*第64話 欲望の街
労働者の町キュポーラ。
バルドー連の酒場では何時もの通り賑わい、
嬌声と時に怒号とが入り混じっている。
「相変わらず此処はうるせぇ店だな。」
カイビンドは舌を刺す程の強い蒸留酒を好む。
「下町の酒屋なんて何所も同じでしょうよ。」
例の特徴の無い男が言葉を返す。
「で?決まったのかい?」
こんな顔だったか?とカイビンドは思う。
「降節の日で仕掛ける事に成りました。」
エルサーシア襲撃の話だ。
「こっちは王都で騒ぎになってからだな?」
少しくらいはズレるかと思案する。
「えぇ、タイミングはお任せしますよ。」
「何人寄越せる?」
バルドーの戦闘員にも手を貸して貰う約束だ。
「手練れ30ですね。」
足手まといは返って邪魔になる。
「良いだろう、こっちは20だ。」
あの娘さえ居なければ十分な数だ。
「御庭番の方は大丈夫なのですか?」
「今残っている奴らは戦闘員じゃねぇよ、
この前のでやられたからな。」
手強いのはモルガンくらだ。
「間違って人形まで殺さないで下さいよ。」
フリーデルは大事な駒なのだ。
「分かってるさ、ヘマはしねぇよ。」
カイビンドは、ほろ酔いで店を出た。
「まったく騒がしい店だ。話が入って来ねぇじゃねぇか!」




