が周囲に展開していたのだ。

それも前後左右はおろか、逃げ場を塞ぐように上部にも。



「同じだト思ったか、マヌケ!!」

「なに!? ぎゃあ!?」



直後、バチンッ!!と物凄い音が響き、ミスト・バーンが白目を剥いて崩れ落ちた。

魔法陣から電撃が迸り、ミスト・バーンを襲ったのだ。

避けようにも周囲を囲まれ、おまけに床も全身もびしょ濡れでは避けようがない。

蛟の攻撃はこのための布石だったのだ。

だが、



「どうせ、死んだフリなんダろ?」



レンレンカブレが笑いながら話しかける。

すると何事もなかったかのように、ミスト・バーンがスッと起き上がった。



「思ったよりも冷静で用心深いんだな」

「そうでもないゾ? あれ食らって平気な顔されるト、さすがにショックなのダ」

「そうは見えないがな」


「ーーーッ!?」



その瞬間、ミスト・バーンが消えた。

ヨ・ハ・ルル最強の魔術師として幾多の戦いを経験してきたレンレンカブレに油断はなかった。

なのに見失ったのだ。



「終わりだ」



ハッと振り向いたレンレンカブレの鳩尾に、ミスト・バーンの拳が深々と捩じ込まれた。



「かは……ぁ…………」

「接近されると、魔術師は無力だな」



身体をくの字に曲げ、ガクガクと震えながら膝を折ったレンレンカブレが、それでも倒れまいとミスト・バーンの腕に縋りつく。



「レンレンッ!?」




勝負あり。


ミスト・バーンはおろか、クレアさえもそう確信した瞬間……苦悶の表情を浮かべていたレンレンカブレが突然、ニヤリと笑った。



「な〜んチゃっテーーーッ!!」

「なッ!?」



直後、クレアの目の前で大爆発が起きた。

レンレンカブレがミスト・バーンを道連れに自爆したのだ。



「そんな……レンレン…………」



爆煙が収まると、そこには片手を失い、全身血だらけになったミスト・バーンが横たわっていた。

レンレンカブレの姿はない。

おそらく跡形もなく吹き飛んだのだろう。

クレアの頬を大粒の涙がこぼれ落ち……、



「あっはっはっハッ! どうやラ、私の方が一枚上手だったようダな!!」


「え!? え!? なんで!?」

 


