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大聖女エルサーシアの遺言~とんでもヒロインの異世界漫遊記  作者: おじむ
第六章 死して屍拾う者無し
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*第52話 表現の自由

芸術とは、本人がそうだと言えばそうである。

他人の承認や評価は、それで生活が出来るか否かにのみ関与する。


しかし芸術と自称する事さえ不適切な場合がある。

それは呪詛じゅそである。


芸術は自己表現の一手法であるが、

表現とは読んで字のごとくうつつあらわす行為なのであって、

呪詛はその真逆の現から消し去る行為である。

他者を呪い、自身をもけがれさせる行為は断じて表現では無い。


いわんや芸術においてをや。


***


やっぱり我が家が一番ですわ~

コイントの旅も半分は殿下の御守りでしたわね。

手の掛かるお子ちゃまですわぁ~


ミーズル港ではタラップを降りた途端にカルアンに抱き着かれましたの。


「会いたかったよぉ~サーシアぁ~!

心配したのだよぉ~!

無事で良かったよぉ~!

良く帰って来て呉れたねぇ~!

待ってたのだよぉ~!

毎日毎日待ってたのだよぉ~!」


復員兵の帰還を待ち侘びて岸壁に立ち続けた老婆の様な

カルアンの号泣にドン引きしましたわ。


人前で恥ずかしげもなく泣き崩れるカルアンに熊式鯖折固くましきさばおりがためを決められて、

息は詰まるし恥ずかしいやらで、とんだ窒息羞恥プレイでしたわ。

朦朧もうろうとするのが癖になりそうで怖いですわ・・・


らちが明かないのでルルナにカルアンの意識を飛ばして貰いましたの。


お屋敷に着きましたらお留守番をしていたアリスが

そっと耳打ちして来ましたの。

「姫様、実はその・・・見て頂きたい物が・・・」


「あら、何ですの?」

「それが・・・旦那様のお部屋で御座いまして・・・」


どうにも歯切れが悪いので、とりあえずカルアンの部屋に行きましたの。


「そのぉ・・・寝室で御座いまして・・・」

ですから何ですの?気味が悪いですわ。


寝室に足を踏み入れた途端にそれが目に飛び込んで来ましたの・・・

腰が抜けましたわ・・・


あぁ・・・カルアン・・・

これ程とは・・・


私のパンツを繋ぎ合わせて作られた掛布団がそこに在りましたの。


「うっ!駄目っ!吐きそう!オェ~~~」

挿絵(By みてみん)


下からは出ないけれど上からは出ますのね。

ルルナを嘔吐おうとさせるなんて腕を上げましたわねっ!カルアン!


「も!申し訳御座いません姫様!

私では!私では止められませんでしたっ!」


いいのよアリス、貴方は少しも悪くありませんわ。

カルアンを甘く見ていた私の落ち度ですもの。


「寂しい時はパンツをお持ちになっても宜しくてよ。」

とは言いましたが・・・


掛布団にするとは大胆な発想ですわね!


“男子 三日会わざればかつもくして見よ”とは先達せんだつの教えに有りますけれど、

変態から50日も目を離すとアーティストになりますのね・・・


刮目して見たら目がけがれそうですわ!


***


馬車を正門の前で降りて銀杏いちょう並木の学院通りを歩いてみましたの。

シャクシャクと枯葉を踏む音が心地よいですわ。


例の掛布団はそのままにして置きましたの。


「燃やしましょう!今すぐ灰にしましょう!」

とルルナは主張しましたけれど、思い入れの有る大切な私のパンツを、

愛する夫が芸術に昇華させましたのよ!


禍々(まがまが)しい瘴気しょうきを放つ作品ですけれど・・・


ひらりひらりと舞い落ちる銀杏いちょうの葉にうたごころくすぐられますわね。


一句整いましたわ!


『びちぐその

 くつぞこつきて

なきちょびれ

 こすりこすりの

はっぱ ふみふみ』


「芸術の“げ”の字も無いですね。」

そぉ~かしらぁ~~~?

自信作ですのにぃ~


人気ひとけのない校舎の片隅でそっと窓を開けましたの。

院生に成った時からやると決めていましたのよ!


今がその時ですわっ!


「松茸ご飯が食べたぁ~いですわ~~~!」

「何それ!僕も食べる!」

「ぎゃぁぁぁ~~~!」


ですからっ!

後ろから急に話掛けないで下さいまし殿下っ!


いったい何所から湧いて出ましたの?




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