*第7話 テクマクファザコン
精霊には幾つかの順位がある。
生活魔法と呼ばれる出力の小さい魔法を受け持つ、いわゆる“精霊”。
状態変化や空間制御などの特殊魔法や、
対象を破壊する攻撃魔法を可能にする“上級精霊”。
さらに限定が解除された魔法を発動できる“特級精霊”が存在する。
現状では唯一ルルナだけ。
また契約可能な親和性を有しているのもエルサーシアただ一人である。
あくまでも現段階では。
***
帰れませんでした・・・
それはもう大騒ぎになりました。
お祖母様は気を失われて救護室に運ばれ、
お父様は私を庇う様にして抱きしめ、
お母様は「まぁ可愛い!まぁ可愛い!」
と連呼しながらルルナの周りを回っています。
子供達は片隅に寄り集まり小声で囁き合い、
大人達が盾となって囲っています。
「其方は精霊なのか?」
「はい。私はサーシアの契約精霊ルルナです。」
両手でステッキを胸の前に持ち
小首を傾げてルルナは答えました。
あざといですわ~
「人型の精霊・・・こんな事が・・・」
お父様はかなり戸惑っておられる様ですわ。
次の行動を判断しかねておられます。
お母様は体をくねらせながら、
「まぁ!ルルナちゃんと言うのね!まぁ素敵!お名前も可愛いわ!」
徐々に近づきながら抱きしめるタイミングを計っていらっしゃいました。
このままでは埒が明きませんから私がどうにかしないといけませんわね。
「お、お父様・・・お城に帰りとうございますぅ。」
「あぁ、そうか、そうだな。
うむ、一先ず帰ろう。
母上は・・・いないか・・・
司教!司教はいないのか!」
「はい閣下!ここにおりまする!」
「我らは城に戻る。明日改めて参るゆえ良いな。」
「はっ!畏まりました。」
「パトラシア、そなたは母上に付いて差し上げなさい。」
我に返ったお父様はやはり颯爽として麗しく、
惚れ惚れ致しますわ。
お母様は名残惜しそうにでしたが、
すぐに居住まいを正しく直されお答えになられました。
「仰せのままに。」
***
気まずいですわぁ~
足早にお城に戻ったのは良いのですけれど。
お互いに無言で座ったまま・・・
元々無口な人でしたわ~
私も・・・
ルルナは私の横に座り腕に絡みつきニコニコとしているだけです。
黙っていないで何か話しなさいよ!
「こ、降霊の儀は私が最後で幸いでした。
親睦会は恐らくお流れで御座いましょう。
皆様にはお詫びをしなければなりませんわね。」
よしっ!なんとか話を切り出しましたわ!
「そうだな、詫び状を出して置こう。
改めて我が家の主催で開かねばな。
そなたは心配せずとも良いのだぞ。
ただ・・・その・・・驚いているのだ。
人型の精霊など前代未聞であるからな。」
ちらちらとルルナを見やりながらも努めて平静になさっておいでです。
はぁ・・・素敵ですわお父様・・・
「そうで御座いますわね・・・
その・・・ルルナは良い子ですのよ?」
信じて下さいませお父様!
「あぁ、もちろん分かっているよ。
だが中央や教会が黙ってはおらぬだろう。
必ずや口を出してくる。」
お父様は色々とご懸念がお有りの様です。
程なくして執事が戻って参りました。
お祖母様がお目覚めになられ、
体調も問題なく、こちらに向かっておられるそうですわ。
「ともかく、何も案ずる事はないぞ。
そなたに仇なす者はこの父が打ち捨てる。
ダモンの鉾はダモンに従うのだ。」
「はい!お父様!」
あぁお父様・・・
今のはかなり来ましたわ・・・
ズシンと・・・お腹の下あたりに。
お母様とお祖母様がお城にお戻りになられると、
案の定、怒涛のおしゃべりが繰り広げられて、
私は隅っこに追いやられ、
お父様はいつの間にか退室なさっており、
ルルナは・・・
スリープ状態ですわね。
ダモンの鉾・・・敗れたり・・・