涙を拭いながらクレアが横を見る。

爆散したはずのレンレンカブレが、なんとドヤ顔を浮かべながら立っていたのだ。



「私は始めからここにいたゾ? 二人の認識を阻害して人形に戦わせていたのダ」

「そ、そうなの? いつの間に……」



クレアの頬が引き攣る。

きっとリンベル達の戦いに気を取られていた時なのだろうが、まったく気づかなかったのだ。




「終わり……?」


ほっと安堵しながらクレアが尋ねる。



「そう簡単ではないのダ」


すると、レンレンカブレが苦笑いを浮かべた。

ミスト・バーンの身体が金色に光り、傷口が見る見る塞がり始めていたのだ。



「あれが……治るの?」

「まぁ、憑依だかラな。あれを追い出さない限り、魔力を纏って何度でも蘇るのダ」

「それじゃ、絶対に勝てないんじゃ……」

「いや、方法はアる。リン!!」



「いま、ギン! 話し、ギン! かけ、ガン! ない、ギン! でッ!! ガギンッ!!」



リンベルの返事に激しい剣戟の音が混ざる。

押し込んではいるが、少しでも手を緩めれば主導権を持って行かれるのだろう。

悠長に会話をする余裕はないらしい。



「クレア! リンに引力、マン・フレットに斥力ダ!!」

「う、うん!」



レンレンカブレに指示されたクレアが両手を前に翳す。

直後、



「「ーーーッ!?」」



リンベルはこちら側に、そしてマン・フレットはこちらから遠ざけるようにしてスッと強引に引き剥がされた。




「器用な事を」


水を差されたマン・フレットが忌々しそうに呟く。



「すまん、油断した」


そこに再生の終わったミスト・バーンが並び立った。

仮面で表情は見えないが、声音から察するに、レンレンカブレにしてやられ、ご立腹らしい。




「リン、状況ハ?」

「見てた。把握してる。でもこれは完全に想定外。悔しいけど、ゾンビ相手に勝てる気がしない」


「ふふん、そこは大丈夫なのダ。 なぜなら、ますターがこれを想定しテいたからダ!」


「カルが?」

「さっき、術式を一つ貰っタ」


「あっ!?」

「あの時の……?」



クレアとリンベルがカル達との別れ際を思い出す。

あの時、カルがレンレンカブレのオデコをトンッと突いたのは、術の譲渡だったのだ。



「但し、発動までに一分欲しいのダ」

「わかった。私がなんとかする」

「リン、デルは私が抑えればいいんだね?」

「ううん。あの二人、魔法に対しては徐々に耐性が付くみたい。やるなら剣で押し続けるしかない。だから、どっちも私がやる。クレアは……」





「作戦会議は終わったか?」



前に歩み出たリンベルにマン・フレットが嘲笑しながら尋ねる。

何やらコソコソしていたようだが、何をしようと無駄だ。

そう言外に言っているのだ。



「作戦会議ってほどじゃない。私が一人で相手する。それを確認しただけ」

「我等を相手に一人で?」

「ふっ……舐められたものだな」



「安心して。別に舐めてない……から」


「ーーーッ!?」

「なッ!?」




余裕の態度で腕組みしていたマン・フレットとミスト・バーンがハッと驚く。

リンベルが鞘に納めた炎帝剣を握った次の瞬間、もう二人の眼の前に迫っていたのだ。



ギンッ!!!

「くっ!?」



慌てて両手をクロスさせたミスト・バーンが、リンベルの鋭い抜き打ちを食らって後方に吹き飛ぶ。

それには目もくれず、マン・フレットが固く握った拳をリンベルの後頭部に……、



「なにッ!?」



マン・フレットが拳を振り下ろそうとしたまさにその時、またしてもリンベルの姿が消えた。直後、



ドカンッ!!

「ぐあっ!?」



物凄い音とミスト・バーンの悲鳴がホールに響き渡った。

何とミスト・バーンが吹き飛んでいる最中に追い付き、上から剣を叩きつけたのだ。



「させる……ッ!?」



これ以上ミスト・バーンに追撃させまいとマン・フレットが地を蹴った瞬間、今度はマン・フレットの眼前に炎帝剣の切っ先が迫っていた。

慌てて首を捻って躱す。

二人が交錯する。が、



「なッ!?」



グッと左足を踏みしめ、着地と同時に振り向いたマン・フレットが見たのは、何と既に剣を振りかぶったリンベルの姿だった。



ギンッ!!


「お腹ががら空き」

「ぐあっ!!」



手甲で辛うじて防御したものの、着地と同時に出された蹴りまでは対処できず、そのまま無様に蹴り飛ばされるマン・フレット。

リンベル一人に完全に圧倒されていた。




「これが、リンベルの本気か……まさか、ここまでとは……」


驚きを隠せないマン・フレットがヨロヨロと起き上がる。



「違う……クレアだ」


そこに、こちらも満身創痍のミスト・バーンが寄り添うように立った。



「クレアだと……?」

「さっき見た。俺に剣を振り下ろす時、リンベルは確かに空中に止まっていた。クレアの重力魔法だ」

「……なるほど。そういう事か……」



マン・フレットがリンベルの後方に視線を送る。

そこには両手を前に突き出し、キュッと口元を引き結んだクレアの姿があった。

あり得ない加速と反転、そして空中での停止。

どうやらリンベルの物理法則を無視したあれらの動きは、クレアの仕業で間違いないらしい。



「正直、クレアは戦力外だと侮っていたが……」

「大きな間違いだったようだな。Sランクは伊達じゃないと言う……」



そこで二人の背筋にゾクッと悪寒が走った。

リンベルとクレアの更に後方……杖を両手に持ち、何やら呟きながら両目を閉じたレンレンカブレの姿が目にはいったのだ。




「詠唱魔法だと!?」

「何が目的かは知らぬが、させん!!」



「それをさせると、思わないで!!」



ギンッ!!

