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大聖女エルサーシアの遺言~とんでもヒロインの異世界漫遊記  作者: おじむ
第三章 ラブ・イズ・ブルー
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*第88話 もしも明日が

「次の報告には、これを使ってね。」

モーリスは数枚の書類が入った封書をラミアに渡した。


「えぇ分かりましたわ。」

受け取る時にそっと手に触れる。

勿論、わざとである。


「ラミア殿・・・」

「モーリス様・・・」

パサリと封書が落ちて、見つめ合う二人。


ラミア達残留組は王国の内情を探る様にと、

本国から指令を受けていた。


モーリスに相談した所、

ロンドガリア本家に掛け合って呉れた。


統合幕僚本部の了承を得て、

虚偽と真実の入り混じった情報で

帝国を攪乱かくらんする作戦となった。


「ちょっと!動かないで下さる!」

「か、かかとを上げて下さい!刺さってますから!」


生垣の向こうから覗いていたオレリナが叱責しっせきしているのは、

四つん這いで踏み台となっているマイロである。


オレリナの履くピンヒールの踵がマイロの背中に食い込んでいる。


「これくらい辛抱なさいな、ご褒美ほうびですわ!」

「わ、私にそんな趣味は有りませんよぉ」

「いい所ですのよ!もうすぐ接吻しますわ!」


「あぁ抱き合いましたわ!あごクイですわよ!」

「オ、オレリナ様!ハァ、ハァ、足踏みはやめてウッウウ~」

「キャァ~致しましたわ!ほら!御覧なさいな!」

「む、無理ですぅ~ハァウ~ウッ!」


マイロの中で何かが弾けた・・・


****


ミリピッピ旧総督府は新政権の大統領府となっていた。

初代大統領としてトムが就任する予定だ。


巷間こうかんでは不平等条約に対する批判が日増しに強くなっていた。

抗議の声を挙げる民衆が連日の様に大統領府に押しかけている。


(今日も騒がしゅうなるやろな、ワシらの苦労も知らんと)

早朝のベランダにたたずみ、トムは昇る朝日を見ていた。


「ここに居ったんかいなトム」

声を掛けて来たのはネイサンだ。


「おぉ、何や?えらい早いな。」

「仕事が溜まってるねん、時間が足りやんわ。」

「人手不足やさかいなぁ、もうちょい辛抱してや。」


「やっと此処まで来たわ。」

トムが再び朝日を見やる。


「あぁ、えらい悪口言われとるけどな。」

「ワシらの国は始まったばかりや、今はしゃーないわ。」


そろりそろりと近づく・・・

「なぁトム、お前の指先は夢に届いたんか?」


「あぁ、届いたで。でもこれからが本番や!これからも・・・っと・・・(ドスッ!ズブリッ!)

「いや、此処までや。」


トムは己の胸から真っ直ぐに突き出でた剣を見下ろした。


「ゴフッ!()ごでば~だ(これは~な)だんや~(なんや~)?」

血に濡れた切っ先が明日の方角を指し示していた。

挿絵(By みてみん)


「この先に行くんは許さんで。」

振るえる指先を朝日に差し出しながらトムは崩れ落ちた。

「さいならや、トム」


トムの私室から帝国と交わされた密書が発見された。

不平等条約と引き換えに帝国貴族に取り立てる密約が記されていた。

全くの濡れ衣である。


しかし民衆はそれを信じた。

トムの遺体は葬儀も埋葬もされず川に捨てられ魚の餌になった。


裏切り者を断罪した英雄として委員長に就任したネイサンは、

デカシーランド民主労働者共和国の初代大統領に選出された。


(もう少しだけ待っといてやネオミール。

お前の夢の続きを聞かせたるさかいな。)



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