*第5話 降霊の儀
前世では他人との関りが薄かったせいか性欲は控え目だった。
とは言え時折、間欠泉のごとくに欲情が噴き出す事もあった。
そんな時、明は惜しみなく散財し、
とびきり高級な会員制恋人紹介所に連絡した。
そんな過去が影響したのか、彼女は“性”に関して寛容であった。
***
「はぁ~楽しみねぇ~、
どんな子が来てくれるのかしら?
かわいい子が良いわね」
我が事のようにウキウキとお母様がはしゃいでいますわ。
「そうですわね」
それにつけても胸の谷間が・・・
我が母ながら艶めかしいお方ですわ。
「やはりタチアーナ様は
王都で降霊なさるのでしょうか?」
お母様のご実家であるチャーフ公爵家。
その嫡男の三女で、従妹のチャーミィも私と同い年ですが、
2歳からずっと王都で暮らしています。
「そうでしょうねぇ。
イリアムは領地に関心が無いものねぇ。
見栄っ張りなのよあの子は。
昔からそうなの。
あれがチャーフ公爵家の跡取りだと思うと悲しくなるわ。
バロッサはお母様の言いなりね。
お母様はイリアムに甘くて困るわ。
カルアンの方が余程しっかりしているわ。
お父様もイリアムを廃嫡してカルアンに継がせれば良ろしいのにね」
「はぁ、さようで御座いますか・・・」
イリアム叔父さまはお母様とは仲が悪いけれど、姪の私には優しい。
王都のお屋敷に遊びに行くと、それはもう大歓迎して下さいますのよ。
奥様のバロッサ様は家格の低い家から嫁がれたので気の毒なくらい控え目ですが、
夫婦仲は良好で虐げられている様には見受けられません。
私の知る限りは平凡ですけれど、内務官僚としてそれなりの地位にいるのだから
無能ではないでしょう。
それよりもカルアン叔父様の方がヤバイと私は思っていますの。
私は知っている。
あの方はロリコンですわ!
私を性的な目で見て股間を硬くしているし、
周りの目を盗みやたらと触れてくる。
でも嫌いではありませんの。
ほの暗い罪悪感の滲む叔父様を見ているとなんとなく可愛らしく思えて
多少の事は許してしまう。
王国騎士団に所属してはいますけれど、
あまり活躍しているとは聞きませんわね。
縁談から逃げ続けていて、
未だ独身である為に同性愛者かと疑われていますの。
お母様は少女の頃から騎士や軍人に憧れていたそうですわ。
子供の頃から騎士志望だった叔父様をとても贔屓していますの。
私はチャーミィの貞操が心配でならないので、
次に叔父様とお会いした折にはしっかりと釘を刺して置きましょう!
それにしてもお母様のお話は長い・・・。
ついに私も10歳と成り、
今年の“降霊の儀”に参列する事となりました。
教会の精霊殿で祝詞を唱え
精霊を呼び出して契約を交わしますの。
精霊との親和性が高い者には上級精霊が降臨しますのよ。
上級精霊になると発動できる魔法も広範囲かつ強力になりますの。
貴族の家では4~5歳から精霊学を学びますの。
幼児向けの精霊学の最初のページには
降霊の儀で唱える祝詞が記されています。
魔法が使えるなんて素敵っ!
ウキウキしながら教科書を開きましたの。
初めて目にする精霊文字。
『貴方と私のラブリーエンジェル
魔法少女は俺の嫁
月に誓ってお仕置きよ』
日本語じゃねぇ~かぁ~!
しかもオタク~~~~~~~!