*第81話 時代遅れの喝采
その国が如何なる思想に基づき、
斯くの如く法に則り、
人脈の枝を張り、
而して民衆を統治然歟。
これを“国体”と言う。
この世界は基本的に封建社会である。
しかし絶対君主制とは言えない。
司法権は元老院に与えられていて、
教会がそれを保証する事で国王や皇帝の権力を制限している。
だからと言って民主的である訳では無い。
法治国家で在る事を要求するが、
それが悪法であっても教会は関知しない。
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「なんでや!なんで仲間になって呉れんのや!」
「力に成って呉れるんちゃうんか?」
「ちゃんと頼んだんかぁ?」
レジスタンス“白い恋人たち”略して“シコタチ”。
そのアジトでスカーレットは糾弾されていた。
「いま説得しとるとこや!もうちょい待ちぃ~や!」
「ほんで、お前そのエロい恰好は何や?」
「痴女か?痴女なんか?」
「乳首浮いてるやんけ!」
「う~わっ!ホンマや!エッロ~!」
「うるさいわい!ほっとけやぁ!
今からカチコミなんじゃボケっ!!」
そう吐き捨てるとスカーレットはボタンに跨ってゲートの向こうに消えた。
「あいつに任せて大丈夫なんか?」
「スカやん以外とは会うて呉れんのや、しゃぁ~ないわ。」
「あいつ見てたら遊んどるとしか思えんわ。」
「成果は上がっとるで、帝国はかなり焦っとる」
「まぁええわ、奴らの気ぃ引きつけといて呉れたら。」
表向きのデモ隊はカムフラージュだ、密かに武装集団を組織中なのだ。
精霊師のメンバーも順調に増えている。
少しだが未来の展望が開け始める予感に若者達の心は燃えていた。
「新しい国をワシらが作るんや!」
そんな中に一人だけ違う思いの男が居る。
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なぁトム、チウキ村のネオミール覚えとるか。
あれは3年前や、
お前ゲライスの乗った馬車を襲撃して失敗したやろ。
そんで逃げる時、その子を囮にして逃げたやろ。
何人も見とるんやで。
名前くらいは覚えとるやろ?
あの子な・・・
ワシの許嫁やったんや。
ワシはな、
ガキンチョの頃から目立たん男やってん。
地道に生きるんが性におうとるんや。
似合いもせんことに無理してはしゃいだりせんのや。
それが物足りんかったんやろな、
村の集会所で演説したお前に惚れてもた。
あんたは時代遅れや言われたわ。
まぁその通りやわな。
それでも夢見てたんや、
あの子との暮らしを。
止めるワシを振り切って村を出て行ってしもた。
まぁ安心せぇ。
お前の夢が現実になるまで、ワシも協力するさかい。
あの子が見た夢でもあるしな。
そんでお前の指先が、その夢に振れた時。
その日をお前の命日にしたるわ。
夢の先にある景色を、お前には見せたれへんで。
それを見届けるんはワシや。
あの世であの子に話してやるんは、ワシの役目やさかいな。
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「なんやお前ぇ!眠たいんかいな!」
「あぁ、昨日遅うまで起きてたさかいな。」
「寝不足はお肌の敵やで!早よ寝ぇ~や」
「あぁ・・・そうするわ。」