「くっ!?」



リンベルの真っ向からの重く、鋭い斬撃を何とか受け止めるマン・フレット。

それを横目にミスト・バーンが地を蹴る。

リンベルは任せ、自分はレンレンカブレを倒そうというのだ。


その時、あり得ない事にマン・フレットの両足がスッと刈られた。

クレアがマン・フレットの両足に掛かる重力を横向きに変えたのだ。


足を揃えながら倒れたマン・フレットの丁度いい高さに下った顔面を、リンベルが思い切り蹴り上げる。

鼻柱に爪先を喰らい、マン・フレットの身体がくるんと回る。

同時に、手に持った炎帝剣を、力任せにブンッ!!と後方に放り投げた。



「ーーーッ!?」



殺気を感じたミスト・バーンが慌てて頭を下げる。

その頭上を炎帝剣が回転しながら物凄いスピードで通り過ぎ……、



「ーーーなッ!?」



ず、なんとその場でピタリと止まると、弾かれたようにリンベルの手元へと返った。

空中に飛び上がり、両手を後ろに振りかぶった、リンベルの手元に。




超絶紅蓮ドラゴニック烈龍爪・スラッシャーーーーーーーーーーッ!!」


「ぐあぁあああーーーーーーーーーッ!!!」



肩、胸、腹を同時に斬り裂かれ、紅蓮の炎に包まれるミスト・バーン。

ここにきてリンベルの必殺技が炸裂。

それはまさに竜の爪の一撃だった。



「リン、下がって!!」



「決まった……」とニヤけ顔で残心の構えを取るリンベルにクレアが叫ぶ。

レンレンカブレの詠唱が終わりに近づき、床全体が淡く光りだしていたのだ。

我にかえったリンベルが慌てて地を蹴る。

それを見て、マン・フレットはヤバいと感じた。

だが、退避しようにも身体が思うように動かない。

ダメージが回復しきれてないのだ。

おそらくミスト・バーンも同じだろう。

見上げれば、巨大な魔方陣が今にも発動しようとしていた。





「レンレン、お願い!!」



「任セろ! 開け、冥界の門ッ!! 」


レンレンカブレが杖を掲げると、上空の魔法陣がパァ!と光り輝いた。

術式が発動したのだ。




「グレゴル! バル! イルダート! フォモラヴィス!

至高なる冥界の四賢者ヨ!

魂の管理者ヨ!

愉悦をもっテ、その凍てつく大地の牢獄を解錠せヨ!!」




「まさか!?」

「大規模封印術式!?……おのれ!!」


二人が身を起こそうと躍起になるが、指一本動かすことができなかった。

クレアの重力魔法とは違う。

既にレンレンカブレの魔法に捕らわれているのだ。




「今更足掻いテも手遅れダ! 逝ってコい!! 

蒼輝炎獄ハロウィン絶封滅破ハロウィーーーーーーンッ!!!!」



レンレンカブレが勢いよく杖を振り下ろす。

すると上空の魔法陣から、二人を押しつぶすように光の柱が降り注いだ。

六つの新たな魔法陣が展開し、蒼く輝きながら回転を始める。

床の魔法陣が輝き、浮き上がった光の粒が次々と上空へと吸われていく。



「「おオォォォおオオォォォおオォォォォォォォォォ…………!!」」




突如、マン・フレットとミスト・バーンが頭を抱えて苦しみだした。

仮面にパリンとヒビが入り、落下してバラバラに砕け散る。

二人の背中から、二人と同じように苦しむ黒い影がゆらりと滲み出す。




「なにあれ……?」

「夢に出そうだから、やめて欲しい」




クレアとリンベルが思わず呟く。

黒い影が、まるでムンクの叫びのように悶えながら空へと立ち昇って逝ったのだ。

やがて、



「「ひゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜………………………」」



と断末魔の悲鳴を遺し、黒い影はスーーーッと消えてしまった。

天に召されたように見えるが、行き先は冥府の凍てつく牢獄だった。


上空の魔法陣が消えると、後には気を失ったウォルターとデルニックが倒れていた。




「あっはっはっハ! 勝っタ! さすがますター直伝、超ド級の絶対封印魔法なのダ!!」




レンレンカブレの勝利宣言が高らかに響き渡った。









「ダグラス・烈風破!!」

スッ!



「ダグラス・殺人蹴り!!」

サッ!



「ダグラス・旋風〜〜〜脚ッ!!」

ひょい!



「おのれ! 怒りのダグラス・破壊光線ッ!!」

バチンッ!!




身体を捻る最小限の動きで攻撃をかわしていたアランが、さすがにこれは無理と剣を一閃させる。

たったそれだけで怒りのダグラス・破壊光線は弾かれてしまった。

もちろん、アランにはかすり傷すらついていない。





「なぜだ! なぜ倒せんッ!!」

「スピードも威力もそこそこだけど、その程度じゃね」

「我が弱いとでも言いたいのか!?」

「まぁね。僕と正面切って戦えるのは、おそらくカルだけだよ。少なくとも、君には無理だ」


「ふざけるな!! 奴がそこまで強いと言うのかッ!? この我よりも!!」 


「そんなに驚く事か?」

「なにいッ!?」




ダグラスが驚いて振り向く。

そして言葉を失った。

平然とした顔でカルが立っていたのだ。



「ふっ……追い詰められた者特有の、良い顔つきになったじゃないか。遊んでたのか?」

「いや、あれはカルが来たからだよ。それと遊んでたんじゃなく、倒して良いものか判断に迷ってたって言うのが正解かな? 

