海
ヒロと月奈は海に出かけることにした。
二人は電車に乗って、海へと向かった。
8月の夏――
聖月学院が夏休みのため、あまり電車に乗っている人は多くない。
「ふう……電車の中は涼しくていいな」
「8月は暑いから、電車の中は涼しいのかしらね。ところで、ヒロ?」
「何だい、月奈?」
「ヒロは私の水着姿を期待してる?」
「なっ、なあっ!?」
「うふふふふ、それで、どうなの?」
「それは男としては当然気にはなるさ!」
「へえ……そうなんだ。ふふっ!」
「何だよ?」
「別に?」
「別に、じゃないだろ?」
「じゃあ、期待しててね!」
その後電車は海の近くで止まった。
ヒロは水着に着替えた。
特に何もすることがなかったので、自然と体操をした。
ヒロは月奈の着替えを待っていた。
電車の中で月奈から言われたことが気になる。
月奈の水着姿である。
どうしてもヒロは期待してしまう。
ヒロはそれだけが悩みではなかった。
自分は月奈をどう思っているのか?
自分は月奈を愛しているのか?
もう恋はしないと思っていた。
それでも自分は月奈のことを少なからず想っていることは間違いない。
ずっと今のままの関係を続けていられるとは思わない。
この関係はどこかで壊れる必要があるのだ。
でなければ、新しい関係に入ることはできはしない。
「はあ……牧師に相談してみるかな……」
「ヒロ―! 待ったー?」
「月奈?」
ヒロは後ろを振り返った。
「!?」
ヒロは一瞬見とれた。
成長し始めた肉体美がそこにはあった。
月奈は白いビキニを着用していた。
ビキニの色が、月奈の白い肌をより美しく見せる。
「どう、似合う?」
月奈はほおを赤らめながら聞いてくる。
「あ、ああ。似合っている。かわいいと思う」
「そう! ありがとう! えへへへ!」
「つ、月奈?」
「水と遊びに行こ?」
月奈はヒロの腕をつかんだ。
二人は海に入った。
「ほーら!」
「うわっ!? この、やったな!」
ヒロと月奈は水をかけあった。
水しぶきが体にあたる。
ヒロは負けじとばかり、多くの水をすくって月奈めがけて放った。
「あっ、冷たい!」
「あははははは!」
二人は夏の太陽のもと、笑いあった。
海で泳ぎを楽しんだ後、二人は海の家に行った。
そこで食事を取るためである。
「あっ、ヒロ、見て! かき氷がある!」
「あっ、ほんとだ」
「シロップはイチゴ、ソーダ、ブドウ、オレンジらしいわね」
二人はまじまじとかき氷を見つめた。
「ヒロは何にする?」
「そうだな、俺はイチゴで」
「じゃあ、私はオレンジで」
二人はかき氷を注文した。
「うー! 冷たーい!」
「ははは! 一気に食べるからだろ?」
「ねえ、食べかえない?」
「え?」
「私もイチゴ味を食べてみたいし、ヒロだってオレンジ味を食べればいいじゃない?」
「あ、ああ」
二人は互いのかき氷を交換した。
それから二人は海の家で焼きそばを食べた。
帰りの電車の中で、クーラーがかかっている車内で、ヒロはウトウトしていた。
「ふわー! つかれたなあ……」
ヒロは久しぶりに海にいったのだ。
(最近、海なんて行ったことなかったから疲れたな。この前海に来た時は中学生の時だったか?)
そんなことを考えていると、ふと月奈がもたれかかってきた。
「!? つ、月奈?」
どうやら月奈は疲れて眠ってしまったらしい。
「何だ……眠っているのか……はあ、これどうしよ?」
月奈の姿はまったくの無防備で、甘い香りがヒロの鼻をくすぐった。
「はあ、俺は信用されているのかな?」
ヒロと月奈は電車から降りるまでそのままだった。