*第94話 太古の夢
ある生態系が出来上がるまでには偶然の積み重ねに依る必然が存在する。
何の歴史的脈略も無く羽が生えたりはしない。
少なくとも自然界に於いては。
この世界の人間は、地球の人間と酷似している。
つまりこの星の辿って来た歴史もまた、
地球と殆ど同じ様な経緯であると推測が出来る。
大陸の移動や、温暖化と寒冷化の周期的変化など
次期や回数こそ違うが、経験値は同等と言える。
およそ2万年前、この世界は高温期だった。
大陸の形は今とそれ程は違わないが、
氷の大地“エギ・キキル・デアル”は当時大草原であった。
旧生人類が多数生息し、巨大哺乳類が闊歩していた。
その頃から既に祭壇は在る。
風化もしなければ、埋もれる事も無く、
契約者の訪れを、ひたすら待ち続けている。
***
アリーゼの精霊契約をする為に
氷の大地へ行く事になりましたの。
年齢も祝詞も関係ありませぇ~ん
とはさすがに言えませんでしょう?
例によって八犬士ちゃん達に先行調査に行って貰いましたの。
3日で見つけ出しましたわ!
優秀ですわ~
ニョキニョキと奇岩の突き出たカルスト台地の地下に巨大な鍾乳洞が在りましたの。
「『ススメカワグチ タンケンタイ!』」
照明魔法でライトアップですわ!
「うわぁ~!めっちゃキレイやわぁ~」
シモーヌが大喜びですわ。
「滑るから注意しなさいな。」
氷の精霊殿ですわね。
危ないので十二支ちゃん達の背中に乗って移動しましたの。
狭くて通れない所は削って広げましたの。
自然破壊など知った事ではありませんわ!
狭いのが悪いのですわよ!
結構な奥まで進むとパッコ~ンと開けた空間に出ましたの。
祭壇が在りましたわ!
「もう!遅いですよぉ~!
今日来るって言うから
朝からずぅ~っと待ってるんですよぉ~」
キューピー・ハニーが居ますわ・・・
「呼んでから出て来なさいよ。」
ルルナが呆れていますわ。
「その積りだったんですけどぉ、あんまり遅いから待ちきれ無くってぇ~」
「まだ二刻ほど前ですわ。」
正午で日付が変わりますのよ。
「え?・・・あぁ~そうだったぁ~!」
頼り無いですわ!
「大丈夫ですの?ルルナ。」
返品したいですわぁ~
「やれば出来る子なのですけど・・・」
スタンドアロンのプログラムとして人格を持つと個性が育成されて行くそうですの。
精霊として実体化すると更に強調されるとか。
ルルナはしっかり者ですのに。
大切なアリーゼを任せるのは不安ですわ。
「貴方はハニーで良いのかしら?」
「わぁ!良く判りましたねぇ!」
それ以外の何者でもありませんわ!
バッチリ食い込んでいますわ!
「普段はレディー・ハニーで居て頂戴な。」
キューピー形態はイラっとしますわ!
胸がっ!
ですが同じ作者の“ケッコーお面”で無くて良かったですわ。
裸にお面は洒落になりませんものね。
「その子が芳夫君の転生体ですか?先輩。」
え?
「えぇそうよ、リコアリーゼと言うの。」
今なんと?
ヨシオ?
ヨ~シ~オ~?
わ、わ、わ、私のアリーゼが・・・
ヨ、ヨ、ヨ~~~
「し!師匠!どないしたんですか!
大変やぁ~!師匠が倒れた~~!!」