それを聞く前に、カルがいなくなっちゃったからね」

「それは済まなかった。後はどうとでもするから安心しろ」

「分かった」




「まさか……倒したのか、あの最強のドラゴンを……?」

「お前の想像力が貧困なおかげでな」


 

「バカな!! あれは誰にも倒せん、不死身の……」



「あ、いたいた。カル様〜!」

「お待たせ」

「参上なのダ!」




「なっ!? そんな!? なぜ……なぜ貴様等までがここに来れるぅ!?」




「なぜって……」

「ゲートを使って普通に来たのダ」

「そんな事は聞いておらん! 私の、私の部下達はどうした!!」

「倒した」


「倒した!? 貴様等如きが、我が化身たる部下達を倒したと言うのか!?

あり得んッ!!

そんな事は絶対にあり得んッ!!!」



「いい加減、自分が三流だと悟ったらどうだ、駄魔神」


「駄魔神とは何だ!!」


「カル……クライマックス?」

「あぁ」

「じゃあ、後はトドメを刺すダけか」

「なら早く帰りましょう。お茶がしたいです」

「そうだね」




「ふざけるなぁ!! 我は……我は最強の魔神……」


チンッ!!


「は……?」



ダグラスが訳のわからないと言った顔でアランを見る。

剣を鞘に納めた……その意味が咄嗟に理解できなかったのだ。

直後、



「ぐぁーーーーーーーーーーーーッ!?」



腹から胸を逆袈裟に斬り上げられたダグラスの断末魔の悲鳴が響き渡った。



視界が急に狭まる。

血と一緒に力が……魔力が抜けていく。



「これが……アラン・オリバーの、剣技か…………」



やがてダグラスは胸から吹き出す大量の血に押されるように、大の字に倒れてしまうのだった。






「……悔しいが、今回は敗けを認めよう


歩み寄ったカルとアランを見上げながら、ダグラスが絞り出すように呟いた。



「手も足も出なかったクセに、今更なにを言っている」

「カル、何もトドメを刺さなくても……

「事実だ」



「ふっ……確かに事実だな。だがいい気になるなよ? 我はダグラスの中でも最弱のダグラス。

いずれ第二、第三のダグラスが現れ、必ずや貴様達を……」


ドスッ! グリグリグリ……!!


「ぎゃあっ!?」

「カルッ!?」



アランが慌ててカルを制止する。

黒塗りの剣を異空間から引き抜いたと思った瞬間、そのままダグラスの腹に突き刺したのだ。



「すまん。第ニ、第三のあたりで身体が勝手に反応した」



剣を異空間に仕舞いながらカルが答える。

口ではすまんと言いながら、さして悪びれる様子はなかった。




「我が人生に……一点の、悔いなし……」



既に限界だったのだろう。

その一言を遺し、ダグラスの身体は光の粒子となって消えてしまうのだった。




「あーあ、きえちゃったのダ」

「結局、どこの誰だか分からなかった。少しモヤモヤする」

「すぐに忘れる。気にするな」


「…………」

「……どうした?」


カルが尋ねる。

アランが、無言でカルを見つめていたのだ。



「……ここに来る前から思ってたんだけど、カル……なんかずっと苛立ってるかい?」

「……別に苛立ってはいない」

「うーん……じゃあ、怒ってるって言った方がいいかな?」

「別に怒ってるつもりもない。なぜだ?」

「君のダグラスに対する普段の態度とは、余りにかけ離れていたからね」

「あれはダグラス先輩ではないだろう。普段のおちゃらけた態度とは裏腹に、あの人は紳士だ。少なくとも……女の胸をネタにコケ下ろすような事は絶対に言わん」


「ひょっとして、それが怒ってる原因なのかい?」


「……そんなつもりは無いが……まぁ、身内を貶されてムカついてたのは事実だ……って、ニヤニヤ笑うな、リン、レンレン!」


「それは無理」

「そうそう。ますターが私達の事で怒ってくれテたのかと思うと、ニヤけが止まらないのダ」

「うふふ……やっぱりカル様はお優しいですね」



「あぁ、もういいだろう。そら、固有結界が崩れ始めたようだ。早く帰るぞ!」



そう言って、誤魔化すようにゲートを開くカルを見てアランがクスリと笑った。



「それじゃあ、皆……帰ろうか」

「「はい!」」

「なのダ!」




こうして謎のダグラス事件は有耶無耶のうちに幕を下ろすのだった。








翌朝、学園騎士団アカデミー・ナイツの本営。



「どうしたんだ、朝っぱらから?」



アランと並んで歩きながらカルが尋ねた。

その後ろにはクレア、そしてリンベルとレンレンカブレの姿もある。

今朝早く、アランから話があるから本営に集まって欲しいと連絡があったのだ。




「実は昨日の件で、面白い事実が判明してね」

「面白い事実?」

「まぁ、歩きながらじゃなんだ。部屋で話すよ」




そう言ってアランが隊長室に足を踏み入れたところでピタリと止まった。

続けて入ったカルも無言で立ち尽くす。

なぜなら、



「ん? よう! おはようさん!!」



ただ一人行方不明だったダグラスが部屋の中にいたのだ。

それに気づいたリンベルがにっこり笑った。

次いで笑顔のままスラッと炎帝剣を抜き放ち、スタスタと近づいて真っ向から振り下ろす。



パシッ!!!



「おはようございます、ダグラス先輩……」

「いきなり、なにしやがる……」




顔と顔を突き合わせ、「ぐぬぬ!」と睨み合うリンベルとダグラス。




「ダグラス先輩が、白刃取りなんてできる訳が無い。やはりダグラス先輩ではなく、ダグラス!!」


「なに訳の分かんねぇ事言ってんだ! それと言っとくがな、これは一生に一度のミラクルが、今たまたま起きただけだ! 二度とできねぇから安心しろ!!」



「ダグラスだ。もう湧いて出たのカ?」

「ホントだねぇ」


「取り敢えずリンベル、剣を下ろしてくれるかい? 彼はダグラスではなく、ダグラスかも知れない」



「アランまで何言ってんだ!?」



「リン、もしダグラスなら俺が仕留める。剣を下ろせ」

「分かった」



「おめぇまで何言ってんだ!?」



「まぁ、落ち着いてくださいダグラス先輩?」

「なんで疑問形なんだよ!?」


「これから俺が一つ質問します。それに真面目に答えてください。それによって、あなたの命はここで終わりますからそのつもりで」


「真顔で怖えこと言うな!?」



「では、質問です。 女性の価値は、胸の大きさ……巨乳か否かで決まると思いますか?」


「「ーーーッ!?」」



アランを始め、皆が納得の表情でダグラスを見る。

確かにこの質問の答え如何でダグラスかダグラスじゃないかが分かる。



「あん? そんな訳あるか。持って生まれた個性にケチつけるなんて男のする事じゃねぇよ」



「……だそうだ」

「良かった。本物のダグラスみたいだね」



「だいたい、巨乳貧乳ってのはステータスだ。巨乳と同じだけ貧乳にも需要がある。故に、巨乳と貧乳は同じ価値だ!!」 



右手を固く握りしめて語るダグラスを、カルとアランが「…………」と無言で見つめる。

余計な事を言わなければ万事収まったものを……。




「みんな、どう思う?」

「ダグラスのフリしたダグラスだと思うのダ」

「でも見境ない辺り、いつものダグラス先輩だと思わない?」

「リンはどっちのダグラスだと思うのダ?」


「しょせん、ダグラス先輩もダグラスと同じ穴の狢。

大丈夫、ダグラス先輩は私達の心の中にいつまでも生き続ける。

だからレンレン……蒼輝炎獄ハロウィン絶封滅破ハロウィン、かましちゃって」



「おい、リンベルちゃん! なに涙流しながら微笑んでんだ! 何だか知らねぇけど物騒な事だけは分かるからな!!

それにどいつもこいつもダグラスダグラスダグラスって、いったい何の事か俺にも説明しやがれーーーーーーーーーーーーッ!!」




ダグラスの叫び声が学園騎士団アカデミー・ナイツの本営に木霊した。

それはいつもの……平和な聖導学園の一コマだった。









※この作品はフィクションです。実在する人物、団体とは一切関係ありません。


製作:学園騎士団アカデミー・ナイツ









……誰だ?



地下深く。

真っ暗な闇の中に、男の低い声が響き渡った。



我が名を呼ぶのは……我が眠りを妨げるのは…………誰だ!?




ジャジャンジャッジャジャン!!



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